1986年7月28日付日刊スポーツ

最後のＡＯ最終組対決は、青木が尾崎将を振り切り３度目Ｖ

　1970～80年代を彩った「ＡＯ対決」。最終日最終組での青木功、尾崎将司の対決はこの大会では最後になった。
　７月24～27日、岐阜・日本ラインＧＣ（6187メートル、パー72）で行われた。連日体感温度35度を超える蒸し暑い大会になった。第1日、そんな暑さを振り切って49歳の杉原輝雄が首位に立った。1番で６メートルを決めてバーディースタートから、この日は７バーディー、ボギーなしの65をマーク。1977年にこのコースで行われた日本プロで、優勝した中嶋常幸が２日目にマークしたコースレコードに並んだ（距離変更あり）。日刊スポーツ紙には「初日がええと、後が続かんもんだから。もう少し抑えんといかんかったかな」と、杉原らしい言い回しで表現した。通算51勝（当時）の中に、このタイトルはまだなかった。「ぜひ取りたいと、口に出して言わんとあかんのやろうか」と、煙に巻いた。杉原の後ろの組の青木が６アンダー66で２位の好発進。全英オープンから帰国してすぐに乗り込んだ中嶋は「距離が短いし、杉原さんの出番だね」といいながらも、４打差11位につけた。
　その杉原だったが、第２日に落とし穴にはまる。インスタートで３つスコアを落として７番パー３。信じられないことが起こる。ティーショットを池に入れ、池の手前から60メートルほどの第３打も池に。５打目も乗らず、アプローチを50センチに寄せたものの「７」をたたいた。８、９番もボギーの上がりでアウト45。目を真っ赤にした杉原は「7番は何をしたかわからんぐらい。何が悔しいって、若いもんには試合を投げるなと言うとるのに、大事な大会で僕がそんな気持ちになりかけたのが悔しい」としぼり出した。首位から一転、53位と最下位での予選通過になった。代わって首位に立ったのは青木。ボギーなしの68をマークし、通算10アンダーにスコアを伸ばした。「きょうの暑さに勝っただけでいい。体が干からびちゃって汗も出ない」と笑った。２打差２位に木村政信と草壁政治がつけた。
　第３日、尾崎将が浮上する。14番パー５で第２打を５番アイアンで１・５メートルにつけるイーグルを奪うなど、５アンダー67で回り、通算10アンダーの２位とした。首位の青木も14番で第２打をグリーンオーバーしたがアプローチで寄せてバーディーを奪うなど、３日連続60台の69で通算13アンダーとし首位をキープした。尾崎将はスイングづくり、青木はけがで低迷していた時期があったが、この年は尾崎将が５月のフジサンケイで１年７カ月ぶり、青木が６月の札幌とうきゅうで２年半ぶりに優勝、「復活ＡＯ」で最終日最終組対決が実現した。スポーツニッポン紙は「相手がいいからやりがいがある」（尾崎将）「ジャンボと二人、いい意味で引っ張ってきた。結果でしかないけどいいゲームをしたいね」（青木）と２人の意気込みを伝える。
　３打差でのＡＯ対決となった最終日。前半は１つずつスコアを伸ばす静かな展開だったが、後半は青木が10、14、16番バーディー、17番ボギー、尾崎将が14、17番バーディー。青木に軍配が上がった。３打差のまま迎えた最終18番。尾崎将がバンカーからの第３打をホームランし、いったんはＯＢを宣告されて打ち直したが、青木がウイニングパットを沈めて通算16アンダーで優勝を決めた後に競技委員からセーフの裁定で尾崎将が打ち直すハプニング。せっかくのＡＯ対決を最後に水を差した格好になったが、尾崎将は４打差２位を確保した。競技委員の不手際に怒りをみせた青木だったが、戦いを終えて両者は肩を抱き合った。中嶋が66をマークして５位と意地をみせた。青木は「今、中嶋君が強すぎて同年代の選手があきらめちゃっている面がある。だからオレとジャンボが死んじゃだめ。また２人でゴルフ界をおもしろくしてやる」といい、尾崎将も「まだまだ青木さんの時代は続くね。オレはその後だな。またいい調子の時にぶつかり合いたい」と、コメント。青木はこの大会は３度目の優勝で、最後の優勝にもなった。

プロフィル

青木功（あおき・いさお）1942～
千葉県出身。中学卒業後、東京都民ゴルフ場に就職してゴルフの道へ。1964年にプロとなり、71年の関東プロで初優勝。国内では通算56勝を挙げ、賞金王には5度輝いている。海外でも米欧豪の各ツアーで勝利を挙げるなど世界中で活躍し、シニア入りしたあとも米シニアのチャンピオンズツアーで9勝と存在感を示した。2004年に世界殿堂入りし、08年には紫綬褒章を受章。13年に日本プロゴルフ殿堂入り。15年旭日小綬章受章、16年日本ゴルフツアー機構会長に就任。

第54回日本プロゴルフ選手権