第52回日本プロゴルフ選手権(1984年)
2017.01.05
1984年8月6日付報知新聞
中嶋が〝ミニスランプ〟乗り越え連覇達成
「AON時代」の一角を占めた中嶋常幸(当時登録名中島常幸)はこの年、スイングに悩んでここまで未勝利。前年賞金王が苦しんで迎えた大会だった。コースは静岡・ミナミ菊川CC(6247メートル、パー71)。初日、ツアー初の記録が生まれた。石井裕士が4番パー3(177メートル)で4番アイアンを使ってホールインワンを達成。続く5番パー5(472メートル)では見グリーン右奥12メートルに2オンし、イーグルパットが決まった。連続イーグルはツアー史上初の快挙。インでは13番で林の中に入れてトリプルボギーをたたくなど崩れて、この日はイーブンパー71の24位発進に、日刊スポーツ紙には「いったいどうなってるのかと思ったね」と振り返り「ホールインワンするとろくなことがない。今日は長い旅だった」と話している。4アンダーで首位に立ったのは、尾崎直道と吉武恵治。尾崎直道は静岡で行われた開幕戦「静岡オープン」を制しており「縁起よさそう」とコメントしている。
2日目、日本プロ過去2勝と公式戦に強さを見せる金井清一が、通算7アンダーで首位に浮上した。「自分でもびっくりするぐらいパットが入った」と報知新聞紙が伝えるように、5バーディー、1ボギーの67をマークした。2アンダー69と踏ん張って1打差2位に粘ったのが初日首位の尾崎直。「まだ気合を入れるのは早い。プレッシャーをかけると強くないんで」と控えめなコメント。連覇を狙う中嶋、中村通、前田新作が2打差3位につけた。全英オープンから帰国した直後の青木功は最終ホールで7メートルのパーパットを沈めて、通算3オーバー50位で2年ぶりの国内予選落ちを免れた。
3日目は中嶋が出てくる。2番で木の下に打ち込んでダブルボギー、5番パー5で2メートルに2オンしてイーグルを決めるなど、1イーグル、5バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの出入りの激しいゴルフながら4アンダー67をマークして、通算9アンダーとした。開口一番「明日は優勝します」と宣言したことを日刊スポーツ紙は伝える。82、83年賞金王も、この年はまだ未勝利。春の米ツアー挑戦でトップ選手のスイングを見て「もっと自分もよくしなければ」といじったことでちょっとしたスランプに陥っていた。全英オープンでセベ・バレステロが最終ホールのバーディーで優勝を決めたシーンを生で見て、気持ちを奮い立たせたのだという。「競り合いの中で勝たなくちゃ。戦いはホットなものでなければいけない」と、コメントしている。1打差2位に金井、2打差3位に中村、前田が追走していた。
最終日、中嶋は2番でボギーが先行する苦しいスタートだったが、言葉通りに競り合いを制した。最終18番では1打差の金井、中村がグリーンを外してボギー。通算9アンダーで大会連覇を達成した。「やっと勝てた。今年は1つも勝てないと思っていた。ずっと悪かったし、それを乗り越えたから価値がある」と、報知新聞紙は喜びを伝える。海外のトッププロと戦うことでスイング改造を考えさせられて、うまく進んではいなかったが「(海外のトップは)悪い時も気合を入れて勝ってしまう。いい経験になった」と収穫も得られ、自身が国内で結果に結びつけた。20代最後の日本プロを制して、その後さらに階段を上ることになる。
プロフィル
中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954~
群馬県出身。父・巌氏の英才教育で腕を上げ、1973年に日本アマを当時最年少の18歳で制覇。75年のプロ入り後も順調に勝ち星を重ね、85年には初の年間1億円プレーヤーとなった。通算48勝を挙げ、賞金王は4回。シニアでも日本シニアオープン3勝など活躍し、アマ、レギュラーツアーと合わせて日本タイトル7冠を達成している。
第52回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 中嶋 常幸 | 275 | = 68 69 67 71 |
2 T | 金井 清一 前田 新作 中村 通 |
277 | = 68 67 70 72 = 69 68 69 71 = 69 68 69 71 |
5 | 謝 敏男 | 278 | = 69 71 69 69 |
6 | 尾崎 将司 | 279 | = 77 63 69 70 |
7 T | 杉原 輝雄 小林 富士夫 |
280 | = 70 74 65 71 = 72 71 68 69 |
9 T | 尾崎 直道 入野 太 海老原 清治 倉本 昌弘 |
281 | = 67 69 71 74 = 70 72 68 71 = 73 69 69 70 = 73 70 74 64 |