第51回日本プロゴルフ選手権(1983年)
2016.11.07
1983年8月1日付日刊スポーツ
中嶋がAO振り切り、6年ぶりV
「AON時代」と呼ばれた1980年代。その中で、82年に初めての賞金王となり「AO時代」に割って入った中嶋常幸(当時登録名中島常幸)に一番勢いがあった。この年、中嶋はさらに輝きを増し、その地位を固めていく。梅雨明けしたばかりの新潟・紫雲GC(6407メートル、パー72)で行われた第1日。中嶋はスタートから飛び出す。アウトを6バーディーの30で回り、インに入っても12、13番連続バーディーで一気に8アンダーへ。「明日の新聞の見出しは『ついに梅雨明け宣言』だな、なんて考えていたら上がり2ホールをボギーにしてしまった」と、日刊スポーツ紙は中嶋のご機嫌ぶりを伝える。7月の全英オープンを左肩痛と下痢のため欠場し、帰国後2週間治療と休養に努めた。「病み上がりで66は上出来のさらに上」とコメントもさえる。同じく66をマークしたのが尾崎健夫。ボギーなしの6バーディーで回った。1打差3位につけたのが尾崎将司。兄弟で好ダッシュには要因があり、7月上旬から約3週間、尾崎将宅をベースにミニキャンプを張り「1日500発は打ち込んだ」(尾崎健)と、2人とも調整十分で乗り込んでいた。青木功は1アンダー35位のスタートだった。
第2日、真夏の太陽で気温が上昇する中で、2連覇を目指す倉本昌弘が浮上する。3アンダー69で回り、中村通、船渡川育宏とともに通算6アンダーに。「夏が好き。いくら暑くてもいい。他の人が疲れてくれば」と話している。中嶋がイーブンパー72と伸び悩んでいる間に、スルッと首位に並んだ。尾崎健は75、尾崎将は73と後退したが、青木が3アンダー69をマークして通算4アンダーとし、尾崎将、杉原輝雄らと同じ6位グループに入ってきた。
第3日、中嶋が満を持して抜け出す。4バーディー、1ボギーの69をマークして通算9アンダーにスコアを伸ばして単独首位に立つ。アウトの2つのパー5ではともに2オンするなど、チャンスを逃さなかった。「ゲームのプランニングに迷いがなかった。計算通りに出た69」とコメントしている。6年ぶりの優勝に王手をかけたことを聞かれ「あの時は新星中嶋の輝かしいデビューの年。今は自他ともに認められて、こんなにうれしいことはありません」と日刊スポーツ紙に答えている。「AO時代」に割って入った自覚、責任を感じていた。2打差2位には船渡川がつけた。「(第2日首位並走の)倉本、中村が早く崩れたので、自分も、という不安はあった。常ちゃん相手じゃまくり切れないと思うけどやってみたいよ」と意気込みをみせている。4打差4位に青木と、この日68で回った羽川豊がつけ、尾崎将は尾崎健らとともに6打差7位、77をたたいた倉本は8打差18位に後退した。
最終日、中嶋は雨の中で粘りをみせた。「前半で2つ伸ばさないと」と話していたプランがうまくいかず、前半をバーディーなしの1オーバーとスコアを1つ落として折り返す。先に折り返していた青木は1、2番連続バーディーなどで追い上げて、この時点で1打差に迫られていた。11番でもボギーにしたとき、青木は13番でバーディーを奪って、第1日から守ってきた首位を一度は逆転された。青木が14番で3パットして落とし、首位に並んで迎えた13番では1メートル強につけたが入らず「これでダメかなと思った。苦しかった。でも開き直ったら」と振り返るのが次の14番。10メートルほどのバーディーパットをねじ込んで再び首位を取り返し、16番で1・5メートルを入れてこの日72、通算9アンダーで逃げ切った。2打差2位で終えた青木は「14番で終わった。あそこで中嶋を楽にさせちゃった」と振り返っている。同じく2位に羽川が食い込んだ。
「こうして僕が勝てたことは、青木さんたちへの恩返しだと思う」と、スポーツニッポン紙は中嶋の心中を伝えている。日刊スポーツ紙には「強い人(青木、羽川、杉原、謝敏男)と競り合って勝てたのが感激」と話している。6年ぶりの大会2勝目とともに、前年12月の日本シリーズ、5月の日本プロマッチプレーに続いて、日本タイトルに3連勝した。「AON」時代を確固たるものにした優勝だった。
プロフィル
中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954~
群馬県出身。父・巌氏の英才教育で腕を上げ、1973年に日本アマを当時最年少の18歳で制覇。75年のプロ入り後も順調に勝ち星を重ね、85年には初の年間1億円プレーヤーとなった。通算48勝を挙げ、賞金王は4回。シニアでも日本シニアオープン3勝など活躍し、アマ、レギュラーツアーと合わせて日本タイトル7冠を達成している。
第51回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 中嶋 常幸 | 279 | = 66 72 69 72 |
2 T | 青木 功 羽川 豊 |
281 | = 71 69 71 70 = 73 70 68 70 |
4 T | 杉原 輝雄 謝 敏男 |
282 | = 69 71 72 70 = 71 70 69 72 |
6 | 船渡川 育宏 | 284 | = 70 68 71 75 |
7 T | 水野 和徳 倉本 昌弘 |
285 | = 68 74 72 71 = 69 69 77 70 |
9 T | 磯崎 功 増田 光彦 山本 善隆 |
286 | = 69 75 72 70 = 70 72 75 69 = 74 73 72 67 |