日食と青木のショット（日刊スポーツ新聞、１９８１年８月１日付）

青木が王者のゴルフで２度目のタイトル

　青木功が39歳の年に、39勝目を２度目の日本一のタイトルで飾った。
　北海道・札幌後楽園ＣＣ（6372メートル、パー72）で行われた大会だが、連日32度を超える猛暑に見舞われた。初日、首位に立ったのは川田時志春と内田繁。川田はこの年の５月のフジサンケイクラシックで青木との激闘を制して初優勝を飾っている。日刊スポーツ紙によると、練習ラウンドから「ラフに入れるとピンが見えなくなる」と、フェアウエーに落とすことを心掛けたという。この日も狭いフェアウエーに運び、５バーディー、２ボギーの３アンダー69で回った。内田は4バーディー、1ボギー。青木は３パット２回で２バーディー、２ボギーのイーブンパーで12位スタートした。アンダーパーが11人（出場143人）と、難コースに暑さが加わってスコアが伸び悩んだ。
　２日目、好天の中で「日食」がコースでも観察される珍しい日になった。日刊スポーツ紙には三日月形になった太陽の下でティーショットを放つ青木の写真（合成）が掲載されている。試合展開は、初日と打って変わって好スコアが続出した。首位に立ったのは、藤木三郎。スタート10番でいきなりイーグルを奪うなど1イーグル、７バーディー、２ボギーの65をマークして通算９アンダーに伸ばした。日食を見るために溶接マスクを持ち込んで「僕のゴルフも異変かな」とコメントしている。初日73と出遅れた中嶋常幸が８バーディー、ボギーなしの64で回って通算7アンダーで２打差２位に。「ピンチなしのパーフェクト。試合で64なんて初めてじゃないか」と本人もびっくりだった。天野勝も65で回って中嶋とともに２位。初日首位の川田は69で回ったが、３打差４位に後退した青木は67をマークし、通算５アンダーの７位と順位を上げた。
　ピンの位置を難しくした３日目は、首位だった藤木は78をたたいて通算３アンダーに後退するなど、各選手がスコアメークに苦しんだ。その中で天野が抜け出した。10番までに３バーディーで通算10アンダーとし、そのスコアを維持して上位の崩れもあってトップに立った。日刊スポーツ紙によると「オフに関節リュウマチでほとんど練習が出来ず、自分のゴルフが悪すぎて今年はあきらめていた」という。通算７アンダーの３打差２位に浮上してきたのが青木。「もう１つ縮めておきたかった」という青木に対し、天野は「青木さん相手で３打差じゃ少なすぎる。６打差ぐらいないと勝てません」とコメントしている。中嶋は1つスコアを落とす通算６アンダーながら、優勝圏内にとどまった。
　最終日、「70で回って負けたらしょうがない」と話していた天野が崩れる。前半を終わって２ボギーをたたき、1バーディーの青木が首位に並びかけた。そこから青木が強さを見せる。アサヒゴルフ誌によると、並んでいた12番で左ラフからの第1打を２メートルにつけるバーディーで抜け出す。続く13番パー５では第２打でグリーン左に運び、ラフからのアプローチを1メートル弱につける連続バーディー。14番で天野がダブルボギーとし、勝負がついた。76をたたいた天野は４位に終わった。
　８年ぶり２度目のタイトルで、39歳を目前にして通算39勝目を挙げた青木は「40歳で40勝が夢だったから、いいペースだと思う。俺だっていつかは下降線をたどるときが来るだろう。でも、そうなっても年間1勝は挙げていけるようなプレーヤーになりたい」とアサヒゴルフ誌にコメントしている。また、この優勝の翌週に全米プロに出場することについて、日刊スポーツ紙は「いい土産を持って米国に行ける。だからいい土産を持って帰りたい」という意気込みを伝えている。
　その全米プロは、アトランタ・アスレチック・クラブ（6462メートル、パー70）で行われた。初日75の87位と出遅れたが、２日目69、３日目66とペースアップ。最終日18番で12メートルのバーディーを決めて、通算１アンダーでこの大会自身最高位の４位に食い込む。1980年全米オープンで２位となり、83年にハワイアン・オープンを制した。日本と海外を往復しながら実績を挙げた80年代前半が、青木の長いゴルフ人生、数々の栄光の中でも、最も充実した時期だったのかもしれない。

第49回日本プロゴルフ選手権