第44回日本プロゴルフ選手権(1976年)
2015.04.06
1976年9月27日付スポーツニッポン
大会史上最多4人のプレーオフを制した金井清一
82回に及ぶ歴史の中で、勝負の行方がプレーオフに持ち越されたのは10回ある。最初は第1回大会。36ホールストロークプレーのプレーオフで宮本留吉が福井覚治を下して初代王者に輝いた。続く第2回大会もプレーオフ。今度は18ホールの決戦で、中上数一が1打差で前年覇者の宮本を破っている。その後、マッチプレーの時代や第二次世界大戦による中断等をはさんで3度目のプレーオフが行われたのは1975(昭50)年。3ホールの合計ストロークで争われる方式だった。
現在のようにサドンデスとなったのは翌76年から。ここで、大会史上に残る激闘が繰り広げられた。
この年の会場は熊本県の球磨CC(6280m、パー70)だった。初日、濃霧でスタートが45分ほど遅れたが、霧が晴れると秋晴れの空が広がった。首位は6アンダー、64をマークした金井清一と宮本康弘。2打差の3位に尾崎将司らがつけた。
2日目、68で回った宮本が通算8アンダーで単独首位に立ち、金井が2打差の2位。通算5アンダーの3位には前年日本タイトル4冠を達成した村上隆らがつけ、尾崎は74と崩れて大きく後退した。
3日目、首位の宮本が崩れ、試合はエピローグを予感させるような混戦となった。首位は金井清一、榎本七郎、能田征二の3人。1打差4位に謝敏男と原克巳がつけ、さらに1打差の6位グループには村上や安田春雄ら5人がひしめいた。トップから2打差以内に11人。誰が勝つのか予想がつかない展開となった。
最終日も混戦は続いた。まず、安田が通算7アンダーでホールアウト。後続を待った。後れを取っていた謝は17番パー5でイーグルを奪って一気に7アンダーに。安田をとらえて72ホールを終えた。榎本は一時10アンダーにまで到達し、優勝に最も近い存在になっていたが後半崩れて同じく通算7アンダーとした。
そして金井だ。16番でダブルボギーを叩いて通算5アンダーへと後退。絶望的な状況へと追い込まれた。しかし、金井は17、18番で連続バーディーを奪って勝利への執念をみせる。勝負は大会史上最多4人のプレーオフへと持ち越された。
1ホール目は16番パー3だった。ここで安田と謝がボギーを叩いて脱落。パーをセーブした金井と榎本が2ホール目へと向かった。
2ホール目の17番、3ホール目の18番はともにパー。互いに譲らないまま、再び16番へと戻ってきた。
この時の様子をスポーツニッポン新聞は『金井の顔はひきつり、榎本のくちびるは乾き切って見えていた。プレーオフ4ホール目の16番。4アイアンで打った榎本はグリーンをはずし右のバンカーへ。それを見た金井は「よし、ここは乗せるだけでいい」と3アイアンで右端にオンした』と記している。
榎本のバンカーショットはピンを2.5mオーバーした。金井は、バーディーパットを寄せて先にパーでホールアウト。榎本のパーパットが外れ、激闘に終止符が打たれた。
「疲れた。こんなに疲れたことはない。でも本当にうれしい。榎本さんが最後のパットをはずすまで優勝できるなんて思わなかった」(スポーツニッポン新聞より)という金井の言葉が、いかに厳しい戦いだったかを物語っている。
金井にとっては4年前の日本プロで初優勝を飾って以来の勝利。サラリーマンからプロゴルファーに転身した異色の経歴を持つ男が2度目のプロ日本一に輝いた。
プロフィル
金井清一(かない・せいいち)1940~新潟県出身。会社員時代に始めたゴルフにのめり込んでプロを目指し、1965年にプロテストに合格した。日本プロ2勝(72、76年)、関東オープン2勝(78、85年)、関東プロ1勝(81年)と公式戦に強く、“公式戦男”の異名をとった。シニアでも日本シニアオープン3勝(91、92、93年)、日本プロシニア2勝(90、98年)と大活躍。シニア賞金王には5度輝いている。
第44回日本プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 金井 清一 | 273 | = 64 70 69 70 |
2 T | 榎本 七郎 安田 春雄 謝 敏男 |
273 | = 68 69 66 70 = 70 67 68 68 = 71 66 67 69 |
5 | 草壁 政治 | 274 | = 67 70 68 69 |
6 T | 中嶋 常幸 能田 征二 |
275 | = 71 65 70 69 = 66 69 68 72 |
8 T | 宮本 康弘 島田 幸作 |
276 | = 64 68 73 71 = 67 72 66 71 |
10 T | 金本 章鉠 村上 隆 |
277 | = 68 72 68 69 = 68 67 70 72 |
(サドンデス・プレーオフによる)