優勝トロフィーを掲げる永峰咲希＜Photo:Getty Images>

堅実なゴルフで永峰咲希がメジャー初優勝

　新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大した2020（令和2）年はゴルフトーナメントも大きな影響を受けた。女子ツアーは3月の開幕戦から中止が相次ぎ、6月にようやく“再開”。以降も中止となる大会もあり、最終的に開催できたのは予定されていた37試合中14試合。ただし、すべての大会が“無観客”での開催となった。
　日本女子プロの開催決定がアナウンスされたのは開幕約1カ月前の8月上旬。会場は当初の予定通り、岡山県のＪＦＥ瀬戸内海ＧＣ（6640ヤード、パー72）である。米ツアーを主戦場とする前年優勝の畑岡奈紗は欠場となった。
　9月10日、最高気温が30度を越える残暑の中、132選手が初日のスタートを切った。首位に立ったのは6アンダー、66で回った青木瀬令奈とイミニョンだった。青木は男子ツアーの選手会長にあたるプレーヤーズ委員長でコロナ禍の中、協会と選手をつなぐ重責を果たしていた。
2日目首位に立ったのは67をマークしたペヒギョン。2打差で19歳のルーキーながらプロデビュー2、3戦目と連勝して一躍話題の中心となった笹生優花ら5人が並んだ。
　3日目にスポットライトが当たったのは20歳の西村優菜だ。前年にプロテスト合格したばかりで、この試合がプロ5戦目。前年、アマチュアでツアー優勝を果たした古江彩佳らと同じ2000年度生まれで、2年先輩の畑岡や渋野日向子らの黄金世代に対してプラチナ世代ともミレニアム世代とも称される学年の一員だ。7バーディー、2ボギーでこの日ベストスコアタイの67で回った西村は通算11アンダーとして単独首位に浮上。大会最年少優勝記録更新の可能性も出てきた。
　1打差2位につけたのは田辺ひかりとペヒギョン。田辺は実家が会場から車で約40分の場所にあり、ジュニア時代からよくプレーしていたという。プロ5年目ながら目立った実績はないが、地の利を生かして初めての優勝争いに加わってきた。
　最終日最終組は西村、田辺、ペという組み合わせとなった。首位の西村が2番でボギーを叩いて後退。代わって、5番までに4バーディーを奪ったペが首位に立つ。だが、そのペも8番ダブルボギー、9番をボギーとしてしまう。
　猛チャージをかけてきたのが最終組のひとつ前をプレーしていたツアー1勝の永峰咲希だ。11番までに5つスコアを伸ばして通算14アンダー。この時点で3打差の首位に立った。
　だが、一筋縄ではいかないのがメジャーである。永峰は12、16番でともに3パットのボギーを叩き、12アンダーに後退してしまう。永峰に迫ってきたのはイナリ、木村彩子、そして最終組の田辺という面々。永峰を含め、上位はメジャー優勝経験のない選手ばかりとなった。
　勝負は左サイドが湖の18番パー5のプレー次第となった。まず1打差のイナリがバーディーパットを決められずにパー。通算11アンダーでホールアウトした。2打差の木村は3打目を1ｍ強につけてバーディー。イナリと同じく11アンダーで72ホールを終えた。
　12アンダーで首位の永峰は1打目、2打目ともにユーティリティークラブを使い堅実にフェアウエーをキープした。3打目はピン上5ｍ。これを沈めることはできなかったがパーでまとめ、この時点でイと木村の優勝はなくなった。
　残るは最終組である。追いつくにはイーグルが必要なペの3打目はピン手前で止まった。11アンダーの田辺はラフからの3打目を寄せきれず、バーディーパットはショート。マスクをつけて最終組のプレーを見守っていた永峰の表情がほころんだ。
　黄金世代やミレニアム世代、さらには笹生ら2001年度生まれの新世紀世代と若手が話題の中心になることが多い中、女子プロ日本一に輝いたのは25歳の中堅だった。目立って飛距離が出るわけでもなければ、パットの名手というわけでもない。穴の少ない堅実なゴルフで、しっかりとスコアをつくりあげていくのが永峰のスタイルだ。日本女子プロでは初出場から6年連続で予選通過と安定した成績を残し続けていた。難しい舞台だからこそ、永峰のような堅実さが生きる。自分の強みを生かしてつかんだ初めてのメジャータイトルだった。

プロフィル

永峰咲希（ながみね・さき）1995（平成7）年4月28日生まれ
宮崎県出身。10歳でゴルフを始め、宮崎日大高校時代に全国高校選手権などに優勝。ナショナルチームにも所属し、台湾アマでも優勝を飾っている。2014年にプロテスト合格。翌15年に早くも賞金シードを獲得した。18年のフジサンケイレディスでツアー初優勝。20年の日本女子プロがツアー2勝目となった。

第53回日本女子プロゴルフ選手権成績