第57回日本プロゴルフ選手権(1989年)
2017.10.02
1989年8月7日付日刊スポーツ
尾崎将、15年ぶり勝利に「自分をほめてやりたい」
尾崎将司が前年の雪辱を果たし、この年初めてそろい踏みとなったライバル「AN」を寄せ付けないゴルフで、15年ぶりにこのタイトルを手中に収めた。栃木・烏山城CC(6968ヤード、パー71)で行われた。第1日に首位に立ったのは、無名の嘉松(かまつ)望。この大会の出場資格は後期予選会の79位までだったが、嘉松は78位のギリギリで出場を果たした。3番から3連続バーディーなど、ボギーなしの6アンダー65で回って、83年のプロテスト合格から初めて記者会見の席に。「自分でもびっくりです。5番で15~16メートル、13番で12~13メートルのパットが入った」と、スポーツニッポン紙は喜びを伝えている。日刊スポーツ紙には「どうせ予選で落ちるから、明日はホテルをチェックアウトしてきます」と、真顔で話したという。尾崎将は3アンダーで3打差3位につけ、中嶋常幸は1アンダー15位としたが、、青木功は2オーバー65位と出遅れた。
第2日は「ジャンボの日」になった。2番パー3(187ヤード)で、試合では初めてのホールインワンを達成した。アゲンストの緩い打ち下ろし、5番アイアンでのティーショットは、カップ手前30センチほどに落ちて転がった入ったという。尾崎将は「ピン手前にはずんで沈んだのが分かった」と話している。練習ラウンドなどでは9回経験していたが、試合で初めての出来事に「これは気を付けないといけないと自分に言い聞かせた」と、日刊スポーツ紙は伝える。得てしてホールインワンをマークするとスコアを崩すことがあるのを警戒した。この日は3つスコアを伸ばして通算6アンダーとし、2位中村通に1打差で首位に立った。「偏差値75ぐらいの優等生のゴルフ。ドライバーからパットまで平均していい状態」と自信をのぞかせた。安田春雄と中尾豊健が2打差3位に浮上、第1日首位の嘉松は76とスコアを崩したものの、12位で予選を通過した。青木、中嶋は通算3オーバー54位のぎりぎりでともに決勝ラウンドに進んだ。
台風13号が最終日に関東に接近する可能性が出てきた第3日。強風がコースにも出てきていた。その中で尾崎将は5バーディー、5ボギーの71にまとめ、通算6アンダーの首位を守った。「3パット3回が余計だった」という。「スタート前、(最終組で一緒に回る)安さん(安田)が『3パット3回やってくれ』っていうから『よーし、まかせといてよ』って返事しといたんだよね」と笑わせたと、スポーツニッポン紙は伝える。2打差2位に中村通、3打差3位に藤木三郎とマッカイがつけたが、最終日に向け「一番怖いのが台風13号だけだ」と話している。
最終日はやはり台風13号接近の影響で、雨が降り続き、瞬間最大風速23.9メートルという悪コンディションの中で行われた。尾崎将は横なぐりの雨の中で3番から3連続ボギーと崩れかけたが、6、7番ですぐ取り返すなど、出入りの激しいゴルフながら崩れない。ほとんどの選手がスコアを乱す中で、猛追してきたのが売り出し中の29歳、加瀬秀樹だった。尾崎将の4組前で、悪天候をものともせずボギーなしの5バーディー。アウトを折り返した段階では4アンダーでいったんは首位に並び、通算5アンダーでホールアウトした。
6アンダーをキープして最終18番に来た尾崎将。グリーンエッジに乗ったボールは泥だらけ、パッティングのラインには水がたまり、ローラーを掛けた。難しい8メートルのパターでの寄せはカップ手前30センチに止まり、逃げきり優勝を果たした。
尾崎将にとっては念願のタイトルだった。プロ入り直後の71年、74年に勝って以来、縁がなかった。前年は終盤まで首位に立ちながら、弟の尾崎健夫に逆転を許すなど、手の届くところにいながら、だれかにさらわれていく。その繰り返しだった。
「これまで2度勝っているが、あの時とはまるで意味が違う。ただ勢いだけで強かった昔と、綿密に計算を立ててゴルフしている今では、プロとしての充実の度合いが全然違う」と日刊スポーツ紙が伝える言葉が、喜びを表している。そして、通算アンダーパーは2人。強い風雨を耐えきった一日に「あれだけの頑張りはプロ20年のうちのベスト3に入る。自分で自分をほめてやりたい」と続けた。苦しみながらも、今度は離さなかった15年ぶりの勝利だった。
プロフィル
尾崎将司(おざき・まさし)1947~徳島県出身。徳島海南高校時代は野球部のエースとして選抜高校野球大会を制し、西鉄ライオンズに入団。実働3年で退団してプロゴルファーを目指し、23歳でプロテストに合格した。前人未到の通算113勝(海外1勝含む)を誇り、賞金王は計12回。ゴルフ人気を高めた立役者である。2010年に世界ゴルフ殿堂入り。
第35回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 尾崎 将司 | 278 | = 68 68 71 71 |
2 | 加瀬 秀樹 | 279 | = 72 69 72 66 |
3 T | 尾崎 直道 友利 勝良 藤木 三郎 |
284 | = 70 71 74 69 = 72 71 71 70 = 68 73 69 74 |
6 T | 金子 柱憲 ロジャー・マッカイ 中尾 豊健 |
285 | = 68 74 71 72 = 71 68 71 75 = 69 69 74 73 |
9 T | 大町 昭義 飯合 肇 |
286 | = 70 71 71 74 = 72 72 72 70 |