第47回日本女子プロゴルフ選手権(2014年)
2017.08.21
優勝カップを掲げる鈴木愛(写真提供:日本女子プロゴルフ協会)
藍の記録を愛が超えた。20歳の鈴木愛が大会最年少V
記録は常に塗り替えられる。宮里藍が打ち立てていた21歳83日の大会最年少優勝記録をプロになって1年余りの20歳の選手が更新した。2014(平成26)年の日本女子プロは大会史に残る一戦となった。会場は兵庫県の美奈木GC(6645ヤード、パー72)。前年のプロテスト会場でもある。このプロテストを2位で合格した成田美寿々は日本女子プロを迎えた時点で早くも2勝。同期の出世頭になっていた。
日本女子プロでの主役は成田に次ぐ3位で合格した鈴木愛である。プロデビュー年は出場4試合中3試合が予選落ちで、この年は12位が最高成績と特に目立った存在ではなかった。強いて挙げれば、ステップ・アップ・ツアーで13、14年と1勝ずつマークしていたことか。そんな鈴木が一躍時の人となったのである。
初出場の日本女子プロ、鈴木は初日70で2位発進すると2日目に5バーディー、ボギーなしの67を叩き出し、通算7アンダーで2位に4打差をつけて単独首位に立った。「自分でもびっくり。スコアのことをあまり考えていなかったので、ノーボギーというのもさっき気づきました」(スポーツニッポン紙より)とのコメントが初々しい。勝てば宮里の記録を塗り替えることを知ると「人生の中で一番のチャンス」(スポーツニッポン紙より)と意気込んだ。
3日目、初めての最終組に固くなったのか2、3番で連続ダブルボギーを叩いてしまう。「凄く苦しくて、あと何ホールあるんだろうと思った」(スポーツニッポン紙より)と精神的にも追い詰められていたが、そこから踏ん張った。4番以降は3バーディー、2ボギー。スコアを3つ落としはしたが1打差で単独首位の座は守った。2位は大江香織と賞金女王経験者の上田桃子。2打差の4位グループには同期の成田や元世界ランキング1位の申ジエら強敵が控えていた。
最終日は朝ごはんがのどを通らないほど緊張していた。それでも、1番で3m、2番ではカラーから20m近い距離を沈めて連続バーディーでスタートしていった。その後、後続がジワリと迫ってくるが首位の座は譲らない。
16番パー5をボギーとして2位とは1打差。プロテスト最終日はトップ合格を狙える位置にいながら16番のボギーに続いて17番ボギー、18番ダブルボギーと崩れていた。「あの時のような悔しい思いをしたくない」(LPGA公式ウェブサイトより)。鈴木は気持ちを奮い立たせた。
フェアウエーが狭く絞られた350ヤードの17番パー4、ティーショットでドライバーを選択しない選手もいる中、鈴木は果敢にドライバーを振り抜いた。ボールは狭いフェアウエーをしっかりととらえた。2打目は100ヤード。ロフト50度のウエッジでの2打目はピン手前3mに寄せた。これを決めてバーディー。何度も右のこぶしを握りしめた。
最終ホールはボギーとしたが1打差で逃げ切った。大歓声にまず頭を下げて一礼。直後にうれし涙があふれてきた。
ゴルフを始めたきっかけは、宮里の優勝シーンをテレビで見たことだった。その宮里の記録を塗り替える20歳128日の大会最年少優勝だ。
18番グリーンサイドでの優勝インタビュー、「日本一の女子プロゴルファーになったんですよ」と問われると、こわばった笑顔で「実感がわきません…」とポツリ。ギャラリーの拍手に新しいヒロインはまた頭を下げた。
プロフィル
鈴木愛(すずき・あい)1994~徳島県出身。11歳でゴルフを始める。中学3年時に四国女子アマ優勝。高校は鳥取県の倉吉北に進み、2011、13年と中国女子アマを制した。13年のプロテストで合格。14年の日本女子プロゴルフ選手権で初優勝を飾った。同大会では16年にも優勝している。
第47回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 鈴木 愛 | 283 | = 70 67 75 71 |
2 T | イ ナリ 穴井 詩 成田 美寿々 申 ジエ |
284 | = 72 70 74 68 = 70 71 74 69 = 72 70 72 70 = 71 71 72 70 |
6 | リ エスド | 286 | = 75 69 74 68 |
7 T | 黄 アルム 上田 桃子 大江 香織 |
287 | = 70 73 71 73 = 73 71 69 74 = 70 74 69 74 |
10 T | 菊地 絵理香 笠 りつ子 ジャン ウンビ |
289 | = 72 74 72 71 = 70 77 71 71 = 74 74 68 73 |