優勝トロフィーを掲げる伊澤利光（写真提供：日本 プロゴルフ協会）

伊澤利光、ショットのきらめきを取り戻して初優勝

　初めて沖縄での開催となった舞台は、喜瀬ＣＣ（7192㍎、パー72）。沖縄独特の強い風が吹く中で、伊澤利光が復活の大会初優勝を遂げて、日本タイトル３冠となった。
　第1日は首位に5人が並び、早くも混戦模様になった。2001、03年賞金王をとった後に体調を崩すなど低迷してきた伊澤利光が４アンダー68をマークして首位グループの一角に。日刊スポーツ紙によると「10番で２㍍ぐらいのパーパットを入れて流れがよくなった」と、2年ぶりの首位を振り返っている。谷口徹、室田淳、藤田寛之、金鍾徳が並んでいる。沖縄開催で期待を集める地元出身の宮里優作は2打差11位のスタートになった。
　伊澤は第２日も強風の中で２つスコアを伸ばし、通算６アンダーで単独首位に抜け出した。「いいんじゃないですか。納得しています」と話し、強風に対してパンチショットを多用したという。１打差２位に浮上したのが井手口正一。プロ9年目で、3番でダブルボギーをたたいた後に6バーディーを奪うなど68をマークした。05年に下部チャレンジツアーの賞金王になってツアー出場権を得た。スポーツニッポン紙によると、ツアーでは節約のため熊本からワンボックスのマイカーで移動しているという。沖縄は飛行機だったが泊りは民宿で節約。2位浮上に「気持ちいいですね」と話している。
　第３日は1位伊澤、２位井手口が変わらず、地元期待の宮里優作が優勝争いに加わった。前半はボギーが先行したが、10番から3連続バーディーで息を吹き返した。最終18番で第2打をギャラリーの中に打ち込んだが、うまいリカバリーをみせてパーで切り抜けてこの日はイーブンパー、通算３アンダーをキープし、伊澤に３打差３位に浮上した。日刊スポーツ紙によると「追う方が楽だし、沖縄でいいゴルフができるのは幸せ。見に来てくれているジュニアの子たちのためにしっかりしたゴルフをしたい」と、話している。首位を守った伊澤は「せっかくいい位置にいるので、公式戦は一応、すべて勝っておきたい」と、日本オープン（1995年）、ツアー選手権（2000、03年）に続く日本タイトルを意識していた。
　最終日、伊澤は我慢を強いられる。10番まですべてパー、11番でバーディーを奪ったが12番ですぐにボギーをたたく。15番でボギーにした時点で、３打差３位からスタートした広田悟がバーディーを奪って１打差まで追ってきていた。17番で８㍍のバーディーパットを入れ、最終ホールをボギーにしたが何とか逃げ切った。通算５アンダーで日本プロ初優勝、日本タイトル3冠を達成した。
　「うれしいです。やってきたことがムダではなかったことが証明されましたから」と05年アンダーアーマーＫＢＣオーガスタ以来の優勝も冷静に話した。04年から賞金ランクは二けた台に低迷し、大会前年の06年には賞金ランク78位まで落ち込んでいた。30代後半になり「世界一美しい」と言われたスイングの改造にも乗り出した。クラブ契約を打ち切り、筋力トレーニングなどで体重を増やすなど、試行錯誤を続けた結果、生命線だったショットがよみがえった。

プロフィル

伊澤利光（いざわ・としみつ）
1968年３月２日生まれ、神奈川県出身。8歳からゴルフを始め、日体荏原高から日体大に進学。1986年朝日杯全日本学生、87年日本オープンローアマなどのタイトルを取る。89年プロテスト合格後、米国のミニツアーに挑戦。94年から日本を主戦場とし、95年日本オープンで初優勝を飾った。2001年マスターズで日本選手歴代最高の４位に入り、アーノルド・パーマーから「キング・オブ・スイング」と絶賛された。同年、国内５勝で初の賞金王。約２億1793万円の獲得賞金は歴代１位。02年に丸山茂樹とのペアでＷＧＣ－ワールドカップに優勝。03年には２度目の賞金王に輝いた。ツアー通算16勝。

第75回日本プロゴルフ選手権