第68回日本プロゴルフ選手権(2000年)
2018.06.06
2000年5月15日付日刊スポーツ紙
佐藤信人が難コース攻略、初優勝飾る
足首まで隠れるラフ、狭くてうねるフェアウエー、巧みに配置された池など、公式戦らしい難コースでの戦いを制したのは、プロ8年目の佐藤信人だった。千葉・カレドニアンGC(6901ヤード、パー71)で開催された大会。第1ラウンドで4アンダー67をマークして首位に立ったのが鈴木亨。「このコースは去年の日本オープン(北海道・小樽GC)より難しい」と少しひるんでいたが、日刊スポーツ紙によると「1回ミスしてもどこかでカバーすればいい」と気持ちを切り替えたことがうまくいった。5番パー3で1・5メートルにつけてから5連続バーディーを奪った。「飛距離を望まずにグリーンで止まりやすいように」ボールをスピン量の多いものに替えたのが功を奏した。同じく5アンダーで首位に並んだのが東聡。前週、同じジャンボ軍団の尾崎健夫が優勝。「自分も毎試合優勝争いに絡んでいるので。アイアンの調子がいい」と好調さをアピールした。1打差3位に佐藤、尾崎将司ら5人、2打差で6人が続く混戦になった。
第2日、東は3バーディー、1ボギーの69をマークして通算6アンダーとし単独首位に立った。サンケイスポーツ紙によると「風もなかったし、僕には易しかった」と初のプロ日本一に向けて安定したゴルフを見せた。2位にはこの日イーブンパーだった鈴木がつけた。2週連続優勝を狙う尾崎健が、4バーディー、2ボギーの69をマークして、前日14位から通算3アンダーで首位に3打差の3位に浮上した。「グリーンはうねりが激しいからグリーン手前ではなく、ピンから離れた5メートルぐらいの平らなところを狙った」という。過去2回優勝しており、日刊スポーツ紙では「この大会は経験と力のある人間が勝つ」と、自信を見せていた。佐藤が同じく3位につけ、田中秀道が首位に4打差5位に浮上、尾崎将は通算イーブンの14位に後退した。
第3日、初日から首位の東が安定したプレーを進めた。ラウンド途中から雨が降るコンディションの中、3バーディー、3ボギーの71のイーブンパーと粘り通算6アンダーをキープして首位を守った。「雨でコースが狭くて長く見えた」と、スポーツ報知紙は伝える。10番では約12メートルのロングパットも沈めた。「アイアンの調子は(5勝した)95年に戻っている。いや、それ以上かも」と、第1日からアイアンの調子がよかった。「最後に一番上にいなきゃ意味がない」と最終日を見据えた。第1日から上位に座っている佐藤は、4バーディー、2ボギーの69をマークし、1打差2位に迫った。「日本プロですから意識しないはずがない。明日は入れ込みすぎないようにしたい」と、日刊スポーツ紙にコメント。3打差3位にスティーブン・コンランがつけ、18番で池に入れるボギーをたたいた田中が桧垣繁正とともに4打差4位。2週連続優勝を目指した尾崎健は76とスコアを落とし「お粗末さまでした」と14位に後退して、優勝争いから脱落した。
最終日は佐藤が4、6番でバーディーを奪い、4番まで3ボギーの東を逆転して首位に立った。しかし、佐藤も中盤スコアを落とし、14番を終えて佐藤4アンダー、東3アンダーの競り合いになった。15番で第1打を打った時点で、雷のため33分間の中断。再開後、佐藤はフェアウエーから第2打をピン70センチにつけ、東はラフからクリークに入れた。バーディーの佐藤と、ダブルボギーの東で4打差となり、勝負はほぼ決した。佐藤は17番でボギー、東が16,18番でバーディーを奪ったが、1打差で佐藤に勝利が転がり込んだ。
初めてのタイトルに、佐藤は「トロフィーを持った時に、刻まれているそうそうたる名前を見て重みを感じた」という。前月のキリンオープンで同様の中断があり、再開後のミスをして優勝争いから脱落した経験を生かし、今回は中断の間は常に体を動かしていたという。スポーツニッポン紙には「緊張した中で(再開後の)15番のようなショットが打てたのが自信になる」と話している。
ウイニングボールは手元にあった。昨年7月に婚約した夫人の祖母が倒れて亡くなった。「優勝したら墓前にと思っていた」と話している。この優勝を機に日本プロマッチプレー、ツアー選手権を制するなど、トッププレーヤーの1人となった。
プロフィル
佐藤信人(さとう・のぶひと) 1970年3月12日生まれ千葉県出身。高校卒業後、米国の全寮制士官学校に留学し、その後ネバダ州立大に編入。93年にプロテスト合格。96年に下部ツアーのグローイングツアーで2勝を挙げてレギュラーツアーのシード権を獲得し、97年JCB仙台で初優勝。2002年には日本プロマッチプレー、ツアー選手権を制するなどツアー通算9勝。03年に欧州ツアーQTを突破して04年に欧州ツアーに参戦している。
第68回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 佐藤 信人 | 280 | = 68 71 69 72 |
2 T | 桧垣 繁正 東 聡 |
281 | = 69 72 70 70 = 67 69 71 74 |
4 T | 平塚 哲二 飯合 肇 水巻 善典 田中 秀道 |
283 | = 71 73 72 67 = 69 72 74 68 = 72 69 73 69 = 71 69 71 72 |
8 T | 桑原 克典 佐々木 久行 |
284 | = 70 74 70 70 = 77 69 68 70 |
10 T | 尾崎 健夫 S・コンラン |
285 | = 70 69 76 70 = 70 71 69 75 |