第74回日本プロゴルフ選手権(2006年)
2018.03.12
優勝トロフィーを掲げる近藤智弘(日本プロゴルフ協会50年史より)
プレーオフを制し、近藤智弘がシルバーコレクター返上
岐阜県の谷汲CC(7003ヤード、パー72)で行われた2006(平成18)年の日本プロは波乱の幕開けとなった。7アンダーの単独首位でホールアウトしていた尾崎直道が失格となってしまったのだ。前日の雨の影響でボールに泥がつきやすい状況だったため、大会側から「スルーザグリーンにある球は、罰無しに拾い上げて拭くことが出来る。その後、その球は必ずリプレースしなければならない」という特別追加競技規則が出されていた。ところが、尾崎は「リプレース」ではなく「1クラブレングス以内にプレース」と勘違いし、実際にそのような処置を何度も行っていた。スコアカードを提出し、会見を終えてから分かった“ミス”はもう取り返しようがなく「過少申告」での失格となってしまった。しかも、同組で回った深堀圭一郎、丸山大輔も同様の処置をしていたため、同組の3人全員が失格となる異例の事態となった。通常は「1クラブレングス以内にプレース」が採用されることが多かったための勘違い。尾崎は「いいスコアになるはずだ。恥ずかしい」(スポーツニッポン紙より)と肩を落としてコースを後にした。
結果的に初日首位に立ったのは6アンダーをマークした中田範彦。谷口徹、近藤智弘ら5人が2打差の2位につけた。
2日目は68をマークした谷口が通算8アンダーとし、中田と並んで首位に。谷口は雨の3日目も69にまとめて11アンダーにまでスコアを伸ばし、2位の高山忠洋に3打差の単独首位となった。この時点でツアー10勝、2002年には賞金王にも輝いている実力者が大会初制覇に大きく近づいていた。
だが最終日、谷口がいきなりつまずいた。1番でティーショットを左に曲げたことからダブルボギーを叩いてしまったのだ。試合は混戦に。谷口はその後、実力者らしいゴルフで盛り返していたが13番パー3で池につかまって流れが止まる。「13番の池ポチャがすべて」(スポーツニッポン紙より)と悔やんだ。
谷口が苦境に陥っていたころ、首位戦線に浮上していたのが5打差7位スタートの友利勝良と4打差3位にいた近藤だった。終盤を迎えたところで2人は12アンダーにまで伸ばして首位に並んでいた。だが、難易度が非常に高い終盤でそろってスコアを落とす。友利は17、18番で連続ボギー。一方の近藤は16、18番でボギーを叩いてしまった。それでも、ともに10アンダーで首位の座は守っていた。最終組の谷口が18番で入れればプレーオフに加われる10mのバーディーパットを逃し、友利、近藤によるプレーオフが決まった。
近藤は当時ツアー未勝利の28歳だった。学生時代からアジア大会金メダルをはじめ数々のタイトルを手にし、大きな期待を背負ってプロ入りした近藤は2年目の2001年に賞金ランキング30位で初シードを獲得すると、その後も毎年安定した成績を残していた若手実力派だった。だが、唯一、優勝という結果だけが不足していた。この時点で2位に泣くこと6度。うち2度がプレーオフ負けだった。自身3度目のプレーオフ。相手の友利は51歳。大会最年長優勝がかかっていた。
プレーオフは480ヤードと長い18番パー4で行われた。ともに2打目をグリーン奥にこぼした。同じような位置から先に打った友利のボールはカップを3mほどオーバーした。これを見た近藤は冷静に30cmに寄せ、先にパーパットを沈めた。そして、友利のパーパットが外れる。ついに訪れた勝利の瞬間。近藤は天を仰いで感激をかみしめた。「苦しい展開でも何とか気合で、気持ちだけは負けずにやろうと思っていた。勝ちたい気持ちを強く持ってやれました。今日は自分に勝てたかな。やっと弱い自分に少しだけ勝つことができました」(日刊スポーツ紙より)。
初優勝が日本プロの大舞台。シルバーコレクターというありがたくない“肩書き”を払しょくした近藤はこの後、本当の実力者へと成長していった。
プロフィル
近藤智弘(こんどう・ともひろ)1977~愛知県出身。東京学館浦安高校、専修大学時代には日本ジュニア、日本学生、アジア大会(団体、個人)など数多くのタイトルを手にした。2000年にプロデビュー。06年の日本プロで初優勝を飾ったのを皮切りに計6勝を挙げている。14年には自身初の年間1億円突破を果たし、賞金ランキング3位に入った。
第74回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 近藤 智弘 | 278 | = 68 70 71 69 |
2 | 友利 勝良 | 278 | = 71 69 70 68 |
3 T | 片山 晋呉 谷口 徹 |
279 | = 69 69 72 69 = 68 68 69 74 |
5 T | 白 佳和 川原 希 J・M・シン |
280 | = 72 70 70 68 = 69 75 67 69 = 71 72 68 69 |
8 | 林 根基 | 281 | = 68 69 72 72 |
9 | 久保谷 健一 | 282 | = 70 70 70 72 |
10 T | 葉 偉志 梁津萬(リャンウェンチョン) |
283 | = 71 69 72 71 = 72 68 69 74 |