第59回日本プロゴルフ選手権(1991年)
2015.04.28
1991年8月19日付スポーツニッポン
尾崎将が大逆転で通算70勝
最終日の大逆転劇を演じたのは、やはり「千両役者」だった。舞台は栃木・プレステージCC(7017ヤード、パー72)。初日飛び出したのは尾崎直道だった。6バーディー、1ボギー67で首位スタート。「満足のいくスコア。グリーンに神経を使うから、これ以上ない」と、納得のいくゴルフを展開したと、スポーツニッポン紙は報じている。尾崎3兄弟の中で、この大会のタイトルを取っていないのは直道だけで、初のプロ日本一に好発進した。尾崎3兄弟の長兄・将司はほぼ1年近く優勝がない。この年は左肩痛に悩まされていた。2週間ぶりの出場で、1番パー5(488ヤード)でイーグルを奪ったが、8番で左OBのダブルボギーをたたくなど、71で14位につけた。ほぼ1カ月ぶりのツアー出場となった青木功は13番(412ヤード)で第2打を直接入れるイーグルがあったが72で27位。2位には1打差で陳志忠と横島由一がつけた。
2日目にビッグスコアが飛び出す。プロ6年目でツアー未勝利の33歳、森茂則が1イーグル、7バーディーの63をたたき出した。スタートの1番で10メートルのロングパットを沈めてから波に乗った。折り返した10番パー5(592ヤード)ではグリーン手前50ヤードから直接放り込むイーグルを奪うなど、通算7アンダーに一気に浮上した。本人はいたって冷静に「パットは狙い通り、ショットもほぼ完ぺき」と振り返っている。初日74で67位と出遅れたが、66人抜きの首位に躍り出た。1打差2位に横島、2打差3位に湯原信光がつけ、初日首位の尾崎直は73と伸びず、3打差4位に後退。AONはまだ馬群の中。青木が10位に浮上したが、尾崎将は30位、初日76と出遅れた中嶋常幸は51位でかろうじて予選を通過した。
スコアが動く3日目、その通り混戦になる。首位の森はイーブンパー72と伸びなかったが、通算7アンダーで首位を守った。3日間安定したゴルフで1打差2位をキープし続けている横島は「グリーンが硬いので2打目が大切だと思ってやっている」と話している。この日上がってきたのは尾崎将と中嶋。尾崎将は4番でボギーが先行したが、インに入って4バーディーを奪い、4アンダー68、通算4アンダーで倉本昌弘とともに8位につけた。「少しずつグリーンが読めてきた」と手応えをつかんできた。中嶋は6バーディー、1ボギーの67で通算3アンダー10位グループに。大会前に全米プロに出場。「やっと時差ボケが取れてきた」といい「だいそれたことは考えていないけど、最終日を面白くしたい」と、話している。ともにこの大会3勝を挙げている。勝てば大会最多勝利(4勝)に並ぶ。同じく大会3勝の青木は76をたたいて37位に後退した。1日はいいスコアが出るが、抜け出せない展開。3日間を終えて、首位は7アンダーを超えていない。ロースコアの優勝を予想させた。
最終日のプレステージCC。朝一番からコース内に歓声がこだましていた。2番でバンカーから直接放り込んだ早朝スタートの青木が「俺を見に来いよ。いいもの見せてやるから」とたくさんのギャラリーを率いて快進撃。7アンダー65で一気に通算5アンダーへ。その時点では首位に迫っていたが、さらに多くのギャラリーをわかせていたのが尾崎将だった。1番パー5でバーディー発進し、アウト4バーディーで折り返す。10番から3連続、15番から2連続のバーディーラッシュで後続をあっさり引き離して独走。最終18番パー5では13メートルのイーグルパットを沈めて、インは29、11アンダー61の快スコアで通算15アンダーと終わってみれば大逆転、2位渡辺司に6打差のぶっちぎり優勝だった。日本プロ通算4勝は最多勝利(5人目)。1971年に日本プロで初勝利を挙げて20年、通算70勝目の区切りもこの大会になった。70年、80年、90年代と3つの年代にまたがる優勝は初めての快挙でもあった。
尾崎将は1964年選抜高校野球で徳島海南高の投手として優勝。その時に捕手で主将を務めた三浦敏幸さんが大会直前、胃がんで亡くなっていた。「せめて区切りの優勝を報告したかった」とスポーツニッポン紙は伝える。そして「プロ生活で最高のプレーだった」と振り返っている。前年8月のダイワKBCオーガスタに勝って以来、357日ぶり優勝。完全復活を遂げた尾崎将は、翌92年以降6度の賞金王に輝くなど「第2期黄金時代」を築く。
プロフィル
尾崎将司(おざき・まさし)1947~徳島県出身。徳島海南高校時代は野球部のエースとして選抜高校野球大会を制し、西鉄ライオンズに入団。実働3年で退団してプロゴルファーを目指し、23歳でプロテストに合格した。前人未到の通算113勝(海外1勝含む)を誇り、賞金王は計12回。ゴルフ人気を高めた立役者である。2010年に世界ゴルフ殿堂入り。
第59回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 尾崎 将司 | 273 | = 71 73 68 61 |
2 | 渡辺 司(東) | 279 | = 70 70 70 69 |
3 T | 中嶋 常幸 河村 雅之 中川 敏明 倉本 昌弘 湯原 信光 横島 由一 |
283 | = 76 70 67 69 = 69 75 69 69 = 71 72 70 69 = 69 71 72 70 = 71 68 72 71 = 68 70 72 72 |
9 T | 青木 功 杉原 輝雄 陳 志明 野口 裕樹夫 尾崎 直道 |
285 | = 72 70 76 65 = 72 71 73 67 = 73 72 71 67 = 70 75 68 70 = 67 73 70 73 |