第36回日本プロゴルフ選手権(1968年)
2015.07.06
1968年9月9日付日刊スポーツ
72ホール目の決着、島田幸作が激戦制し初優勝
24歳、関西期待の新鋭、島田幸作が全国デビューを果たした。大会は千葉県の習志野CCキングコース(7022ヤード、パー72)で開催された。ラフが20センチ以上伸ばされ、小さいグリーンのコース。ショットの正確性が求められ、大会前から「狭いコースに慣れている関西勢が有利」と見られていた。
第1日、首位に立ったのは小川貞雄。「飛ばないけど、あまり曲げないのが僕の特徴」といい、ティーショットでラフに入れたのは17番での1回だけと、コースをうまく攻略して、6バーディー、2ボギーの4アンダー68をマークした。2位には1打差で上田鉄広と井岡誠。ホームコースのベテラン林由郎、小野光一が島田、杉原輝雄、河野高明らとともに3打差10位につけていた。
第2日、大会前の予想が現実味を帯びてきた。前日首位の小川が崩れ、通算5アンダーで首位に立ったのが島田だった。兵庫の宝塚GC所属。177センチと大柄の飛ばし屋で将来を期待されていた。「いつも狭いところでやっているから、関東の広いコースではのびのびやれた」と日刊スポーツ紙は伝えている。4番のパー5で6メートルのバーディーを奪ってから波に乗った。選手たちを手こずらせているラフには6回入れたが、ショートアイアンのリカバリーがよく、ボギーを打たなかった。4バーディーの68をマークした。小川をはじめ、ラフに苦しんでスコアを落とす関東勢を尻目に、上位には関西勢が並んだ。1打差2位に城陽の新井進、2打差3位に鳴尾の松田司郎と杉原がつけた。11位に踏ん張った林は「ドライバーをセーブして打つことが必要で関東勢は勉強不足」と話している。
最終日は36ホールの戦い。体力勝負の中、まず午前中の18ホールで若手が浮上した。鈴村照男が69で回って通算5アンダーで首位に立ち、68をマークした青木功が通算4アンダーとして2位につけた。島田は74とスコアを落とし通算3アンダーに後退し、68で回った村上隆とともに3位と、試合は混沌としてきた。
午後の18ホール、島田がハプニングに見舞われた。3番でグリーンオーバーした打球がギャラリーのポケットの中に飛び込んだ。このホールをボギーとしたが、この出来事が幸運を呼んだのか、7番で1メートルに付け、8番パー5で2オン、9番では2メートルと3連続バーディーで浮上。15番で5メートルを決めて6アンダーで首位を取り戻した。しかし、17番でボギーにして、勝負は通算5アンダーの島田、青木、4アンダーの鈴村の3人に絞られて最終18番パー5にもつれ込む。先に回っていた青木は林に打ち込んでボギーとし、通算4アンダーに後退。鈴村はバーディーを奪って通算5アンダーでホールアウトした。第2打でグリーン右にこぼした島田。「ピンに寄せればいい。パーでも鈴村さんとプレーオフ」と思った第3打のアプローチがカップに入りかけ、楽々とバーディーを奪って通算6アンダー。72ホール目で決着をつけ、初のプロ日本一に輝いた。
前年の関西オープン、プロで2位となって、関西きっての大型選手として注目を集めていたが、この優勝で日本のトッププレーヤーの仲間入りを果たした。「名前を新聞に載せたかった」と新聞各社にコメントしている。尼崎高校卒業後、オートバイ工場に就職したが「工員ではうだつが上がらないし」と、名門宝塚GCに転職、キャディーをしながらプロゴルファーになった、当時としては変わり種。向こう気の強さが武器だった。同じ関西でも、杉原ら茨木一門とは一線を画していた。
1999年、日本プロゴルフ協会からトーナメント部門が独立、日本ゴルフツアー機構が発足した際に、初代チェアマン(のち会長)に就任。同機構の法人化やツアーの存続、発展に貢献したが、2008年、膵頭部がんのため死去、64歳だった。
プロフィル
島田幸作(しまだ・こうさく)1944年5月7日~2008年11月3日。兵庫県出身。尼崎高卒業後、オートバイ工場に就職したが、生家近くの宝塚GCに入り、古賀春之輔に師事。59年に2度目のプロテストに合格。68年日本プロに続き、関西オープン(70年)関西プロ(73、74、77年)に勝ち、76年日本オープンを制してグランドスラム(当時)を達成した。通算15勝(ツアー8勝)。99年、プロゴルフ協会から独立した日本ゴルフツアー機構のトップとして、2008年まで指揮を執った。同年11月3日、膵頭部がんのため死去。
第36回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 島田 幸作 | 282 | = 71 68 74 69 |
2 | 鈴村 照男 | 283 | = 70 72 69 72 |
3 | 青木 功 | 284 | = 74 70 68 72 |
4 | 原 孝男 | 287 | = 75 70 70 72 |
5 T | 井岡 誠 橘田 規 石井 朝夫 細石 憲二 村上 隆 |
288 | = 69 73 73 73 = 70 72 76 70 = 72 74 69 73 = 74 72 72 70 = 75 70 68 75 |
10 T | 原 政雄 河野 高明 杉原 輝雄 |
289 | = 72 70 75 72 = 71 75 71 72 = 71 70 76 72 |