第65回日本プロゴルフ選手権(1997年)
2015.05.18
トロフィーを掲げる丸山茂樹(日本プロゴルフ協会50年史より)
世代交代を推し進めた丸山茂樹の初勝利
歴史を振り返った時、時代の変わり目となった年は必ず存在する。1997(平成9)年は男子ツアーにおいてそんな道しるべとなる年ではないだろうか。第2期黄金時代を築いた尾崎将司の独壇場だった1990年代。50歳を迎えた1997年も、その強さは別格だった。
一方で、若い力も確実に育っていた。この年、深堀圭一郎、藤田寛之、佐藤信人、横田真一、宮瀬博文、久保谷健一といったその後、男子ツアーの中核へと成長する若手たちが次々に初優勝を飾った。藤田と久保谷は、尾崎を2位に従えての優勝だった。片山晋呉や宮本勝昌が初シードを手にしたのもこの年だ。世代交代の波が巻き起ころうとしていた。
急速に勢いを増してきた若手の旗頭が丸山茂樹だった。アマチュア時代に数多くのタイトルを獲得し、大きな期待を背負って1992年にプロ入り。翌1993年のペプシ宇部興産で早くも初優勝を果たしてツアーの人気者になっていた。
丸山は1995年に賞金ランキング3位、1996年には同5位とトッププレーヤーとしての地位を固めていた。ただ、日本タイトルとは無縁。尾崎という巨大な壁に風穴を開け、新たな時代を切り拓くためには一刻も早く手にしたいのが日本タイトルだった。1996年は日本プロと日本シリーズで2位。いずれも尾崎の軍門に下っていた。
1997年最初の日本タイトルは5月の日本プロだった。会場は茨城県のセントラルGC西C(7049ヤード、パー72)。丸山は予選ラウンドで尾崎と同組だった。
初日、丸山は4アンダー、68をマークして首位から2打差の4位につけた。一方で尾崎は74で87位と大きく出遅れた。
2日目、尾崎は7番パー4(379ヤード)で池に2度入れて「8」を叩くなど大荒れ。前年、丸山に8打差をつけて圧勝した男が、よもやの予選落ちとなった。その尾崎を横目に丸山はこの日も68で回り、通算8アンダーで2打差の3位と好位置を守った。
大本命が消えた3日目、丸山は前半のアウトこそすべてパーと伸び悩んだが、インでは3バーディー、ボギーなし。通算11アンダーで首位グループとの差「2」を維持した。通算13アンダーの首位は3人。30歳の河村雅之、25歳の横田真一、23歳の杉本周作と若手が並んだ。最終日はこの3人が最終組。丸山はひとつ前の組で優勝を目指した。
前半、上位陣は停滞する。最終組の横田と杉本はパープレー、河村は3つスコアを落とした。丸山も2バーディー、2ボギーと一進一退。混戦のままインに入っていった。
10番パー5(502ヤード)、丸山が3打目を80センチにつけてバーディーを奪う。これが口火となった。続く11番パー4(379ヤード)でも2打目を80センチに寄せて連続バーディー。13番からは3連続バーディーを決めて一気に抜け出した。
最終組は停滞したまま。最終18番パー5(550ヤード)を迎えた時点で2位の杉本に2打差をつけていた。
18番グリーンで20センチの“ウイニングパット”を沈めた丸山は、わずかながら追いつく可能性がある杉本のホールアウトを待たずしてガッツポーズを繰り返し、ボールをギャラリーに投げ込んだ。
結局、杉本の最終ホールはパーで優勝決定。記者会見で「メチャクチャうれしい。まさかジャック・レナーみたいなことはないだろうし、思わずボールを投げちゃった」と興奮気味に喜びを語った。
ジャック・レナーとは1983年のハワイアンオープンで青木功に敗れた選手である。最終組のひとつ前でプレーしていたレナーは最終組の青木に1打差の単独首位でホールアウトしていたが、奇跡のイーグルに屈している。そんな歴史を理解していながらも、優勝を確信していたのだ。
好位置につけた初日から「トッププロは必ず公式戦を勝っているから」と優勝を意識し続けてプレーしてきた。その中でつかんだ初の日本タイトル。世代交代の波はより大きくなっていった。
丸山はこの年、日本プロマッチプレー、日本シリーズと日本タイトルを立て続けに奪取した。賞金王こそ尾崎に譲ったが、年間最優秀選手賞を獲得。海外でも全英オープンで10位に入るなど活躍。世界へ向けて大きな一歩を踏み出した。
プロフィル
丸山茂樹(まるやま・しげき)1969~千葉県出身。日本大学時代にアジア大会団体・個人金メダル、日本学生2勝など数多くのタイトルを獲得。1992年にプロ入りし、翌93年に初優勝を飾った。国内では通算10勝。2000年からは米ツアーでプレーし、日本人選手最多の3勝を挙げた。また、02年には伊澤利光とのペアでワールドカップ制覇を成し遂げている。
第65回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 丸山 茂樹 | 272 | = 68 68 69 67 |
2 | 杉本 周作 | 274 | = 68 66 69 71 |
3 | 原田 三夫 | 275 | = 69 70 69 67 |
4 | 河村 雅之 | 276 | = 66 68 69 73 |
5 T | 伊澤 利光 トッド・ハミルトン |
277 | = 71 68 70 68 = 69 69 69 70 |
7 T | 渡辺 司(東) デービッド・イシイ |
278 | = 72 66 68 72 = 70 69 69 70 |
9 T | 小達 敏明 スチュアート・ジン 横田 真一 |
279 | = 66 74 66 73 = 70 69 69 71 = 68 69 66 76 |