優勝カップを掲げる辛炫周（写真提供：日本女子プロゴルフ協会）

2年前の悔しさを晴らし、辛炫周が公式戦初優勝

　片山津ＧＣ（石川県）は90ホールを有する国内屈指の規模を誇っている。中でも佐藤儀一設計で1959（昭和34）年に18ホールがオープンした白山コースは名コースとして誉れ高い。この白山コースで日本女子プロが初めて開催されたのは2008（平成20）年のことだった。
　この年は米女子ツアー参戦中の宮里藍や上田桃子、さらには全英女子オープンでメジャー初優勝を飾ったばかりの申ジエも加わり、豪華な顔ぶれとなった。初日、首位に立ったのは韓国の辛炫周。飛距離は出ないが正確なショットが持ち味の辛はティーショットを1度もラフに入れることなく5アンダーの67をマークした。1打差2位には上田桃子がつけ、さらに1打差の3位は原江里菜。申は72で10位、宮里は74で30位発進となった。
　2日目は白山コースが選手たちの前に立ちはだかり、60台をマークした選手はゼロ。その中で辛は71にまとめて首位を守った。3打差の2位に浮上したのはリエスド。申がこの日ベストスコアタイの70で回って4打差の3位に上がってきた。
　穏やかな好天となった3日目、辛が68と順調にスコアを伸ばす。通算10アンダーは2位の申に4打差をつけての首位だ。この日ベストスコアの67をマークした横峯さくらが5打差の3位に浮上した。4位の上田は9打差。優勝争いは辛、申、横峯の最終日最終組3人にほぼ絞られた。「ジエやさくらちゃんのことは考えないで自分のプレーを考えたいと思います」（ＬＰＧＡ　ＭＥＭＢＥＲ　ＧＵＩＤＥ2009より）と語ったのは首位の辛。4年前に日本ツアーに参戦してからここまで3勝を挙げている辛は日本女子プロでも過去3度の出場で6位、2位、3位と安定して上位に入っている。悔いが残るのは2年前、2006年の2位だ。最終日、宮里と最終組で優勝を争っていた辛は2打差2位で迎えた9番パー3で2打目を寄せた後、なぜかボールをマークせずに拾い上げてしまった。1打罰を受けてこのホールはボギー。「自分でも分からない。言葉では説明できないくらい悔しいです」（ＬＰＧＡ　ＭＥＭＢＥＲ　ＧＵＩＤＥ2007より）。ぼう然と立ち尽くした苦い記憶がある。
　最終日は1万5458人の大ギャラリーが詰めかけ、4日間合計では大会新の3万6352人を記録した。申が1、2番で連続バーディーを奪ってみせるが、以降は難コースが3人を苦しめ、ジリジリとスコアを落としていく。一度は差をつけられていた横峯が14番で初バーディーを奪うと、15番でもバーディーパットを沈めて復活。18番を迎えた時点で辛と申が5アンダー、横峯が4アンダーの混戦となっていた。
　18番は431ヤードとたっぷり距離のあるパー4。辛が「私の飛距離では2オンできない」（スポーツニッポン新聞より）と音をあげるほどのタフなホールである。
　申はティーショットをバンカーに入れ、2打目はアゴに当たって出ただけ。3打目でもグリーンを捕えられずにボギーとした。辛の2打目は届かずグリーン手前のラフ。首位2人が苦しむ中、横峯1人が2オンに成功した。だが、ここでリカバリー率1位になったこともある辛の小技が冴えた。重圧の中、3打目を20ｃｍほどに寄せたのだ。パーは確実。入れるしかない状況になった横峯のバーディーパットはラインに乗っていたがカップのわずか10ｃｍほど手前で止まった。横峯は思わず天を仰いだ。
　辛のウイニングパットはこの日の77打目。バーディーがひとつもない苦しみ抜いたラウンドだったが、しのぎ切った。2年前の悔しさも晴らしてつかんだ公式戦初優勝。「最初は公式戦の大きさ、イメージが分からなかったけど、優勝してみたら違います。本当にうれしい」（ＬＰＧＡ　ＭＥＭＢＥＲ　ＧＵＩＤＥ2009より）と最高の笑顔を見せた。

プロフィル

辛炫周（シン・ヒョンジュ）1980～
韓国出身。13歳でゴルフを始め、大学1年時の2000年にはアマチュアながらプロのトーナメントで優勝している。同年プロ転向し、05年から日本ツアーに参戦。8月のヨネックスレディスで日本初勝利を挙げた。14年まで日本でプレーし、通算6勝をマークした。公式戦は08年日本女子プロの1勝。

第41回日本女子プロゴルフ選手権成績