第32回日本プロゴルフ選手権(1964年)
2016.05.09
1963、64年と2連覇した橘田規(日本プロゴルフ協会50年史より)
橘田規が大会史上5人目の連覇を達成
1964(昭和39)年日本プロの舞台は大阪府の北東部、京都府との境に位置する枚方CC(7050ヤード、パー72)だった。井上誠一の設計で1959年に開場。大きなトーナメントの会場となるのは初めてのことだった。強い西風が吹いた初日、参加した112選手の中でアンダーパーをマークできたのは1アンダーの71で回った首位タイの3人だけだった。その中の1人は49歳の大ベテラン・戸田藤一郎。強風の中、代名詞でもあるパンチショットを駆使して存在感を見せつけた。若手の工藤幸裕も71をマーク。そして首位グループのあと1人が前年優勝者の橘田規だった。前年の大会で日本と名のつくビッグタイトルを初めて手にした橘田は2カ月後に関西オープンも制覇。この年は春先にアジアサーキットで2度2位に入るなど着実に実績を積んでいた。
快晴、無風の好コンディションとなった2日目は3人が69で回ってきた。その1人が橘田。「このコースは練習中75よりいいスコアを出したことがなかったのに、やってみないとわからんもんです」(報知新聞より)と表情を緩めた。通算4アンダー、2位の戸田、鈴村久に3打差をつけて単独首位に立った。前年、追い上げ及ばず橘田に次ぐ2位に甘んじた石井朝夫も69をマーク。4打差の4位に浮上した。
最終日は36ホールの勝負である。初日ほどではないが、西風がやや強く吹いていた。橘田は最初の9ホールで39と崩れ、石井と鈴村に首位を譲った。だが、インに入ってからパッティングが決まり始めて持ち直す。第3ラウンドを終えて橘田が4アンダーで首位、石井と鈴村が2アンダーで追う形となった。老雄・戸田は76を叩き、大きく後退した。
最後の18ホール、チャージをかけた石井が一歩前に出るが、橘田がすぐに追いつく。鈴村は9番で痛恨のダブルボギー。優勝争いは橘田と石井の一騎打ちの様相を呈してきた。
石井は前年、日本シリーズと関東オープンを制し、この年はアジアサーキットで2勝。同サーキットで初めての日本人チャンピオンである。そして大会連覇を狙う橘田。脂の乗った実力者2人がプロ日本一の栄冠をかけて激しく争った。
勝負のバックナイン、まず橘田が魅せる。10番で3m、11番で1.5m、12番で4mと立て続けにバーディーパットをねじ込んだ。別の組でプレーする石井も負けてはいない。12、15番でバーディーを奪い返して1打差に迫った。だが、16番のボギーで石井の勢いが止まった。72ホールを終えて橘田が7アンダー、石井は5アンダー。橘田が2打差で連覇を飾った。
橘田は「パットがよかったです。優勝できたのはパットが原因ですよ。こっちへ流れるなというカンが、本当によく当たった。自分でもあれだけはいるとは思わなかった」(日刊スポーツより)とパットを勝因に挙げた。それほど、グリーン上のプレーが鮮やかだったのだ。
敗れた石井は「おれがあれだけ内容のいいゴルフをしているのに、勝てないんだからな。あんなに橘田のパットが決まっちゃ、どうしようもないよ。負けても悔いはない」(日刊スポーツより)と白旗をあげた。
橘田は「僕にとって組み合わせにも恵まれていた」(日刊スポーツより)とパット以外にもうひとつ勝利につながった要素を口にした。「石井朝さんは、なにをやるかわからないので、やはり警戒しました。同じ組でプレーしていたら、負けていたかもしれない」(日刊スポーツより)。
日本プロ連覇はラリー・モンテス、戸田藤一郎、林由郎、中村寅吉に続く5人目。名実ともに日本を代表する存在になったことを強く印象付けた。
プロフィル
橘田 規(きった・ただし)1934~2003兵庫県出身。19歳でプロ入りし、23歳の時に関西プロで初優勝した。25歳で米国に留学し、帰国後は次々にタイトルを獲得。日本シリーズこそ2位が2度など優勝には届かなかったが、日本3冠(日本プロ、日本オープン、日本プロマッチプレー)を達成した。ワールドカップ代表には1961年から5年連続で選出され、1970、71年には全英オープンにも出場している。2015年、日本プロゴルフ殿堂入り。
第32回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 橘田 規 | 281 | = 71 69 72 69 |
2 | 石井 朝夫 | 283 | = 75 69 70 69 |
3 | 鈴村 久 | 284 | = 73 70 71 70 |
4 | 山口 征二 | 288 | = 75 72 69 72 |
5 | 小野 光一 | 291 | = 78 70 69 74 |
6 T | 原 孝男 原 政雄 |
292 | = 73 72 74 73 = 77 72 71 72 |
8 T | 加藤 辰芳 石井 迪夫 |
293 | = 75 70 73 75 = 77 71 71 74 |
10 | 鈴村 照男 | 294 | = 77 72 75 70 |