第49回日本女子プロゴルフ選手権(2016年)
2018.12.17
優勝トロフィーを掲げる鈴木愛(写真提供:日本女子プロゴルフ協会)
海外勢の公式戦連勝を止め、鈴木愛が大会2勝目
2014(平成26)年の日本女子プロにおいて20歳の大会最年少優勝の快挙を成し遂げた鈴木愛。実質的なルーキーイヤーでの大活躍は、次世代を担う新星の誕生を期待させるものだった。だが翌2015年は安定した成績は収めたものの未勝利。“2年目のジンクス”がのしかかっていた。真価が問われる3年目の2016年、鈴木は5月の中京テレビ・ブリヂストンレディスで待望のツアー2勝目を挙げる。18番のボギーで後続に並ばれた末、3人でのプレーオフを制しての辛勝だった。大舞台でつかんだ初優勝以降、2位に甘んじること実に5回。難産の末の2勝目が鈴木の覚醒を促した。9月、鈴木は北海道・登別GC(6750ヤード、パー72)での日本女子プロに臨んだ。大会連覇をかけて挑んだ前年はあえなく予選落ち。それだけに期するものがあった。
女子ツアー史上最長となる605ヤードのホール(5番、パー5)があるなど、もともとタフなコースに立て続けに北海道を襲った台風などの影響で想定以上に伸びたラフが加わり、非常に厳しいセッティングとなった。鈴木は初日、3バーディーは奪ったものの、ボギーを2個、ダブルボギーを1個叩いて1オーバーの73。首位から5打差の12位という出だしとなった。首位に立ったのは前日21歳の誕生日を迎えたばかりの濱田茉優。23歳の森美穂が1打差の2位につけるなど、若手が躍進した。
雨の2日目、鈴木は苦しみながらも耐えた。パーオンできたのは半分に満たない8ホールだけ。それでもコツコツとパーを拾い、2バーディー、2ボギーの72にまとめ上げた。 首位に出たのはこの日69で回り、通算2アンダーとした下川めぐみ。我慢した鈴木は3打差の8位に浮上していた。
3日目、雨は上がったが風が出た。上位陣はスコアを伸ばせない。鈴木はバーディーなしの3ボギー。スコアを3つ落とし、通算4オーバーとなった。この日のベストスコア、1アンダーの71をマークしたテレサ・ルーが酒井美紀と並んで首位浮上。前年覇者が大会史上2人目の連覇をしっかり見据える位置に来た。2打差の3位には申ジエ。さらに1打差の4位グループは全美貞と下川めぐみ。台湾、韓国の強豪が上位にひしめく展開となった。
最終日は大混戦となった。本命視されていたテレサ・ルーがアウトで4連続ボギーを叩くなど後退。同じく首位で出た酒井もアウトで39と乱れた。元世界ランキング1位の申ジエも、ジリジリとスコアを落としていく。代わって下川めぐみや森田遥という優勝経験のない選手が首位に立つなど目まぐるしく順位が動いた。
そんな中、最終組から3組前、5打差の10位でスタートした鈴木は2番でボギーが先行したものの、3、6、10番とバーディーを重ねていく。通算2オーバーとしてインをプレー中、上位陣の乱れでいつの間にか首位グループの一団に入っていた。森田はインで大きく後退。踏ん張っていた下川が14番をボギーとし、この瞬間、16番をプレー中の鈴木が単独首位となった。ただ、直後に最終組の酒井が13番でバーディー。鈴木に並んだ。
410ヤードと距離のある16番パー4、鈴木は10m近いバーディーパットをしっかり寄せてパーセーブする。17番パー5は奥のカラーからパターで寄せてパー。首位タイのまま18番に向かった。
18番は370ヤードのパー4。グリーン左手前には池がある。この日のピン位置は右奥だった。フェアウエーからの2打目、鈴木は右横4.5mに乗せた。
そのころ、他の組で動きがあった。酒井が16番でアプローチを寄せきれずにボギー。首位から陥落した。一方で最終組のひとつ前を回っていた大山志保が15、16番で連続バーディー。鈴木に1打差にまで迫っていた。
やや右に曲がる鈴木の18番バーディーパット。ラインを読み切った鈴木はこれをねじ込んだ。右手を何度も突き上げる。優勝がグッと近づいた。ほどなくして、17番では大山が3連続バーディーを決めた。こちらも右手で何度もガッツポーズをつくる。単独2位浮上。再び鈴木とは1打差だ。最終組の3人は17番を終えて鈴木と2打差。追いつくチャンスを残したのは実質的に大山1人となった。
大山の18番、ティーショットを右のバンカーに入れてしまい、2打目はグリーン手前に何とか乗ったものの20m近い距離を残した。一縷の望みをかけて放ったバーディーパットはカップに向かったが30cmほどショート。この瞬間、鈴木の2年ぶり大会2勝目がほぼ確実になった。大山と同組の下川が18番でバーディーを奪って2位に並ぶ。そして最終組の3人が18番の2打目を終えた時点で優勝決定。練習グリーンで一報を聞いた鈴木は小躍りして喜びを表した。
誰もが認めるパットの名手。誰よりも長い時間をかけて練習する姿勢がその地位を支えている。「最後のパットは練習の成果が出た」(スポーツニッポン紙より)と言葉が弾んだ。
2年前の日本女子プロで鈴木が勝って以降、テレサ・ルーや申ジエ、さらにはチョン・インジにレキシー・トンプソンという招待選手を含め海外勢が7大会連続で公式戦を制していた。2年前の自分自身以来、8大会ぶりの公式戦日本人優勝者となった鈴木は「日本のメジャーなので日本人が勝ちたいし、私も“もう一度”と思っていた」(スポーツニッポン紙より)と胸を張った。
翌2017年、鈴木は賞金女王にまで上り詰める。期待の新星は日本のエースに成長した。
プロフィル
鈴木愛(すずき・あい)1994~徳島県出身。11歳でゴルフを始める。中学3年時に四国女子アマ優勝。高校は鳥取県の倉吉北に進み、2011、13年と中国女子アマを制した。13年のプロテストで合格。14年の日本女子プロゴルフ選手権で初優勝を飾った。同大会では16年に2勝目。翌17年には賞金女王に輝いた。
第49回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 鈴木 愛 | 289 | = 73 72 75 69 |
2 T | 大山 志保 下川 めぐみ |
290 | = 77 70 72 71 = 73 69 76 72 |
4 T | 申 ジエ 酒井 美紀 |
291 | = 74 69 74 74 = 70 73 72 76 |
6 T | 菊地 絵理香 永峰 咲希 全 美貞 テレサ・ルー |
292 | = 75 72 76 69 = 73 75 73 71 = 74 69 75 74 = 72 72 71 77 |
10 T | 笠 りつ子 イ ナリ |
293 | = 75 70 74 74 = 73 73 73 74 |