第84回日本プロゴルフ選手権(2016年)
2020.03.16
優勝トロフィーを掲げる谷原秀人(写真提供:日本 プロゴルフ協会)
谷原が壮絶なバーディー合戦制して初の日本タイトル
北海道クラシックGC(7094ヤード、パー72)での開催。北海道開催のため、7月に日程を移し、コースコンディションは最高の舞台になった。ジャック・ニクラウスの設計で、大会前日の会見で倉本昌弘PGA会長は「セッティングのしがいがあったコース。フェアウエーはニクラウスの設計した通りの幅で、グリーン周りの形状も変えていない。(表面に筋が残る)バンカーレーキを導入する」と、コース概要を説明した。腰痛でツアーを離れていた石川遼が5カ月ぶりのツアー復帰、2度の賞金王に輝いている伊澤利光が4年ぶりにツアー登場と、話題も多い大会になった。
第1ラウンド、武藤俊憲がコース記録となる8アンダー64と完ぺきなゴルフで首位に立った。15番から4連続バーディーなど9バーディー、1ボギーだった。「(ショットが)切れっ切れでした。あとはパターを入れるだけで、難しいラインにもついていないんで。自分の持ち味をしっかり出した結果。完ぺきに近いゴルフでした」と自画自賛のプレーだった。
3打差で宋永漢(韓国)が続き、4打差で竹谷佳孝、大堀裕次郎、谷原秀人、片岡大育の4人が追走。石川は1バーディー、6ボギーの5オーバー114位、伊澤は8番でイーグルを奪ったものの11オーバー83で143位と、話題の2人はともに出遅れた。
第2ラウンドで武藤が離れ業をやってのけた。8番(525ヤード)のフェアウエーから残り255ヤードの第2打。「フォローだったので、エッジまで239ヤードを打つユーティリティーで普通に打った。ピンにまっすぐ飛んでいったんで、奥に外れるかなと思った」という1打は、2バウンドしてから転がり、ピンに当たって真上に跳ねてそのままカップに入るアルバトロスを達成。通算13アンダーにスコアを伸ばして独走態勢をつくった。6打差で宋、谷原とマイケル・ヘンドリー(ニュージーランド)が7打差3位につけた。石川、伊澤は予選落ちとなった。
第3ラウンドになって、武藤の快進撃にも陰りが見えた。「バタバタとやらなくてもいいミスを大量にしまして、正直つらかったです」と振り返るように、4番までに3ボギーとスコアを崩した。しかし、そこから同じ最終組で追いかける宋と谷原がバーディーラッシュ、負けじと武藤もバーディーを入れ返す展開になった。14番で谷原がチップインバーディーを奪って一時は1打差に迫る。
せめぎあいは最終18番まで続いた。武藤がカラーから7㍍を入れ、宋も6㍍を沈める。後半インでは3人とも5バーディーを奪い合い、武藤は通算16アンダーで首位を守り、3打差の逆転圏内に谷原、宋がつけた。
武藤は「正直、おもしろかった。2人ともいいプレーをしていたんで、1人だけグズグズしてもしょうがないし。差がいくつあっても安心できない。あすは一番早いのは5つ、6つバーディーを取ること」と初優勝を目指すコメント。谷原は「おもしろかった? そりゃ、そうでしょうね(笑い)。やっているほうも楽しいですよ。ギャラリーの方々にもいいプレーを見せられて、本当に最高ですよ。差は半分になったんで、いいショット、いいパットが決まればチャンスはあるんじゃないですか」と逆転に意欲をみせた。宋は「後半は淡々とフェアウエーに行って、淡々とした流れで3人ともプレーすることができたのではないかと思います。最終日はまず日本のトッププレーヤーから学びたい。その中で自分できる最善を尽くしたい」と話した。
最終日もこの3人が激しいつばぜり合いを演じた。首位スタートの武藤が1番から5連続バーディーで突き放したが、谷原と宋もバーディーを奪い返して追走。11時13分から13時35分、14時57分から15時58分の2度の雷雨中断があった。13番終了までに、武藤23アンダー、谷原20アンダー、宋18アンダーで、谷原が池に入れ、武藤が1オンを狙ってグリーン奥に外したところで2度目の中断。再開後、谷原がファインショットでパーセーブ、武藤、宋がバーディーを奪う。16番パー5で武藤が第3打をまさかのグリーンオーバー。アプローチも寄らずボギーとすると、谷原、宋がバーディー。17番で8㍍を入れた谷原が武藤に1打差に迫り、宋は脱落。最終18番、フェアウエーに置いた谷原がパーセーブしたが、左のラフに入れた武藤は池の手前に刻み、パーを拾えず、ついに谷原が通算22アンダーで追いついた。3人で取ったバーディーは26個、第3ラウンドと合計で48個を積み上げる熱戦だった。
18番で行われたプレーオフ1ホール目、右の林に入れた谷原は木の間を抜いてグリーン手前まで運び、1・5㍍に寄せた。グリーン左に外した武藤はアプローチが寄らず2㍍を残した。先に打った武藤が外し、ウイニングパットを谷原が沈めて決着した。
谷原はうれしい初の日本タイトル。「本当に欲しいタイトルだった。武藤選手、ありがとうございました。ほんと、最終組のバーディー合戦。見ていた人も『すげえ、すげえ』」といってくれて、盛り上がって、最終的に僕が勝てたのがよかった。メジャーに勝っていないことで寂しい気持ちがあった。14番で池に入れてこれで終わりかとも思ったけど、あきらめずによかった」と話した。最後の最後でタイトルがすり抜けていった武藤は「僕に運がなかったということです。しゃあないですね。最後も林からグリーンの近くまで出してきている。運がこの試合では谷原選手に味方したということ。内容的には谷原選手が上でしたね」と唇をかんだ。歴史に刻まれる名勝負だった。
プロフィル
谷原秀人(たにはら・ひでと)1978年(昭和53)11月16日生まれ、広島県出身。瀬戸内高から東北福祉大に進んだが、タイトルには恵まれなかった。98年アジア大会で団体金メダルを獲得している。2001年にプロ転向。03年マンダムシードよみうりオープンで尾崎将司を逆転して初優勝し、素質が開花。05年全英オープンでは5位に食い込んでいる。17年に欧州ツアーのシード権を獲得、18年は欧州ツアーを主戦場にしてシード権を守ったが、19年はシード落ち。20年からは日本に戻る。ツアー通算14勝。
第83回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 谷原 秀人 | 266 | = 68 70 65 63 |
2 | 武藤 俊憲 | 266 | = 64 67 69 66 |
3 | 宋 永漢 | 268 | = 67 70 66 65 |
4 | M・ヘンドリー | 275 | = 70 68 70 67 |
5 T | 宮本 勝昌 B・ケネディ |
278 | = 71 73 69 65 = 70 71 70 67 |
7 T | 大堀 裕次郎 重永 亜斗夢 竹谷 佳孝 |
279 | = 68 71 74 66 = 75 69 69 66 = 68 72 68 71 |
10 T | 藤本 佳則 J・パグンサン H・リー |
280 | = 71 74 64 71 = 71 70 67 72 = 70 74 63 73 |