第50回日本プロゴルフ選手権(1982年)
2015.03.02
プロデビュー1年強でプロ日本一に輝いた倉本昌弘(日本プロゴルフ協会50年史より)
プロデビュー1年強でプロ日本一に輝いた倉本昌弘
初出場の倉本昌弘が戦後最速のプロデビューから13カ月弱で日本一を手にした。大会は滋賀・名神八日市CC(6338メートル、パー72)で行われた。倉本は、青木功、中村通とともに全英オープンに出場して、帰国した直後。ロイヤル・トルーンでの全英では、日本人史上最高の4位になり、調子も気持ちも上向いたままで乗り込んできた。
初日、トップに立ったのは小林富士夫だった。左手の腱鞘炎と血行障害に悩んでいたが「常にフルスイングするようにした」と、8バーディー、2ボギーの66をマーク。4番(385メートル)では16メートルのバーディーパットを決めるなど、パットがさえた。倉本は好位置につける。帰国後の練習ラウンドはイン5ホールしか回れず、日大の後輩、湯原信光からメモを譲り受けてスタート。初めて回るアウトをパープレーで折り返した後、インに入って11番でバーディーが先行し、14番から猛攻。5ホールで4バーディーを奪い、5アンダー67で、小林に1打差の2位で初日を終えた。「トルーンから見れば、日本のゴルフ場はフェアウエーをきれいに刈ってあるし、ラフもいやらしいところはない」と、全英での経験が生きたことをスポーツニッポン紙は伝えている。
2日目から倉本の快進撃が始まる。インスタートで11番から3連続バーディーなど4つスコアを伸ばした。アウトはまだうまく回れず、5番までに3ボギーとしたが、6番から3つ取り戻した。9番パー5(443メートル)で2オンするなど、3つのパー5で2日間すべてバーディーを奪い、通算8アンダーで首位に立った。「アウトがどうもイメージがつかめません。2けたアンダーにした人が優勝でしょう」と、コメントしている。倉本とともに首位に浮上したのが新関善美。4バーディー、1ボギーの69で回り、首位に並んだ。「あちらは世界の倉本、こっちは山形の新関」と、山形生まれで当時無名だったが、プロ入りして初めて2日連続60台をマークした。
「雨は大歓迎」と話していた倉本は3日目、天気予報通りの雨の中でさらにスコアを伸ばす。苦手のアウトを3バーディー、1ボギーと初めてアンダーにして折り返す。12番で取り、17番ではグリーン左奥から8メートルをチップイン。最終18番でボギーにしたものの、通算11アンダーとし、本人が言っていた「優勝スコア」の2けたアンダーに入った。「希望通り雨が降ってくれて、希望通りのゴルフができました」と振り返り「ここまできたらこの試合は僕のゲームみたいな気がする」と、自信のコメントを残した。2打差2位には日本プロで2度2位になっているベテラン安田春雄が浮上した。「もう2位はけっこう。勝ちてえや」と話した。4打差で台湾の謝敏男と、専大出身でプロ実質2年目の羽川豊が3位につけた。
最終日も雨。倉本はスタートの1番でボギーとするが、3バーディーを奪ってアウトで2つスコアを伸ばす。1つスコアを伸ばした謝に追いかけられる形になったが、5打差をつけてインへ。13番で第2打を左OBのダブルボギーで一時3打差になり、14番では謝が20センチにつけて先にバーディーを沈められた後、4メートルのバーディーを決めて差を保つ。続く15番でも謝に先に1メートルにつけられたが、倉本も3メートルにつけてともにバーディー。見ごたえあるせめぎ合いに、謝は「あそこで突き放してくる倉本は強いゴルファー。私は最高のゴルフをした」と振り返っている。倉本は16番でも10メートルをチップイン。謝とともに69をマークして通算14アンダーで初出場初優勝を果たした。4日間60台、計25バーディーと、圧倒的な攻撃力をみせた。
プロデビュー戦和歌山オープン(賞金ランク対象外)で優勝した1981年7月10日から、わずか1年あまり。「調子が良かったから4日間はあっという間。初日67を出した時から、勝つのは僕以外にないという気持ちになった。権威あるタイトルを取り、一人前のプロとして第一歩を踏み出したに過ぎません」と、スポーツニッポン紙は優勝コメントを伝えている。身長164センチと小柄ながら、ボディービルなどで体を鍛え、胸囲98センチ、腕周り40センチなど、当時のニックネーム「ポパイ」のような体型。個性的な選手がまた一人誕生した。
プロフィル
倉本昌弘(くらもと・まさひろ)1955年9月9日生まれ、広島県出身。アマ時代は日大で日本学生4連覇を達成、日本アマ3勝、80年には中四国オープンを制した。81年プロテストに合格し、ツアー4勝を挙げていきなり賞金ランク2位。82年に日本プロでは初出場初優勝など、AON時代に割って入る活躍をみせ、レギュラーツアー30勝の永久シード選手。2014年に日本プロゴルフ協会会長に就任し、シニアツアーでは2勝を挙げて史上初の協会会長として賞金王に輝いた。
第50回日本プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 倉本 昌弘 | 274 | = 67 69 69 69 |
2 | 謝 敏男 | 278 | = 67 72 70 69 |
3 T | 小林 富士夫 藤木 三郎 中嶋 常幸 中村 通 |
281 | = 66 72 74 69 = 68 72 71 70 = 70 70 70 71 = 70 70 72 69 |
7 | 青木 功 | 282 | = 72 70 71 69 |
8 T | 安田 春雄 杉原 輝雄 |
283 | = 71 69 67 76 = 73 68 69 73 |
10 T | 羽川 豊 新井 規矩雄 時田 陽充 川波 通幸 青木 基正 |
284 | = 68 70 71 75 = 69 70 73 72 = 69 68 73 74 = 70 73 72 69 = 71 70 73 70 |