第39回日本女子プロゴルフ選手権(2006年)
2015.03.16
トロフィーを掲げる宮里藍(日本女子プロゴルフ協会提供)
稀代のヒロインが打ち立てた最年少記録
今季の女子ツアーは37試合が予定され、賞金総額は歴代最高の33億3300万円にものぼる。21世紀に入って最も試合数が少なかった2003(平成15)年と比較すると7試合増えて賞金総額は実に約1.8倍。右肩上がりの成長に陰りは見えない。この成長曲線の起爆剤となったのは宮里藍の出現であることに異論を唱える者はいないだろう。03年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンを高校3年生にして制してプロ転向。翌04年には5勝を挙げて絶対女王に君臨していた不動裕理と激しく賞金女王を争い、ヒロインの座を確固たるものにした。
その宮里が米国に渡ったのは06年のことだった。
ルーキーイヤーは優勝にこそ届かなかったが全米女子プロでは首位タイで最終日を迎えて3位に入るなど、すでに日本で12勝を挙げている実力を垣間見せていた。
宮里は8月末まで米女子ツアーでプレーして帰国。9月7日開幕の日本女子プロは帰国第1戦だった。
初日、会場である北海道のニドムクラシック・ニスパコース(6526ヤード、パー72)は雨に煙っていた。一時雨脚が強まって中断。宮里の組は1時間以上スタートが遅れた。
同伴競技者は前年大会優勝者の不動裕理と、この年賞金ランキング1位を独走していた大山志保。スタートの10番ティーグラウンド周辺には数多くのテレビカメラとスチールカメラが待ち構えていた。それほど、米国でもまれてきた宮里がどんなプレーを見せてくれるのかに注目が集まっていたのだ。
初日は17ホールを終えた時点で日没サスペンデッドとなった。宮里は4バーディー、1ボギーの3アンダー。すでにホールアウトしていた山口千春が5アンダーで暫定首位に立っていた。
2日目は午前6時30分からに第1ラウンドの残り1ホールを消化した。ここは3パットのボギーにしてしまったが、3時間ほどの休憩をはさんでスタートした第2ラウンドでは3連続バーディーを奪うなど68をマークして通算6アンダー。1ホールを残して日没サスペンデッドとなった肥後かおりと並んで暫定首位に立った。
3日目、宮里のショットが乱れた。2番ではティーショットを左の林に曲げてダブルボギーを叩くなど17番までに3つスコアを落としていた。それでも最終18番はカラーからの6mをパターでねじ込んでバーディー。通算4アンダーで1打差の単独首位となった。
そのころ、千葉県で開催されていた男子のサントリーオープンでは兄の優作が首位タイで最終日を迎えることになっていた。スポーツニッポン新聞は「きょうはバタバタいきそうな中、粘って最後にバーディーが来た。あすも気持ちを切り替えていきたい。お兄ちゃんも思いのほか、粘ってますね。こういうチャンスはめったにないので、今回はお兄ちゃんにも頑張ってもらいたい」という宮里のコメントを伝えている。
風が強まり、雨も混じった最終日は我慢比べの展開となった。各選手がスコアをずるずると落とす中、宮里も3番でボギーが先行した。それでも、4番ですぐに6mのバーディーパットを決め、続く5番では8mを入れて連続バーディー。混戦から頭ひとつ抜け出した。その後はスキを見せないプレーを続け、10番でもバーディーを加える。最終18番でウイニングパットを沈めてガッツポーズ。アンダーパーで踏みとどまったのが2人だけという難コンディションにもかかわらず終わってみればボギーは2番のひとつだけだった。
3度目の出場で大会初制覇。21歳83日での優勝は樋口久子が第1回大会で記録していた22歳279日の最年少優勝記録を実に38年ぶりに更新する快挙だった(※2014年に鈴木愛が20歳128日で優勝し、宮里の記録を更新)。宮里は前年、日本女子オープンでも樋口の最年少優勝記録を更新しており、最も歴史のある両大会で名を刻むことになった。優作は残念ながら大きく崩れて史上初の兄妹同時優勝はならなかったが、それを補って余りある存在感を見せつけた形だった。
宮里は翌年の大会公式プログラムでのインタビューで「私は(日本女子プロ)選手権などのメジャー大会には、“勝つための準備を、どの選手にも負けないくらいやってきたんだ”という自信を持って挑んでいます。そういう強い気持ちが上手い具合にプレーに反映されて、良い結果につながったのではないでしょうか」と振り返っている。周到な準備とそれを結果に反映させることができる実力。勝つべくして勝った大会だった。
プロフィル
宮里藍(みやざと・あい)1985~沖縄県出身。父・優さんの指導のもと、2人の兄とともに腕を磨いた。東北高校3年時の2003年に日本女子アマと日本ジュニアを制し、同年10月には18歳101日という当時のツアー最年少記録でミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンに優勝した。05年には北田瑠衣とのペアで女子ワールドカップ制覇。06年からは米女子ツアーを主戦場にしている。国内通算15勝、米女子ツアー通算9勝。
第39回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 宮里 藍 | 282 | = 70 68 74 70 |
2 | 辛 炫周 | 285 | = 70 72 71 72 |
3 | ウェイ ユンジェ | 289 | = 74 70 74 71 |
4 T | 上田 桃子 ジュリー 呂 全 美貞 |
290 | = 75 72 76 67 = 78 68 72 72 = 72 70 71 77 |
7 T | 大山 志保 前田 久仁子 諸見里 しのぶ |
291 | = 71 72 75 73 = 73 74 71 73 = 76 72 70 73 |
10 T | 服部 道子 福嶋 晃子 肥後 かおり 川原 由維 |
292 | = 70 74 76 72 = 73 71 75 73 = 69 70 77 76 = 72 68 73 79 |