第6回日本女子プロゴルフ選手権(1973年)
2016.07.19
1973年8月24日付スポーツニッポン
記録づくめの圧勝で女王・樋口が6連覇を達成
1968(昭和43)年、天城CC(静岡県)でスタートした日本女子プロは翌年の第2回大会から愛知県の貞宝CCに舞台を移した。パー74ではあるが、6575ヤードと当時の女子にすればたっぷり距離のあるセッティングで行われ、優勝者のスコア(54ホール)は3オーバー、5オーバー、6オーバー、3オーバーと4年続けてオーバーパーだった。優勝者はすべて樋口久子。ほかの大会では何度かアンダーパーでの優勝を経験していた樋口だったが、タフな貞宝CCではまだパープレーの壁を破ったことがなかった。1973年の第6回大会の会場も貞宝CC。前年までと同じ6575ヤード、パー74というセッティングだった。
この年も樋口は4月から約3カ月、米女子ツアーに参戦していた。優勝こそ成らなかったが全米女子プロでは首位タイで最終日を迎えるなど着実に米女子ツアーでも通用する力をつけていた。
8月21日に開幕した日本女子プロは国内女子ツアー本格的なシーズンイン初戦。「この大会に照準を合わせていました」(日刊スポーツ紙より)と言う樋口は、その言葉通り圧巻のプレーを披露した。アウトをパープレーで折り返すと、インでは11、13、14番でバーディーを奪って3アンダーとする。大会のコースレコードは自身の持つ72(2アンダー)。17番パー5でも3打目をピン上1.5メートルに寄せて絶好のバーディーチャンスを迎えていた。慎重にラインを読む樋口。「あのとき、はっきりとコースレコードを意識しました。じっくり芝目を見たらラインが浮かんできた。入るという確信を持って打ちました」(スポーツニッポン紙より)。ボール2個分ほど右に曲がってカップイン。18番をパーにまとめて4アンダー、70という新たなコースレコードを打ち立てた。
2位の小林法子とは4打差。ほかの選手からはため息が出るばかりだった。
2日目も樋口はひとり次元の違うゴルフをみせる。7番でボギーが先行したもののその後は3バーディー、ボギーなしでこの日もただひとりのアンダーパーとなる72をマーク。通算6アンダーで2位に浮上してきた山崎小夜子に7打の大差をつけた。
この大会で2年連続2位に終わっている山崎は「ショットもいいし、私のスコア自体も決して悪くはないのに……」(日刊スポーツ紙より)と遥か先を走る樋口にあきれ顔。3位の二瓶も「チャコは全く別格だわ。こんな難しいコースでパカパカもぐっちゃう(アンダーの意味)んだから」(日刊スポーツ紙より)とお手上げだった。
雨が降った最終日、ただでさえタフなコースが一層タフになった影響か、樋口は76にとどまった。しかし、コンディションが難しくなったことはほかの選手にはもっと響いた。2、3位につけていた山崎、二瓶はともに79と崩れた。ほかの選手も軒並みスコアを崩し、2位を死守した山崎が樋口につけられた差は何と10打。これは今なお最多差優勝の大会記録として残っている。大会史上初のアンダーパーとなる通算4アンダーで6連覇を飾った樋口は「勝因はショットがよかったこと。それに自分ではわからないけどアメリカにいったことがいい経験になったと思います」(スポーツニッポン紙より)と記録づくめの圧勝を冷静に分析した。
二瓶は敗者を代表するように「悔しいけれど、てんで相手にならないわ。ショットの正確さが、私たちとは全然違う。今年、全米女子プロで6位になって、グッと大きく成長したみたい」(日刊スポーツ紙より)と言葉を絞り出した。
アメリカでもまれてますます強くなっていく樋口と歩調を合わせるように女子ツアー自体も成長していった。この年の試合数は14。前年から倍増だった。樋口は計7勝を挙げ、女子初の年間1000万円プレーヤーとなった。
プロフィル
樋口久子(ひぐち・ひさこ)1945~埼玉県出身。1967年の第1回女子プロテストでトップ合格。日本女子プロは第1回大会からの7連覇を含む通算9勝、日本女子オープンは第1回大会からの4連覇を含む通算8勝を挙げている。国内通算69勝、賞金女王11回。76年には米女子ツアーで日本人選手として初優勝を飾り、77年の全米女子プロで日本人初のメジャー制覇を成し遂げた。97年から14年間日本女子プロゴルフ協会会長を務め、03年には日本人で初めて世界ゴルフ殿堂入りを果たしている。13年に日本プロゴルフ殿堂入り。
第6回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 樋口 久子 | 218 | = 70 72 76 |
2 | 山崎 小夜子 | 228 | = 75 74 79 |
3 T | 二瓶 綾子 石井 美和子 |
230 | = 75 76 79 = 79 75 76 |
5 T | 荒川 百合子 島尻 律子 |
234 | = 80 77 77 = 76 80 78 |
7 T | 辻 和代 横山 美智子 |
235 | = 78 79 78 = 79 82 74 |
9 T | 小林 法子 藤村 政代 |
236 | = 74 83 79 = 81 79 76 |