第39回日本プロゴルフ選手権(1971年)
2014.11.03
昭和46年9月20日付のスポーツニッポン
ジャンボが時代の幕を開いた
「ジャンボ」尾崎将司が、プロ2年目で鮮やかな初優勝を飾り、時代の幕を開いた。大会は、開場間もない宮崎・フェニックスCCで行われた。当時としては距離の長い7105㍎、パー72。初日首位に立ったのは、「ビッグスギ」の愛称で親しまれた杉本英世だった。10㍍を超える強風が吹き荒れる中、ドライバーが好調で、4番で1㍍のバーディーを決め、5、7、8番でもバーディーを奪ってアウト32で回り、勢いづいた。このコースは、当時珍しかった洋芝のティフトン芝を採用。ボールが沈み、ランも出ない中で、米ツアー転戦で芝を知っている杉本は10番もバーディーと、ボギーなしのコース記録67をマークした。3打差で日吉定雄、田中文雄、4打差4位グループに尾崎将司、安田春雄らがつけた。
この大会から1日18ホールの4日間競技になったが、2日目は雨で中止となり、最終日36ホールで結果的に3日間72ホールの競技になった。3日目の第2ラウンドでは「リトルコーノ」と呼ばれた河野高明が64を出してコース記録を塗り替え、通算4アンダーで46位から一気に首位に立つ。1打差で杉本、日吉、71で回った尾崎は島田幸作とともに2打差4位で続いた。
最終日。午前の第3ラウンドで杉本が12番3パットのボギー、13番では右の林に打ち込んでダブルボギーと74をたたいて脱落。ともに70で回った尾崎と島田が通算4アンダーの首位に並んで午後の最終ラウンドに向かった。1番でグリーンを外してボギーとしたのに対し、尾崎は4・5㍍を沈めた。1打差のままインに入った勝負の流れは、10番パー5(495㍎)で決まった。尾崎は300㍎超のドライバーショットから、第2打を4番アイアンで4㍍に2オン。これを沈めてイーグルをもぎ取った。緊張で固くなっていた表情がここから笑顔も出るようになったと、当時の新聞各紙は伝えている。島田はここから崩れ、午前に崩れた杉本が68をマークして1打差まで追い上げたが、尾崎がそのまま押し切り、通算6アンダーで初優勝を手にした。
「最高の感激ですね。生まれてきて良かった」と尾崎は優勝の味をかみ締めたと、当時のスポーツニッポン紙は伝えている。徳島海南高のエースとして1964年の選抜高校野球大会で優勝投手となり、プロ野球西鉄ライオンズに入団。しかし、全く活躍できないまま3年で任意引退選手になった。西鉄時代に始めたゴルフに転身、70年にデビューした。飛距離は他の選手を圧倒していたが、勝ち星はすぐには恵まれなかった。71年はJALオープンでデビッド・グラハム(オーストラリア)とプレーオフ6ホールを戦って敗れ、関東プロでは優勝争いに加わったが、青木功のプロ初優勝に阻まれて3位。関東オープンでは2、3日目にトップに立ったが、謝永郁に逆転負け(3位)と、あと一歩でタイトルを逃してきた。「プロ野球の怨霊のせいだ」とまでいわれたこともあったという。
「技術では僕よりうまい人は何人もいる。これからは自分のパワー・ゴルフを完全にしたい。この優勝がフロックでないことをファンのみなさんに知らせたい」と、当時の日刊スポーツ紙は意気込みを伝えている。その通り、尾崎はその後の日米対抗、ゴルフダイジェスト、瀬戸内サーキット広島、日本シリーズに優勝。「呪縛」を解かれたように、年間5勝を挙げた。ツアー制度施行前で賞金王という呼び名はなかったが、1800万円あまりを稼ぎ、前年河野高明が初めて超えた最高獲得賞金1000万円の大台を軽々突破し、記録を塗り替えた。日本プロでは6勝を挙げて最多記録を保持している。当時はまだ「ジャンボ」のニックネームは定着していなかったが、「異次元」の飛距離でプロゴルフ界に登場。「ゴルフブーム」へと導いていく。
プロフィル
尾崎将司(おざき・まさし)1947~徳島県出身。徳島海南高校時代は野球部のエースとして選抜高校野球大会を制し、西鉄ライオンズに入団。実働3年で退団してプロゴルファーを目指し、23歳でプロテストに合格した。前人未到の通算113勝(海外1勝含む)を誇り、賞金王は計12回。ゴルフ人気を高めた立役者である。2010年に世界ゴルフ殿堂入り。
第39回日本プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 尾崎将司 | 282 | = 71 71 70 70 |
2 | 杉本英世 | 283 | = 67 74 74 68 |
3 T | 内田繁 関水利晃 |
287 | = 73 74 70 70 = 75 71 73 68 |
5 | 島田幸作 | 288 | = 73 69 70 76 |
6 T | 草壁政治 田中文雄 |
289 | = 72 76 67 74 = 70 76 75 68 |
8 T | 青木功 河野高明 陳健忠 |
290 | = 75 70 77 68 = 76 64 73 77 = 73 71 73 73 |