トロフィーを掲げる肥後かおり（提供日本女子プロゴルフ協会）

圧勝でつかんだ史上5人目の公式戦3冠

　2003（平15）年、女子ツアーは大きな転換点を迎えた。当時高校3年生だった宮里藍の優勝である。ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンに勝ったのが9月28日。翌週の日本女子オープンにアマチュアのまま出場したあと、10月7日にプロ宣言。この年に制定された“ツアープレーヤー以外の選手が優勝した場合、4週間以内に申請すればツアープレーヤー登録ができる”という新規定を行使してのプロ転向だった。女子高校生プロの誕生で女子ツアーへの注目度が一気に高まった。この年こそプロとして出場した3試合では結果を残せなかったが、翌04年は開幕戦でいきなり優勝と実力を発揮。9月の日本女子プロを迎えた時点で3勝を挙げ、賞金ランキングは不動裕理に次ぐ2位につけていた。
　太平洋クラブ＆アソシエイツ益子コース（6537ヤード、パー72）で行われたこの年の大会は宮里にとって初めての日本女子プロ。大きな注目を集めていた19歳のヒロインは初日、5オーバーの77で53位と出遅れ「いつもの緊張感がなくて…何度も集中しようとしたけどできなかった」（スポーツニッポンより）と反省。初体験の連戦に次ぐ連戦で心身ともに消耗していたようだ。
　その宮里は2日目、パープレーの72にまとめて22位にまで盛り返した。2日目を終えて首位は3アンダーのウェイ・ユンジェ。2位は1アンダーの表純子でアンダーパーはこの2人だけとなった。
　3日目、首位に立っていたウェイが76と崩れて大きく後退。代わって首位に出たのは通算2アンダーの表と肥後かおりだった。5位で3日目を迎えた肥後は4バーディー、1ボギーの69をマーク。「今週はパットがいい。きょうはショートパットがノーミスです」（スポーツニッポンより）と顔をほころばせた。すでに日本女子オープンとＬＰＧＡツアーチャンピオンシップの公式戦タイトルを手にしていた肥後。史上5人目の公式戦3冠に王手をかけた。
　表はこの時、まだ優勝経験がなかった。何度もチャンスはありながら、その都度惜敗。2位は実に7試合を数えていた。
　1打差の3位は歴代優勝者の福嶋晃子とこの日ベストスコアの66を叩き出した藤島妃呂子。通算1オーバーの5位に不動とウェイがつけた。宮里は大きくスコアを崩していたが16番パー5でイーグル、18番でバーディーを奪って逆襲。それでも首位とは8打差の19位にとどまり、優勝は絶望的になった。
　晴天微風の好コンディションとなった最終日、1番パー5をボギーとしてしまった肥後だったが2番でカラーから10メートルの距離を沈めてバーディー。これで波に乗った。5番で2個目のバーディーを奪うと、9番からは4連続バーディー。スコアを伸ばせない表らを一気に突き放して独走態勢を築いていった。
　勝負の行方を決定的にしたのは17番だ。バンカーからの3打目がカップインしてバーディー。「きょうは私の日なんだ」（スポーツニッポンより）と優勝を確信した。
　終わってみれば2位に5打差の圧勝で、大迫たつ子、涂阿玉、森口祐子、塩谷育代に続く5人目の公式戦3冠を達成した。この優勝が通算17勝目だが、前年はヒジやヒザの故障に加えて虫垂炎を患うなど満身創痍の状態で優勝から遠ざかっていた。2年ぶりの優勝がこの大舞台でしかも偉業まで達成。「ホント、夢じゃないかな」（スポーツニッポンより）と喜びをかみしめた。
　8度目の2位に終わった表は「肥後さんがあんないいプレーをしたのでしようがないです」（スポーツニッポンより）とサバサバした表情。翌年、表は初優勝をつかみとり、シルバーコレクターを返上した。
　3位は福嶋。そして3日目まで思うようなプレーができなかった宮里が最終日に5バーディー、1ボギーの68と復調し、通算1オーバーで不動と並んで4位に食い込んだ。

プロフィル

肥後かおり（ひご・かおり）1969～
鹿児島県出身。鹿児島西高校卒業後、静岡県で研修生となる。1989年にプロテスト合格。クラブを握ってわずか2年あまりでの快挙だった。1992年の安比高原レディースで初優勝を飾ったのを皮切りに通算17勝を挙げた。公式戦は2000年日本女子オープン、2004年日本女子プロ、1999、2001年ＬＰＧＡツアーチャンピオンシップ（1999年の名称はＬＰＧＡ明治乳業カップ）の4勝。

第37回日本女子プロゴルフ選手権成績