第43回日本プロゴルフ選手権(1975年)
2017.06.05
1975年10月20日付日刊スポーツ
プレーオフ制した村上、年間日本タイトル3冠目
村上隆が日本プロ初優勝を飾るとともに、日本タイトル3冠目を獲得、日本シリーズも制して、その後も誰もなしえていない「日本タイトル年間4冠」の偉業を達成した、ゴルフ史に残る年になった。村上の3冠目の舞台は、岡山・倉敷カントリークラブ(6854ヤード、パー72)で10月16日から4日間行われた。第1日、首位には5アンダーで2人が並んだ。山本善隆は「ドライバーがメチャクチャだった」と、報知新聞は伝える。9ホールでラフに入れたが、6バーディー、1ボギー。当時はボールについてのツアー規定がなく「ラージボールもスモールボールも使った」という。もう1人の首位は川上実。風邪で前日は寝込んでおり「足が動かなくて左に引っかけた」というが、インスタートの13番で70ヤード、18番でグリーン横から20ヤードを直接入れるチップインバーディー2つが効いて、こちらも6バーディー、1ボギーだった。
1打差2位につけたのが安田春雄。体調を崩したのをきかっけにゴルフが「バラバラになった」が、師匠の中村寅吉から「スイングが小さくて手打ちになっている」と指摘されて立ち直りをみせた。この年、ここまで日本プロマッチプレー、日本オープンを制してきた村上が2打差4位、青木功が17番(182ヤード)でホールインワンを達成して1アンダーで17位のスタートだった。
第2日に、村上が首位に浮上する。「パターの感じがいい」という通り、2、3メートルのパットが決まり、6バーディー、2ボギーの68をマークして通算7アンダーとした。「優勝は二けたアンダーになりそうだから、なるべく近づけたい。追う立場はどうしても無理が出ます」と話している。村上を追って、前年覇者の尾崎将司が2打差3位に上がって来た。「ドライバーが最高にいい。ゴルフをするのが楽しい」と、1番から3連続バーディーなどで6バーディー、1ボギーの67をマークした。トップに村上が立ったことを知り日刊スポーツ紙に「おれが必死に上がってきたのに、上にしっかりした人がいるじゃない」とコメントしている。
1打差の2位には前日首位の山本がつけた。青木は3、4番で連続OBをするなどこの日81をたたき、予選落ちした。大会前に入院して治療するほど風邪からの体調不良が続いていた。
第3日は朝から雨が降り続いた。村上はボギーが先行したが、こらえて2つスコアを伸ばして、通算9アンダーで首位を守った。「日本オープンを取ったので欲を出して」と、コメント。1打差2位には24歳の山本が粘っていた。雨の中をボギーなしの70で回り「1打差2位は一番いい位置。村上さんのパットが気にならないほどこっちだって入る」と、パッティングに自信を見せた。2打差3位には安田が再浮上。インで5バーディー、ボギーなしの31をマークするなどショットに切れが戻って来た。「村上が日本オープンを取ったんだから、今度はオレ。プレーオフにさえ持ち込めばいける」と逆転に意欲を見せた。2連覇を狙う尾崎も3打差4位と十分圏内に踏みとどまり「OB(6番)は計算外だったが、試合が面白くなった」とコメントしている。
最終日は上位陣がいずれもスコアを伸ばせない戦いになった。村上は前日まで好調だったパッティングが決まらなくなり、ショットもグリーンに乗せるのが精いっぱいの状態でバーディーなしの75をたたき、通算6アンダーとなった。だが、追う安田も前半で2つ落とし、1,2番連続バーディーで出た尾崎もダブルボギー2つで失速するなど、2人とも74に終わった。山本は1打差で迎えた最終18番で4メートルを入れてバーディーを奪い、74で村上に追いついた。
プレーオフは16番から3ホールの合計ストロークで争われた。最初の16番パー5で村上は4メートルを沈めて、この日初バーディー。山本はパーに終わり、これが勝負を決めた。あとは2人ともすべてパーで村上が苦しみながらも日本タイトル3冠目を手中に収めた。
「足はがくがくするし、パットもしびれっぱなし。何が何だかわからなかったんですよ。勝てたのは運がよかっただけです」(日刊スポーツ紙)「何が何だかわからない。誰もガンガン仕掛けてこない。それにつられてズルズルいってしまった」(報知新聞)と苦戦を振り返っている。ただ「山本選手には絶対に負けてはいけない。これからガンガン来るだろう。今日のところはどうしても勝たなければならない」と、若手の「壁」になる意識が強かったようだ。
これで日本タイトル3冠となったが、日本プロマッチプレーはこの年から始まったこともあって、当時は「グランドスラム」とされた試合は、日本プロ、オープンと関東(関西)プロ、オープンというのが常識だった。村上も日本オープン、プロに勝ったことで「これから関東オープン、関東プロを狙ってみます」とグランドスラマー入りを目標にしている。
しみじみ言ったという「今年は生涯最高の年になりそうです」という言葉は、1975年の村上隆を言い表していた。
プロフィル
村上隆(むらかみ・たかし)1944年5月25日生まれ
静岡県出身。ゴルフの盛んな川奈で生まれ、11歳からゴルフを始める。伊東中卒業後、川奈ホテルゴルフ場に入り、キャディーをしながら杉本英世に師事。64年プロ入り。67年グランドモナークで初優勝。75年には日本プロマッチプレー、日本プロ、日本オープン、日本シリーズと日本タイトル4冠を制覇した。国内通算21勝(ツアー11勝)、海外1勝。2016年日本プロゴルフ殿堂入り。
第43回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 村上 隆 | 282 | = 69 68 70 75 |
2 | 山本 善隆 ※3ホールのプレーオフによる 村上(4・3・4) 山本(5・3・4) |
282 | = 67 71 70 74 |
3 | 安田 春雄 | 283 | = 68 73 68 74 |
4 T | 尾崎 将司 鷹巣 南雄 |
284 | = 72 67 71 74 = 69 71 72 72 |
6 T | 川上 実 前田 新作 岩下 吉久 |
286 | = 67 76 71 72 = 69 73 71 73 = 71 70 69 76 |
9 T | 吉川 一雄 草壁 政治 島田 幸作 鈴木 規夫 |
288 | = 70 75 74 69 = 74 70 72 72 = 69 72 74 73 = 72 71 70 75 |