第70回日本プロゴルフ選手権(2002年)
2018.08.13
5月20日付スポーツニッポン紙
自分でもびっくりの久保谷の優勝
奈良・KOMACC(7048ヤード、パー72)での大会。コース難度を緩めて「バーディー合戦」を演出するはずが、そうはいかなかった。大会期間中は強風が吹くなど天候の試練に選手たちは苦しみ、最後に笑ったのはショットメーカーの久保谷健一だった。コース設定の責任者だった倉本昌弘が大会前「4日間15アンダーもありうる」と話していたが、初日から「我慢大会」になる。元々起伏に富んだグリーンが強風で硬くなった。首位に立ったのはリチャード・バックウェルと佐藤英之の3アンダー69。佐藤は予選会からの出場で、普段は週2回のレッスンで生計を立てており「試合をできるのがとにかく楽しみで仕方なかった」と、日刊スポーツ紙はうれしさを伝えている。1打差3位につけた尾崎健夫が久しぶりの好発進に「上位に離されずについていくのが公式戦の戦い方」と85、88年に続く3度目優勝を狙った。強風で表情が変わったコースで倉本は10オーバーをたたくなど、苦戦する選手が続出した。
2日目、尾崎将司が6バーディー、2ボギーの68をマークし、通算4アンダーで谷口徹、小山内護とともに首位に立った。日本プロは過去6勝を挙げ、日本タイトルは計19勝。55歳になったが、スポーツニッポン紙によると、2日間のドライバー平均飛距離は289.25ヤードで1位に立っており「自分がやろうとしているゴルフができれば先(優勝)は見えてくるよね」と自信のコメントをしている。地元奈良での開催となった谷口は「大きなミスをしないように当たり障りのないゴルフをしてきた」とコメントしている。
3日目は、小山内がS・K・ホとともに、通算7アンダーで首位にたった。最終組で師匠の尾崎将と回った小山内は、5バーディー、2ボギーの69をマークした。99年に日本プロマッチプレーを制したが、好きな酒がたたって00年夏に肝臓を患い、医師から酒を止められていた。復活の兆しに、日刊スポーツ紙に「最終日は思い切り攻める。それでだめなら仕方ない」と話している。尾崎将は2打差3位で「混戦にしてやった」といい「明日は自信をもってやれるか、精神面の勝負だ」と逆転を目指した。
その小山内は最終日、2番でOB2発をたたいて早々と脱落。代わって浮上したのが5バーディー、ボギーなしの67で回った久保谷と、7バーディー、1ボギーの66で回った片山晋呉。ともに通算9アンダーで並び、プレーオフに突入した。2ホール目の17番パー5での第3打、先に片山が2.5メートルにつけ、バンカーに入れていた久保谷は絶妙なショットで30~40センチに寄せた。片山が外し、久保谷が決めて決着。久保谷は初のプロ日本一のタイトルを手にした。
練習日に小達敏昭からハンドダウンの構えを上げ、フィニッシュも高くするようにアドバイスされ、それを実行したという。「こんなに急に変わるなんて不思議。突然勝っちゃって、実感がないし、喜びなんて沸いていません」(スポーツニッポン紙)と、自分でもびっくりの優勝だった。練習の虫といわれる努力家。「きっと神様がご褒美をくれたんだと思う。やっぱりあきらめちゃいけない」(日刊スポーツ紙)という気持ちを伝えている。
久保谷は翌週のマンシングウェアオープンKSBカップにも勝って2週連続優勝し、トップクラスの選手の仲間入り。12年に日本オープン、17年パナソニックオープンを制するなど息の長い選手になった。
プロフィル
久保谷健一(くぼや・けんいち) 1972年3月11日生まれ、神奈川県出身小さいころに父親が経営する練習場でゴルフを始めた。明大を経て95年にプロ入り。97年のフジサンケイクラシックで尾崎将司との競り合いを制して初優勝。03年にはQTから米ツアーに挑戦している。11年のキヤノンオープンで石川遼らを抑えて9年ぶりの優勝。12年日本オープンでは6打差を逆転して優勝した。14年に椎間板ヘルニアの手術後低迷したが、17年パナソニックオープンで6打差20位から宮本勝昌とのプレーオフに持ち込み優勝を飾った。ツアー通算7勝。
第70回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 久保谷 健一 | 279 | = 74 70 68 67 |
2 | 片山 晋呉 | 279 | = 73 72 68 66 |
3 T | S・K・ホ 尾崎 将司 |
280 | = 73 70 66 71 = 72 68 71 69 |
5 | 米山 剛 | 282 | = 71 73 70 68 |
6 T | D・ウィルソン T・ハミルトン |
283 | = 73 70 71 69 = 72 73 68 70 |
8 T | 谷口 徹 矢野 東 尾崎 直道 |
284 | = 71 69 72 72 = 73 75 68 68 = 72 73 67 72 |