第42回日本女子プロゴルフ選手権(2009年)
2016.11.21
優勝カップを掲げる諸見里しのぶ(写真提供:日本女子プロゴルフ協会)
23歳の諸見里が史上最年少のメジャー3冠
2009(平成21)年の女子ツアーは“4強”がハイレベルの賞金女王争いを繰り広げていた。9月、日本女子プロを迎えた時点で賞金ランキング1位の諸見里しのぶがすでに5勝を挙げて1億円を突破。同2位から4位の横峯さくら、全美貞、有村智恵はそれぞれ3勝をマークしていた。特に直近の12試合の優勝者は1試合を除いてこの4人。まさに“4強”の寡占状態だった。岐阜県の岐阜関CC(6632ヤード、パー72)で開催された日本女子プロもこの4人が軸となって優勝争いが展開されるだろうという予想だった。優勝賞金は2520万円。前年の1800万円から大幅に増額され、賞金女王レースにも大きな意味を持つ大会となった。
初日は強い風がコースに吹き付けた。アンダーパーは5人だけ。その中に入っていた“4強”は2アンダーで2位につけた有村1人だった。終盤で連続ボギーはあったが「去年まではメジャーのコースはすごく難しくて、どういうゴルフをしたらいいか分からなかった。でも今年は意外といけるかもと思えるようになってきた」(スポーツニッポン紙より)と自身の成長を感じているような口ぶりだった。
首位は4アンダー、68で回った上原彩子。諸見里と横峯はパープレーで6位グループにつけ、全は4オーバーの45位と出遅れた。
好天に恵まれた2日目、諸見里が6バーディー、1ボギーでこの日ベストの67を叩き出し、通算5アンダーで首位に躍り出た。直前の4試合は2位、優勝、3位、優勝と絶好調。「ずっとパットのタッチが良くて、グリーンに乗せればロングパットでも不安なく打つことができています。そのおかげでショットにプレッシャーがありませんでした」(LPGA MEMBER GUIDE2010より)と充実感を漂わせた。
初日首位の上原はスコアを1つ落として2打差の2位に後退。通算2アンダーの3位には馬場ゆかりとブラジル生まれの日系3世、マリア・イイダがつけた。
初日2位の有村は73で4打差5位、横峯は2日連続の72で5打差の7位と停滞。出遅れていた全は70で回って通算2オーバーの11位にまで盛り返してきた。
気温がグッと下がり、秋の冷たい雨が降り続いた3日目は雷の影響もあり、途中2度の中断があった。タフなコンディションの中、首位の諸見里が粘りのゴルフをみせた。スタートから4ホール連続で寄せワンでパーセーブして流れをつくると5番でバーディーが先行。8番で2個目のバーディーを奪った直後に9番で3パットのボギーを叩くが、10番ですぐにバーディーを取り返す。11番以降はすべてパー。上がりは3ホール連続で3m前後のパーパットが残るピンチだったが、ことごとく沈めてこの日のスコアは70。通算7アンダーとして首位を守った。諸見里は2007年に日本女子オープン、この年の5月にワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップとすでに2つのメジャーを制している。勝てば史上8人目のメジャー3冠。しかも23歳という最年少での達成となる。快挙を目前にした諸見里は「コースが難しいのでミスしても焦らないで、気持ちが強くなりすぎないように。後は楽しくやりたいです」(LPGA MEMBER GUIDE2010より)と静かに話した。
2打差の2位は馬場ゆかり、4打差の3位には宋ボベがつけた。前日5位の有村は74で6位に、前日7位の横峯は76と崩れて17位にそれぞれ後退。全も73と苦戦して15位にとどまった。
最終日、諸見里は1番パー5の2打目でまさかのミスを犯してしまう。5番ウッドでのショットはアベレージゴルファーのように大きくダフって右の斜面へ。このミスをリカバリーできず、いきなりボギーを叩いてしまった。3番ではアプローチを寄せられずにボギー。パーを重ねていた馬場に追いつかれた。
ここで諸見里は「1日は長い。焦らずにバーディーを取っていこう」(LPGA MEMBER GUIDE2010より)と、前日のコメントと同じようなことを自分に言い聞かせた。直後の4番パー4、174ヤードの2打目が30cmにピタリとついた。この日初バーディー。このホールをボギーとした馬場との差はスタート時と同じ2打となった。このショットがターニングポイントとなった。自分のプレーを取り戻した諸見里に対して追う上位陣はスコアを崩していった。
気がつけば、独走態勢を築いていた。最終18番はボギーとしたものの終わってみれば2位とは6打差。圧勝で史上最年少のメジャー3冠を成し遂げた。 「優勝したい気持ち、公式戦(メジャー)を取りたい気持ち、グランドスラムに近づけるんじゃないかという気持ち、(前週のゴルフ5レディスに続く)2週連続を達成したい気持ち……すごくいろんな感情があって、つらかったです。これが公式戦の重みなのかと思いながらのラウンドでした」(LPGA MEMBER GUIDE2010より)。諸見里はそう心中を吐露した。
6打差の2位に入ったのはこの日ベストスコアタイの69をマークした全だった。有村は苦しみながらも72にまとめて3位グループで終えた。横峯も粘って10位に順位を上げた。諸見里を脅かすことはできなかったが“4強”がそれぞれ存在感を示した大会となった。
プロフィル
諸見里しのぶ(もろみざと・しのぶ)1986~沖縄県出身。9歳でゴルフを始め、中学2年時に日本ジュニア(12~14歳の部)で優勝。おかやま山陽高校3年時の2004年には日本女子オープン5位でローアマ獲得、翌05年には日本女子アマを制した。05年にプロ入りし、同年賞金シードを獲得。06年には米女子ツアーにも参戦した。通算9勝(2016年終了時)。
第42回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 諸見里 しのぶ | 282 | = 72 67 70 73 |
2 | 全 美貞 | 288 | = 76 70 73 69 |
3 T | 有村 智恵 マリア・イイダ 馬場 ゆかり |
289 | = 70 73 74 72 = 72 70 72 75 = 71 71 69 78 |
6 T | 森田 理香子 ニッキー・キャンベル 古閑 美保 菊地 絵理香 |
291 | = 76 75 71 69 = 77 69 74 71 = 78 72 70 71 = 75 71 72 73 |
10 T | 横峯 さくら イナリ 上原 彩子 |
292 | = 72 72 76 72 = 72 73 73 74 = 68 73 74 77 |