第44回日本女子プロゴルフ選手権(2011年)
2018.01.22
優勝トロフィーを掲げる三塚優子(写真提供:日本女子プロゴルフ協会)
試練を乗り越え、三塚優子が復活優勝
東日本大震災に見舞われた2011(平成23)年、女子ツアーは4試合が中止となった。ツアーが再開したのは震災から約1カ月後。選手たちは街頭募金を行い、賞金の一部を義援金にあてるなど復興支援活動に尽力していた。この年の日本女子プロは千葉県のキングフィールズGCで開催された。コースの全長は6700ヤード(パー72)。大会史上、初めて6700ヤードに達するタフなセッティングとなった。しかも4日間とも最高気温が30度超え。厳しい残暑との闘いにもなった。
初日、三塚優子と大会3度目の優勝を狙う不動裕理が5アンダーで首位に立った。ともに5バーディー、ボギーなし。不動はスタートの1番ホール以外はすべてパーオンというショットの安定感だった。三塚はタフなコースを自慢の飛距離で攻略した。手にしていたのは賞金ランキング5位となった2年前に使っていたドライバー。前年から不振が続き、この年もこの時点で最高成績が18位。何とかトンネルから抜け出そうと、2週間前の試合から再び“元エース”をバッグに入れていた。信頼するドライバーに戻した効果で落ちていた飛距離が30ヤードもアップ。「自信を持って振れるようになったのが一番大きい」(スポーツニッポン紙より)と復調の手応えをつかんでいた。
2日目、不動は初日と打って変わってショットが乱れ、77と崩れて大きく後退。一方の三塚はパッティングに苦しみながらも飛距離を生かして4ホールのパー5のうち3ホールで2オンに成功してバーディーを奪う。トータルでは4バーディー、3ボギーの71。通算6アンダーとして首位を守った。1打差の2位は横峯さくらとカン・スーヨン。前年覇者の藤田幸希が67をマークして2打差4位に浮上していた。
久し振りの優勝争いの重圧からか、大会期間中最高の33度を超えた暑さの影響か、3日目、三塚は75と崩れた。首位に立ったのは横峯。3バーディー、2ボギーの71にスコアをまとめ、通算6アンダーで2位の三塚、藤田に3打差をつけた。横峯は今大会、2位は2度あるものの未勝利。日本女子オープンでも2位が2度で優勝には届いていなかった。「(日本と名のつくタイトルを)獲ってみたい気持ちは強いですけど、(明日は)しっかりイチからやっていきたいと思います」(LPGA MEMBER GUIDE2012より)と高ぶる気持ちを抑えるように話した。「耐えるゴルフだった」(スポーツニッポン紙より)と振り返った三塚は「明日は自分の力を最大限に発揮できるようにやっていきたい」(LPGA MEMBER GUIDE2012より)と初の公式戦タイトルへ巻き返しを誓った。
最終日は朝、降雨と雷で2度にわって計39分間の中断があり、最終組のスタートが遅れた。ビッグタイトルに指先がかかっていた横峯は序盤から精彩を欠いた。ボギーを重ね、ジリジリとスコアを落としていく。三塚は前半の9ホールを3バーディー、1ボギーの34で折り返した。この時点で単独首位に立っていた。終盤、ひとつ前の組を回るフォンシャンシャンが迫ってきた。17番パー5、三塚の2打目は右の池方向に飛んだ。ボールは池の縁わずか数㎝のところで止まっていた。見えない力が働いていたかのようだった。このホールをパーで切り抜け、1打差で迎えた18番もパー。ウイニングパットを沈めると、涙がこぼれた。
前年は失意のどん底にいた。3月にゴルフの師匠でもある父親を亡くした。5月にはスロープレーによるペナルティーの裁定に不満を爆発させて棄権。後日、反省して自らに約2カ月の出場自粛を科すという騒動もあった。「去年はいろいろなことがあってもう勝てないんじゃないかと思っていた。ゴルフをするのがつらかった」(スポーツニッポン紙より)。期待の大型プレーヤーが、賞金シードがやっとという状態にまで落ち込んでいた。
試練を乗り越えてつかんだ復活優勝。背中を押してくれたのは天国の父親だった。大会2日目が父親の誕生日。「だから、絶対に勝ちたかった。その思いがあふれました」(スポーツニッポン紙より)。タップインの距離のウイニングパットの前、三塚はじっと空を見つめていた。父親に何か語りかけるような表情だった。
プロフィル
三塚優子(みつか・ゆうこ)1984~茨城県出身。埼玉栄高校時代は日本ジュニア6位などの成績を残した。2006年にプロ転向。翌07年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンで初優勝を飾った。08年に賞金ランキング7位、09年には賞金ランキング5位に入っている。通算4勝。公式戦は11年日本女子プロの1勝。
第44回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 三塚 優子 | 282 | = 67 71 75 69 |
2 | フォン シャンシャン | 283 | = 71 72 72 68 |
3 | 横峯 さくら | 286 | = 69 70 71 76 |
4 | 黄 アルム | 287 | = 71 76 69 71 |
5 | ジャン ウンビ | 288 | = 74 69 74 71 |
6 T | 服部 真夕 不動 裕理 |
289 | = 71 73 72 73 = 67 77 72 73 |
8 T | 全 美貞 福嶋 晃子 森田 理香子 |
290 | = 74 72 74 70 = 68 74 73 75 = 70 73 72 75 |