第62回日本プロゴルフ選手権(1994年)
2015.11.02
1994年5月16日付スポーツニッポン
無名合田が涙の初V、バンカーからパターで脱出
この年、記憶に残るプレーが生まれた。舞台は岐阜・レイクグリーンGC(7138ヤード、パー71)。最終日最終ホール、バンカーからパターで脱出した合田洋のプレーは、いまもゴルフファンの記憶に焼きついている。
初日、首位に立ったのは合田。5アンダー66をマークして「アイアンショットの距離、方向ともとてもよかった」と、報知新聞は伝えている。ツアー未勝利、無名の合田よりも、この日注目を集めたのが尾崎将司。前週のフジサンケイクラシック3日目に、2日目のルール違反が発覚して失格した直後の試合。3アンダー69で回って「今後を占う」としてきた初日を乗り切った。勝てば大会最多6勝目、47歳3カ月の最年長優勝と記録もかかった大事なスタートになった。
2日目に首位に立ったのは木村政信だった。2日連続の69で通算4アンダー。スポーツニッポン紙は「調子は自分でもよく分からない。何かうまく行っているという感じ」とコメントを載せている。この日注目を集めたのが中嶋常幸。初日76をたたいて88位と出遅れて「自分だけ置いていかれた感じで、中嶋すね吉になっていた」というが、この日は木に当たってOBを免れた2番をバーディーにするなど7バーディー、1ボギーの65をマークして一気に通算1アンダー。首位に3打差の9位に浮上した。もう1人、青木功は通算2アンダーで、尾崎将をともに5位と好位置につけて「AON」対決を予感させる展開になった。初日首位の合田は「グリーンを外したら全部ボギー」と首をひねり、通算3アンダー2位に後退した。
3日目に、その合田が抜け出した。最終組でのプレーに「緊張しやすい方なので、4、5ホールまでドキドキしていました」とスポーツニッポン紙が伝える。前日は寄らなかったアプローチがこの日はさえ、リズムを作った。10番から3ホール連続でグリーンを外しながらもパーを拾った後、15、16番で5メートル前後を沈める連続バーディーで67をマークし、通算7アンダーで首位に返り咲いた。前年の賞金ランク93位がこれまでの最高で「最終日を首位で迎えるのは初めてです」と公式戦での初優勝がみえて緊張感が漂った。2位は5打差で海老原清治が続き、6打差で尾崎将司が望みをつないだ。青木は7位、中嶋は12位と優勝戦線から遠のいた。
最終日、やはり尾崎将が上がってきた。12番までに4つのバーディーを奪って合田にプレッシャーをかける。14番でボギーにしたが、合田の15、16番連続ボギーでついに1打差。バーディーを狙った17番パー5で、グリーン左手前のラフからの第3打をミスしてバーディーを奪えず、追いつく好機を逃した。そのまま、最終18番を迎える。
通算5アンダーで、尾崎将に1打差に迫られた合田の第2打は手前のバンカー。尾崎将は左手前に外したが寄せやすい場所。合田にとってはパーセーブが絶対条件だった。ピンまで約30ヤード。一度はサンドウエッジを手にした合田だったが、キャディーを呼び戻してパターに替えた。「ちょっと格好悪いかなと思いましたけど(プレッシャーで)しびれた状態。これまでやったことがなかったけど、勘を信じました」と振り返っている。ギャラリーもこの「奇策」を低いどよめきと好奇の目で見つめた。低いアゴを超えた1打は2メートル弱、ピンをオーバーした。尾崎のアプローチは入らず、沈めれば優勝のパーパットがカップに入ると、尾崎将が近づいて祝福した。尾崎将にもたれかかるようにして、合田はうれし涙。ギャラリーも大きな拍手で讃えた。
1984年にプロテストに合格後、苦労を重ねて10年。この年はこの大会までに持ち球をフックからスライスに変えるスイング改造をしたという。「感無量です。最後はひざががくがくするし、頭は貧血状態。立っているのがやっとでした」とコメントしている。「バンカーからパターで脱出」でつかんだツアー初優勝は、プロ日本一のタイトル。いまも語り草になっている優勝でもある。
プロフィル
合田洋(ごうだ・ひろし)1964~1964年10月10日生まれ、兵庫県出身。千葉日大一高から茨城・龍ヶ崎CCに研修生として入り、84年にプロテスト合格、85年にツアーデビューも、シード権を取れなかった。94年の日本プロ初優勝し、95年に佐々木久行とワールドカップに出場、団体3位に入る。現在、東京都中央区新川にインドア練習場「合田洋ゴルフアカデミー」を設立して、アマチュアらを指導している。
第62回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 合田 洋 | 279 | = 66 73 67 73 |
2 | 尾崎 将司 | 280 | = 69 71 72 68 |
3 T | 海老原 清治 須貝 昇 |
285 | = 67 72 72 74 = 71 71 74 69 |
5 | 青木 功 | 287 | = 70 70 74 73 |
6 T | 福沢 孝秋 川岸 良兼 トッド・ハミルトン |
288 | = 71 71 74 72 = 78 69 71 70 = 75 68 71 74 |
9 T | 木村 政信 友利 勝良 西川 哲 |
289 | = 69 69 75 76 = 68 72 73 76 = 72 71 71 75 |