1974年8月19日付スポーツニッポン

尾崎が青木の年間グランドスラムを阻止する完全優勝

　「ＡＯ対決」が鮮明になった大会になった。前年覇者の青木功はこの年、関東オープン、関東プロを制し、これに勝てば1年で公式戦４つを取る「年間グランドスラム」（当時）に王手をかける戦いだった。これを阻止したのが、尾崎将司だった。
　賞金総額1350万円、優勝賞金200万円、宮城・表蔵王国際ＧＣ（6832ヤード、パー72）で行われた第１日。トップに立ったのが尾崎だった。４つのパー５ですべてバーディーなど、９バーディー、４ボギー。出入りの激しいゴルフながら、５アンダー67で飛び出した。３年前の日本プロ初優勝時につかったかまぼこ型のパターを引っ張り出してきた。「今度は僕が青木さんをいじめる番だ。攻めて攻めぬくだけ」と、この年好調の青木を意識した発言をスポーツニッポン紙は伝えている。同じく首位に立ったのは高橋信雄。こちらは当時としては珍しかった「学士プロ」。日大をでて、72年のプロテストに合格。青木から「練習ではいいゴルフをするんだから消極さを捨てろ」と言われたといい、プロ入り初の第１日首位に躍り出た。その青木は杉原輝雄、村上隆とともに１打差の３位につけた。年間グランドスラムには「そんな大それたことは考えていない」とコメントしている。
　第２日も尾崎は好調。インスタートで折り返した５番までに６バーディーと一時は通算11アンダーにスコアを伸ばした。しかし、７番パー５（548ヤード）で３パット、８番でも３パットと通算９アンダーでフィニィシュ。単独首位に立ったものの、上がりの悪さに「きょうは口も聞きたくない。早く帰って寝たい」とミスを悔やんだ。１打差２位に浮上したのが安田春雄。16番パー５（513ヤード）で10メートルのイーグルパットを沈めるなど、66をマークした。村上もボギーなしの68で回って安田、小林富士夫とともに２位。青木は16番でイーグルを取ったものの、伸ばしきれずに通算７アンダーの２打差５位ながら、逆転圏内にとどまった。
　尾崎は優勝の足固めをした第３日だった。スタートの１番で４メートルを沈めるバーディー発進。７バーディー、１ボギーの66をマークして後続を突き放した。「３日間で23バーディー。こんなにバーディーを出した記憶がない」と、本人も認める好調さで通算15アンダーに伸ばした。２位の村上、安田は尾崎を追いかけたが、ともに70と伸ばせず、５打差がついた。青木も70で尾崎とは６打差の４位。「明日尾崎が75をたたけば別だが、これで負けだね」と、日刊スポーツ紙によると諦めムードが漂っていた。
　最終日は尾崎の独り舞台。２番でボギーにしたが、アウト４バーディーの33で折り返し、12番のバーディーで一時は18アンダーまでスコアを伸ばして、後続の戦意を失わせた。15番で隣ホールに打ち込み、16番ではＯＢと連続ダブルボギーとしてこの日は73をたたいたものの、通算14アンダーで完全優勝を果たした。青木は１アンダー71とただ１人、４日間アンダーパーで回る意地を見せたが、４打差２位に終わった。年間グランドスラムの夢を尾崎に絶たれたが「尾崎は28バーディー。今回はあいつが一枚上だった」と、たたえた。
　「久々の公式戦勝利。青木選手に雪辱できたし。パットに自信が戻り、パットがいいとショット全てが呼応してよくなる。連続ダブルボギーでも勝てたんだから、これまでで一番楽な優勝だった」と、３年ぶりのこの大会勝利について話している。尾崎は日本オープンにも勝ち、この年の４つの公式戦は青木と尾崎で２勝ずつを分け合う形になり「ＡＯ時代」が本格的に始まった。

プロフィル

尾崎将司（おざき・まさし）1947～
徳島県出身。徳島海南高校時代は野球部のエースとして選抜高校野球大会を制し、西鉄ライオンズに入団。実働3年で退団してプロゴルファーを目指し、23歳でプロテストに合格した。前人未到の通算113勝（海外1勝含む）を誇り、賞金王は計12回。ゴルフ人気を高めた立役者である。2010年に世界ゴルフ殿堂入り。

第42回日本プロゴルフ選手権