第2回日本プロゴルフ選手権(1927年)
2015.08.03
1927年7月11日付大阪毎日新聞
初代チャンピオンとの激闘を制した中上数一
元号が昭和となって7カ月余り、1927(昭和2)年7月9日に第2回日本プロが開催された。会場は前回と同じ大阪府の茨木CC(パー69)。第1回大会は茨木、舞子、甲南、鳴尾の関西4倶楽部が主催で大会創設を主導した大阪毎日新聞社が後援という形だったが、第2回大会からは大阪毎日新聞社が主催に立場を変えている。参加者は前回より2人増えて8人。2年連続出場となる宮本留吉、福井覚治、安田幸吉、越道政吉に初出場の中上数一、浅見緑蔵、村木章、柏木健一という顔ぶれだ。第1回に出場した関一雄と村上伝二は病気により欠場と大阪毎日新聞は伝えている。
競技方法は前回と同じく1日36ホールのストロークプレー。午前10時、村木、柏木の2人が第1組としてスタートしていった。第2組は宮本と安田、第3組は中上と福井、第4組は越道と浅見だった。
第1ラウンドはインで35の好スコアをマークした中上が76でリードした。2位は大会連覇を目指す宮本で77、柏木が79で続いた。
第2ラウンドに入ると柏木は大きく後退。中上と宮本の一騎打ちとなった。
アウトを終えて宮本が逆転して1打リード。インに入って中上が再逆転したかと思えば宮本が再度ひっくり返すという大激戦。18番を迎えた時点で宮本1打リードだったが痛恨のボギーを叩き、パーにまとめた中上と通算153ストロークで並んだ。第1回大会に続き、優勝の行方はプレーオフへと持ち越された。
翌10日、優勝をかけた中上、宮本のプレーオフと3位で並んだ福井、浅見、村木の順位決定戦がともに18ホールストロークプレーで行われた。
この時、宮本は24歳、中上は33歳だった。中上は前年の第1回大会には参加していないが、ゴルフ歴は古い。
中上がゴルフと出合ったのは宮本同様、六甲の神戸GCだった。父親がコース造成に携わった縁で、子供のころからキャディーをしていたのだ。ここで中上は英国人のE・H・ドーントの専属となり、ゴルフを学ぶ。ドーントは登山を日本に広めた人物としても有名であるが、ゴルファーとしても一流。日本アマでは優勝1回、2位3回の成績を残している。
中上は20歳で徴兵され、その後はドーントの事業を手伝うなどして一時ゴルフから離れていたようだ。このような経緯を経て1924年に程ヶ谷CC(神奈川県)に初代所属プロとして迎えられ、プロゴルファーとしてのスタートを切った。第1回日本プロが開催された時は朝鮮の京城GCに赴任していたために参加できなかったようである。
プレーオフも一進一退の攻防となった。アウトは中上が40、宮本は42だった。インでは11番で宮本が1打差に迫れば、14番で中上が2打差に広げ、15番で再び宮本が1打差に詰め寄るという展開となった。16番で宮本が1mほどのパーパットを外して2打差、しかし17番で中上がダブルボギーを叩き、ボギーの宮本にまたもや1打差に迫られた。
18番はパー5である。大阪毎日新聞によると、宮本はティショットを250ヤード飛ばし、中上は230ヤードだった。飛距離は宮本が上で、中上は巧みな小技が武器のゴルファーだった。2オンを狙った宮本のショットはトップしてバンカーへ。中上は堅実に3オンしてともにパー。中上が1打差で第2代チャンピオンに輝いた。
福井、浅見、村木による順位決定戦は福井が77、浅見79、村木82で3位福井、4位浅見、5位村木という結果になった。
中上は11月の関西オープンでも優勝している。上海から参戦したプロのG・ノリスに6打差をつける圧勝だった。3位はこの年の第1回日本オープンでプロを寄せ付けずに勝ったアマチュアの赤星六郎、4位は宮本だった。以降、中上は優勝することはなかったが、夜明け直後の日本プロゴルフ界でまばゆい輝きを放ったプレーヤーであることは間違いない。
プロフィル
中上数一(なかがみ・かずいち)1894~没年不明兵庫県生まれ。9歳ごろに神戸GCでキャディーを始める。1909年に同所で行われたキャディー選手権に優勝した記録が残されている。1924年、程ヶ谷CCに所属プロとして招へいされる。優勝歴は1927年の日本プロと関西オープンの2勝。
第2回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 中上 数一 | 153※ | = 41 35 38 39 |
2 | 宮本 留吉 | 153 | = 38 39 36 40 |
3 | 福井 覚治 | 161 | = 40 42 40 39 |
4 | 浅見 緑蔵 | 161 | = 39 44 41 37 |
5 | 村木 章 | 161 | = 39 41 38 43 |
6 | 越道 政吉 | 164 | = 39 47 36 42 |
7 T | 安田 幸吉 柏木 健一 |
168 | = 43 40 42 43 =38 41 43 46 |
※プレーオフ(18ホール)
中上 数一 | 81 | = 40 41 | |
宮本 留吉 | 82 | = 42 40 | |
3位決定も行う | 福井 覚治 | 77 | = 38 39 |
3位決定も行う | 浅見 緑蔵 | 79 | = 41 38 |
3位決定も行う | 村木 章 | 82 | = 37 45 |