優勝トロフィーを掲げる河井博大（写真提供：日本プロゴルフ協会）

プロ16年目の河井が公式戦でのプロ初優勝

　兵庫・小野東洋ＧＣ（7158ヤード、パー71）での開催で、プロを悩ませたのがバンカーだった。18ホールに102個が口を開け、しかも砂質が軟らかく、目玉になりやすい。「罠」をどう克服するか。
　第1ラウンド、５アンダーで金亨成（韓国）とＪ・チョイ（米国）の外国勢が首位にたった。１打差３位につけたのが藤田寛之ら５人。藤田は最終９番で50センチにつけるバーディーとし、５バーディー、1ボギーの４アンダー67をマークした。「小野東洋の罠を最後まで避けながらラウンドできた。うまく逃げましたね」とスポーツ報知紙がコメントを伝える。バンカーを避けるために「人生で一番刻んだ」と、徹底したことが功を奏した。
　最年少優勝（19歳９カ月＝浅見緑蔵）の更新を狙ってスタートした19歳７カ月の石川遼は、最終18番でバンカーに入れ、ボールが見えない目玉になって1打で脱出できずダブルボギーでイーブンパー71の37位スタートになった。「予選を突破したら特別な感情が沸くかもしれないが、優勝争いするつもりで巻き返す」と話した。
　第２ラウンド、その石川はグリーンを10回外しながらも8回を「寄せワン」で耐え、通算イーブンパーでホールアウト。26位に上がり、プロデビューから大会挑戦４度目で初めての予選通過を決めた。「これ以上落ちると珍記録になるので、今年は通りたかった」といい「明日はアグレッシブにプレーして自分からスコアを動かして、優勝を狙える位置で最終日を迎えたい」と意気込みを見せた。
　上位は伸び悩み、通算4アンダーで河井博大、松村道央、J・チョイが並んだ。松村は５番でボールが松ぼっくりにくっついて止まってしまい、松ぼっくりを打つしかなくミスになるボギーなど不運もあったが「全体としてはいいプレーになった」と話した。河井は６バーディー、１ボギーのこの日のベストスコア67で回り「流れがよく、難しいホールを気楽に回れた。勝ちたいのはもちろんですけど、まだ心技体が中途半端」と、日刊スポーツ紙は伝えている。
　第３ラウンド、その河井が2つスコアを伸ばし、66で追い上げた裵相文（韓国）と並んで通算６アンダーで首位を守った。「２～３メートルのパットが入ってくれた。去年、石川遼君が使っていた矯正器具を見つけて買った」と、パッティング好調の理由を挙げた。
　石川は10番から４連続ボギーなど74とスコアを落とし、通算３オーバーに後退。最年少優勝が遠のき「（４連続ボギーは）本当に悔やまれます。最終日は見てくれる人のためにいいプレーをしたい」と切り替えていた。
　最終ラウンド、優勝争いは河井と裵のマッチレース。通算８アンダーで並んでいた17番パー３で、河井はグリーン手前にショートしたが、約10メートルをパターで入れるバーディーで抜け出した。最終18番では裵がボギーとし、結果的には２打差がついたが、18ホール続いた初優勝へのプレーシャーに打ち勝ち、プロ16年目で初優勝が最古の公式戦という快挙を成し遂げた。
　グリーンサイドにいた師匠の田中秀道と抱き合って泣いた。日刊スポーツによると、２度目のシード落ちになった2007年には、田中に「もうやめようと思います」とメールを打ったが「やめるな、面倒を見る」と返され、もう1度頑張ろうと決めたという。「本当に長かった。くじけそうなことがいっぱいあって。最後パットを決めたときは、この瞬間のためにやってきたんだと思えました」。
　39歳６カ月２日での公式戦でプロ初優勝は、1973年ツアー制施行以来、五十嵐雄二（40歳９カ月10日＝ツアー選手権）、テラベイネン（40歳５カ月6日＝日本オープン）に次ぐ３番目の年長記録で、この大会では最年長記録になった。

プロフィル

河井博大（かわい・ひろお）
1971年11月13日生まれ、広島県出身。14歳でゴルフを始め、瀬戸内高－日大を経て、広野ＧＣに研修生として入る。1996年プロテスト合格。2006年にパーオン率1位に輝くなどショットメーカー。ツアー通算勝利は、この日本プロの１勝。

第79回日本プロゴルフ選手権