第52回日本女子プロゴルフ選手権(2019年)
2019.11.18
優勝トロフィーを掲げる畑岡奈紗<Photo:Getty Images>
大会新記録の18アンダーで畑岡奈紗が8打差圧勝
時代が平成から令和へと移った2019(令和1)年、女子プロゴルフ界は渋野日向子の全英女子オープン制覇で一層の盛り上がりをみせた。前年、プロテストに合格したばかりの渋野はまさに突如現れた超新星。ニューヒロイン見たさに女子ツアーには多くの観客が詰めかけていた。日本女子プロの会場となった兵庫県のチェリーヒルズGC(6425ヤード、パー72)も大勢のギャラリーで埋まった。初日の観客数は6231人。初日としての大会最多記録だった。
その中で渋野は2、4番でボギーが先行する苦しい出だしとなった。それでも5番で初バーディー奪取。スコアを落とした次のホールで取り返すバウンスバックだ。渋野の代名詞ともいえるバウンスバックで流れをつかむ。6番以降で3つスコアを伸ばして2アンダーの70でホールアウトし、継続していた「連続ラウンドオーバーパーなし」をツアー新記録となる「29ラウンド」にまで伸ばしてギャラリーの喝采を浴びた。70は首位から2打差の11位。悪くないスタートとなった。
“アジアナンバーワン女子プロ決定戦”と銘打たれた今大会にはその名の通り、アジアの強豪が集結した。米ツアーから参戦の朴仁妃とフォンシャンシャンはともに海外メジャーチャンピオンであり世界ランキング1位経験者、そしてリオデジャネイロ五輪の金メダリスト(朴)と銅メダリスト(フォン)である。同じく米ツアーで戦う畑岡奈紗は一時帰国して大会初参戦となった。大会連覇を狙う申ジエもかつての世界ランキング1位であり、全英女子オープンを2度制している。渋野を含め海外メジャーチャンピオンが4人も顔をそろえる超豪華版である。
しかし、2日目は彼女らビッグネームの多くが苦戦した。初日首位タイの朴はスコアを伸ばせず8位に後退し、フォンは23位と停滞。渋野は75で「連続ラウンドオーバーパーなし」の記録がストップ。42位にまで順位を下げた。そして、申はまさかの予選落ちを喫してしまった。
ただ1人実力を発揮したのが畑岡だった。初日の69に続き2日目も67と好スコアをマークして通算8アンダー。単独首位に浮上した。
3日目はギャラリーが1万人を超えた。会場周辺の道路では渋滞が発生したほどだった。多くの視線を集めた渋野だったが、この日ももどかしいゴルフが続いた。6バーディーを奪いながら4ボギー、1ダブルボギーで帳消し。通算1オーバーの40位で3日目を終えた。ビッグネームで存在感を示したのがフォンだ。大会新記録、そして国内メジャーで初めてとなる63を叩き出し、23位から一気に3位にまで急浮上した。
畑岡も負けてはいない。16番でダブルボギーはあったものの7バーディーを奪って2日連続の67。単独首位を守った。2打差の2位は67で回った吉本ひかる。渋野、畑岡と同じ1998年度生まれのいわゆる黄金世代の一員である。
秋晴れの最終日はギャラリーが1万3278人にまで膨れ上がった。「きょうもたくさんのギャラリーさんが来てくださって楽しかったし、ありがたかった」と話した渋野は70で回ったが通算1アンダーの33位で終了。4日間で20個ものバーディーを奪いながらもスコアに直結せず「グリーンまわりのラフに対応できませんでした」と反省した。
優勝争いは1、2番で連続バーディーを決めた畑岡の独走となった。2位につけていた吉本は7番パー5で「9」を叩いて大きく後退。3位スタートのフォンも一進一退で畑岡を追い詰められなかった。2位に浮上していたフォンに4打差をつけて迎えた15番パー4、畑岡は残り70ヤードの2打目を放り込んでイーグル。この1打で勝利を確実なものにした。
終わってみれば2位に8打差をつける圧勝。通算18アンダー、270は大会新記録となった。国内メジャーは2016、17年の日本女子オープンに続く3勝目。20歳での国内メジャー3勝は最年少記録でもある。
記録づくめの栄冠を手にした畑岡が同い年の渋野について口を開いた。「日向子ちゃんが(全英女子オープンに)勝ってすごく悔しかった。自分も頑張らないといけないと思いました」。18歳で米ツアーに参戦し、この時点ですでに3勝。2018年の全米女子プロではプレーオフを戦うなど、海外メジャーに最も近い存在であることは誰もが認めるところだった。しかし、期待に応えたい気持ちが空回りし、この年の夏はエビアン選手権、全英女子オープンと海外メジャーで2試合続けて予選落ち。不振に陥っていた。
だが、自分が予選落ちした試合で同級生が達成した快挙が、畑岡を目覚めさせた。1人で背負っていたものが、フッと軽くなったのかもしれない。直後から米ツアーで2試合続けて5位以内と復調。そして挑んだ初出場の日本女子プロで見事に“第一人者”の貫録を見せつけた。
プロフィル
畑岡奈紗(はたおか・なさ)1999~茨城県出身。高校3年時の2016年、日本女子オープンを初めてアマチュアで制する歴史的快挙を達成し、プロ転向。17年からは米ツアーを主戦場とし、18年のアーカンソー選手権で初優勝を飾った。19年10月末時点で日本女子オープン3勝、日本女子プロ1勝など国内ツアー通算5勝、米ツアー通算3勝を挙げている。
第52回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 畑岡 奈紗 | 270 | = 69 67 67 67 |
2 T | 大西 葵 フォン シャンシャン |
278 | = 72 73 64 69 = 72 71 63 72 |
4 T | アン ソンジュ 青木 瀬令奈 河本 結 篠原 まりあ 三ヶ島 かな |
280 | = 69 74 69 68 = 71 71 68 70 = 73 67 69 71 = 76 65 68 71 = 70 67 70 73 |
9 | 朴 仁妃 | 281 | = 68 72 71 70 |
10 | 原 江里菜 | 282 | = 71 70 70 71 |