第86回日本プロゴルフ選手権(2018年)
2020.05.13
優勝トロフィーを掲げる谷口徹(写真提供:日本プロゴルフ協会)
谷口が最年長優勝記録更新、50歳92日の快挙
舞台となった房総CC房総G(7324ヤード、パー72)は、3年半から大会開催に向けてのコース改造を開始。フェアウエー幅は27~28ヤードと広めながら、ラフは長さ70ミリの芝草を立たせてボールがスッポリ入り込み「0.5罰打」となるような設定に仕上げた。第1ラウンドは、雨や雹が降り、競技が一時中断する難しいコンディションの中で好スタートを切ったのがブレンダン・ジョーンズ(オーストラリア)。8バーディー、ボギーなしの64をマークした。「3メートルのパーパットが入り、その後も4メートルのパーパットが2回決まってプレーのリズムがとても良くなった」と振り返った。「明日は逆に8オーバーになるかもしれないけれど、すべてを受け入れ、こだわらずにプレーするつもり」と話した。2打差2位に韓国の姜庚男(カン・キョンナム)がつけた。
3打差3位には無名の中島徹。1イーグル、4バーディー、1ボギーの67をマークした。「ショット、パットがうまく噛み合いました。試合に出場している限りは『ああいう奴がいたな』と(成績で)目立ちたいです。失うものが何もないので、楽しんで、思い切り攻めて行きたい」と意気込みをみせた。
第2ラウンドはコースの難度が上がったこともあってジョーンズが74と落とし、首位を守ったものの通算6アンダーに後退したことで混戦を作り出した。2打差2位に連覇を目指す宮里優作、50歳の谷口徹、Y・E・ヤン、姜、永野竜太郎、稲森佑貴の6人が並んだ。
宮里は前半落としたが、後半盛り返し、72で回った。「ティーショット次第ですね。フェアウエーを捕らえないと話にならない。ルーティーンとスイングリズム、イメージの出し方を徹底して行っていくだけです」と話した。
2月に50歳となった谷口は、前年宮里に逆転されて優勝を逃している。2010、12年に続く大会3度目の優勝へ「良い位置で最終日を迎えられたらいいと思います。頑張ります」とだけコメントした。
永野はドライバーに精彩を欠いたが、フェアウエーをとらえたホールで効率よくバーディーを奪い、4バーディー、4ボギーの72。「総体的にはスコアメークが上手く行った一日だったと思う。ドライバーがフェアウエーを捕らえたらピンを攻め、ラフだったらパーセーブに徹する。攻守のメリハリがついたゴルフが出来ました。80点をあげたい」と笑顔を見せた。
17歳の時にこの大会でプロデビューした稲森は23歳になった。旧チャレンジトーナメントを開催していたコースをよく知っているという。ツアーでは2015年から3年連続フェアウエーキープ率1位で、この日も「ラフに入れたのは2回だけ」と安定している。「みんなが苦労してくれたほうが僕も頑張れる。グリーンも、カチカチになれば最高。コースにいじめられる方が僕は好き」と話した。
第3ラウンド、ジョーンズが崩れ、上位も伸びずない中で、藤本佳則が4バーディー、1ボギー69をマークし、通算6アンダーで首位に浮上した。「予選落ちが続いているのに、何でこの位置(単独首位)?予選を通過できて良かったというくらいのゴルフですよ」と笑い「メジャー大会は魅力あります。日本タイトルは選手としてぜひ欲しい」と話した。
谷口が底力を見せて1打差2位につけた。4バーディー、3ボギーと1つ伸ばして通算5アンダーにまとめた。「今日は我慢というか、そんなに簡単にはバーディーは取れない。(ショットが)どこに行こうがパーを取って行こう!そういう感じでプレーしていました。頭の中が、脳が疲れています。体も疲労感で…」とコメントした。
9位から優勝圏内に上がったのが2打差3位の武藤俊憲。4バーディー、2ボギーの70をマークした。2016年には最終日最終ホールでボギーをたたいてプレーオフになり、谷原に敗れた。「(惜敗したことは)忘れました。2年前は2年前ですから」といい「前半はティーショットが何度か林の中に入りましたが、経験値でリカバリーしパーセーブができた。上位全選手に優勝チャンスがあるものの、誰が優位とかないと思う。やれることをやるだけです」と雪辱を期した。
最終ラウンド、通算6アンダーを挟んだ激しい攻防戦となった。最終組が落とす中で、一時は先に回っていたグリフィン、阿久未来也が通算5アンダーで首位に立つ場面もあったが、10番で藤本が7アンダーとして首位に返り咲き、2打差で谷口が追う展開に。途中から雨も降りだした。17番で藤本がボギーとし、谷口が5メートルのパーパットを入れて1打差。谷口は「このパットを入れないと(逆転優勝は)絶対にない。ショートだけはしない気持ちで打ったら、きれいに入ってくれた。それで、ひょっとしたら、と思った」と振り返る。最終18番パー5、谷口は手前5メートルのバーディーバットを沈め、通算6アンダーでプレーオフに突入。18番での2ホール目、藤本が3オン2パットのパーに対し、谷口は5メートルのバーディーチャンス。「しっかり打てればいい」と打ったボールがカップに消え、こん身のガッツポーズを見せた。
自身3度目の優勝は、1996年尾崎将司の49歳109日を22年ぶりに更新する、50歳92日という最年長優勝の大記録達成になった。優勝杯を両手で抱えながら周囲をはばからず泣きながらテレビインタビューになった。「泣くような気分ではなかったんだけど・・・。入ったのがうれしくてね。我慢すればチャンスはあると思っていたが、褒められたゴルフではなかった。ため息が出るくらい。大会は最年長優勝だが、ジャンボさんは55歳(2002年ANAオープン)で勝っている。足下にも及びません」と神妙に話し、優勝の余韻に浸った。
プロフィル
谷口徹(たにぐち・とおる)1968(昭和43)年2月10日生まれ、奈良県出身。13歳でゴルフを始め、同大を卒業後、1992年プロ入り。98年三菱ギャランで初優勝し、ツアー通算20勝(2019年シーズン終了時)。賞金王2回(2002年、07年)。
第86回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 谷口 徹 | 282 | = 68 72 71 71 |
2 | 藤本 佳則 | 282 | = 73 68 69 72 |
3 T | B・ジョーンズ M・グリフィン 稲森 佑貴 |
283 | = 64 74 76 69 = 70 72 72 69 = 69 71 72 71 |
6 T | 大槻 智春 小鯛 竜也 S・ハン 宮里 優作 阿久津 未来也 星野 陸也 |
284 | = 71 74 71 68 = 70 73 72 69 = = 74 71 70 69 = 68 72 74 70 = 73 71 70 70 = 74 72 68 70 |