第71回日本プロゴルフ選手権(2003年)
2018.05.01
優勝トロフィーを掲げる片山晋呉(日本プロゴルフ協会50年史より)
故郷で鮮やかな逆転劇。片山が涙の大会初優勝
茨城県の美浦GC(7010ヤード、パー72)で行われた2003(平成15)年の日本プロ初日は強い風雨が選手たちを苦しめた。平均ストロークは75.329。80以上叩いた選手は20人いた。そんな中、5アンダー、67で単独首位に立ったのは鈴木亨だった。2イーグル、7バーディー、4ボギー、1ダブルボギーという派手な内容に「このところすごく地味なゴルフが多かったけど、きょうはすごかった。これだけイーグルやバーディーが来ると楽しいね」(スポーツニッポン紙より)と笑った。鈴木は2日目も快調なゴルフを続ける。1イーグル、6バーディー、2ボギーの66。通算11アンダーで2位の片山晋呉らに4打差をつけた。この日の鈴木は途中からたった1人でのラウンドという特殊な状況に置かれていた。初日はほかの組と同じく3人でのプレーだったが同組の尾崎健夫が初日終了後に棄権し、この日は湯原信光がラウンド中に持病の腰痛を悪化させて13ホール目の4番でリタイアした。1人のプレーはリズムが取りにくい上に、同伴競技者のショットを参考にすることができないからやりにくい。実際に鈴木は1人になった4番と続く5番で連続ボギーを叩いてしまった。それでも6番パー5は3mに2オンする。自らのテンションをあげるためギャラリーに「これを入れるから盛り上がろうよ」(スポーツニッポン紙より)と呼びかけ、見事に有言実行。拍手喝采を浴びた。
鈴木の進撃は3日目も続いた。6番で3日連続のイーグルを奪うなど、1イーグル、5バーディー、1ダブルボギーの67。通算16アンダーとした。その鈴木に食らいついたのが同じ組で回った片山晋呉だ。最終18番パー5は2人ともに2オン。ほぼ同じラインから先に打った鈴木は2パットのバーディーでホールアウトした。そして片山。鈴木のパッティングを参考に左から右に大きく曲がる6mのイーグルパットをねじ込んだ。派手なガッツポーズでギャラリーを沸かせ、差を3打に縮め、S・K・ホと並ぶ2位でホールアウトした片山は「18番は魅せてナンボだし、入れるか入れないかで相当違うでしょう。あれで鈴木さんもちょっと嫌だと思ってるんじゃないですか」(スポーツニッポン紙より)と、してやったりの表情だった。
最終日は首位の鈴木とホが最終組、片山が1組前というペアリングとなった。鈴木は2番でバーディーを先行させたが、6番でダブルボギーを叩いてからズルズルと後退していく。片山も7番を終えて1バーディー、2ボギーと苦戦。パットが入らなかった。だが、あまり考えずにいこうと気持ちを切り替えた9番から4連続バーディー。一気に浮上した。
難易度の高い15番パー3をボギーとして迎えた16番パー4、片山はアプローチウェッジで2打目を放ったつもりだった。いい感触のはずがボールはキャリーでピンを越え、グリーン奥いっぱいで辛うじて止まった。クラブを見ると、ピッチングウェッジ。まさかのケアレスミスだった。だが、片山は下りの長いバーディーパットをねじ込んだ。「3パットだけはしないように」(スポーツニッポン紙より)と念じながら打ったほどの難しいパットだった。通算16アンダーでホと首位に並んで迎えた18番、片山は2打目を5番アイアンで奥のカラーまで運んでバーディー。単独首位でホールアウトした。そして最終組のホが18番でバーディーを奪えず、大会初優勝が決まった。
「あ~、勝てたんだというのが今の気持ち」(スポーツニッポン紙より)。そう喜びを表現した片山の目がうるんでいる。これが通算13勝目となるが、勝利の涙は初優勝以来だった。それくらい、この大会にかけていたのだ。
会場の美浦GCは茨城県出身の片山にとってはホーム。春先から何度も練習ラウンドに訪れ、対策を練っていた。前年はプレーオフで逃した「プロならば絶対に欲しい」(スポーツニッポン紙より)と自らが言うタイトルを、しかも地元でつかみとった喜びは格別だった。
3日間、首位を守り続けていた鈴木は4位。最後に18番でイーグルを奪ったのはせめてもの意地だった。「日本というタイトルは重い。勝てば少しは一流に追いつくかと思ったけど」(スポーツニッポン紙より)と悔しさをにじませた。
プロフィル
片山晋呉(かたやま・しんご)1973~茨城県出身。水城高校、日本大学を経て1995年にプロ入り。98年のサンコーグランドサマーで初優勝を飾る。00年には5勝を挙げて初の賞金王に。以降、04、05、06、08年と計5度の賞金王に輝いている。07年の日本ゴルフツアー選手権で日本タイトル4冠を達成し、08年の日本オープンで通算25勝目を挙げて永久シード選手に。17年までに優勝数を31に伸ばしている。
第71回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 片山 晋呉 | 271 | = 71 66 66 68 |
2 | S・K・ホ | 272 | = 71 66 66 69 |
3 | 渡辺 司 | 273 | = 72 66 67 68 |
4 T | 藤田 寛之 鈴木 亨 |
275 | = 69 68 68 70 = 67 66 67 75 |
6 T | 井上 信 真野 佳晃 |
276 | = 70 68 69 69 = 69 71 66 70 |
8 | T・ハミルトン | 277 | = 68 70 69 70 | 9 T | 谷口 徹 佐藤 信人 |
279 | = 70 68 69 72 = 73 69 69 68 |