第34回日本女子プロゴルフ選手権(2001年)
2016.10.17
優勝カップを掲げる日吉久美子(日本女子プロゴルフ協会提供)
最終ホールの大逆転で日吉が2度目の優勝
21世紀最初の日本女子プロはジーン・サラゼン監修のロペ倶楽部(栃木県、6523ヤード、パー72)で行われた。米女子ツアー参戦中の小林浩美や福嶋晃子が出場。前年、女子ツアー初の年間1億円突破を果たした不動裕理や、この年、不動と賞金ランキング1位を激しく争っていた天沼知恵子らが優勝候補と目されていた。微風で薄曇りの好コンディションとなった初日、ツアー4勝を挙げている井上陽子が5アンダー、67で首位に立った。2打差の2位グループは原田香里、東尾理子、高橋美保子の3人。不動と天沼は3打差の5位につけた。米女子ツアー組は福嶋がイーブンパーの28位、小林浩美は1オーバーで41位とやや出遅れた。
2日目も井上が単独首位の座を守った。序盤で2つスコアを崩したが、5番以降は5バーディー、ボギーなしの69。通算8アンダーとした。前年は腰痛の影響などで賞金シード落ち。1996年に公式戦の明治乳業カップを制して獲得した5年シードで出場していたこの年もここまで賞金ランキング52位と苦戦していたが、復調気配を示した。
1打差の2位には前日5位の日吉久美子が浮上。賞金女王を争う不動、天沼と同組で回った日吉は「2人とはネームバリューが違うから。先手を取らないと、名前負けするので」(日刊スポーツ紙より)と1、2番で連続バーディーを奪ったラウンドを振り返った。とはいえ日吉自身、1994年の日本女子プロ覇者であり、この時点で通算5勝の実力者。若い2人に勢いは譲っても名前負けする要素はさほどなかった。
通算4アンダーの3位は不動と肥後かおり。通算3アンダーの5位には福嶋ら4人がつけた。
気温が27度まで上昇し、夏が戻ってきたかのような3日目は2位につけていた日吉が14番まで4バーディー、ボギーなしと完ぺきなプレーをして混戦から抜け出していた。しかし、15番で3パットのボギーを叩いてリズムを崩し、17番ボギーのあと、18番パー4では2打目を池に入れてダブルボギーと急降下した。それでも“貯金”が効いて通算7アンダーで単独首位に立った。「暑さがこたえた。我慢していたけど3パットが引き金になった。試合展開を面白くしてしまったかな」(スポーツニッポン紙より)と苦笑いした。
1打差の2位につけたのはともに69で回った福嶋と木村敏美。初優勝した1994年以来、7年連続で(日本か米国で)勝利を挙げてきた福嶋だが、前年4月の那須小川レディス以来1年半近く優勝から遠ざかっていた。「年に1回は勝ちたいですよ。日本でもアメリカでも、何でもいいから勝ちたい」(日刊スポーツ紙より)と勝利を渇望した。
2日目まで首位を守っていた井上は75と崩れて2打差の4位に後退。不動がさらに1打差の5位につけた。
最終日は時々雨が降る天候となった。日吉、福嶋、木村の最終組は一進一退の攻防となった。前半を終えて日吉が8アンダー、福嶋と木村が6アンダー。井上や不動はスコアを崩し、優勝争いはほぼ最終組の3人に絞られつつあった。
インに入って日吉が12、13番でボギーを叩く。福島が13番でバーディー。そして木村は14番をボギーとした。この時点で福嶋が7アンダーの単独首位、日吉が1打差、木村が2打差で追う展開となった。
日吉は15番でバーディーを奪って福嶋に追いつくが、17番でボギー。最終18番を迎えた時点で福嶋7アンダー、日吉6アンダー、木村5アンダーだった。
ロペ倶楽部の18番はグリーンへのルートが2つある個性的なホールだ。右側はティーグラウンドから陸続きのフェアウエーが左にカーブしながらグリーンまで伸びている。フェアウエー左サイドはグリーン手前まで広がる池。その中にある島にも縦60ヤード、幅45ヤードほどのフェアウエーがある。距離的には島を使った左ルートのほうが短い。多くの選手が左ルートを選択していた。
オナーの福嶋は3番アイアンを手にして島を狙った。前日までは2番アイアン。何とかスコアをまとめてはいたがずっと引っ掛かり気味だったショットに不安があり、より確実性を求めての3番アイアンの選択だった。しかし、不安が悪い方向に的中してしまう。引っ掛かったボールは島の左側の池に消えた。
日吉は3番ウッドで島のフェアウエーを捕え、そこから5番アイアンでグリーンに乗せた。福嶋は4オンとなり、8メートルのボギーパットも入らずに痛恨のダブルボギーとなった。木村はパー。日吉が6メートルを確実に2パットで収めて7年ぶり2度目の女子プロ日本一の座に就いた。
「いつもと違う方向へ球が出ていた。スコアを落とさないように必死だったけど、最後はいっぱいでした」(スポーツニッポン紙より)と福嶋。彼女にとって魔の18番ホールとなってしまった。
日吉は「まるでボクシングのライト級とヘビー級の戦いでした」(日刊スポーツ紙より)と表現した。それくらい、福嶋との飛距離の差は歴然としていた。それでも、自分のできる最高のプレーだけを目指して戦い抜いた。
プロ20年目の節目に、土壇場の逆転劇でつかんだ2度目の栄冠。「重いですね。じっくりかみしめたい」(日刊スポーツ紙より)。37歳のベテランが眼鏡の奥の目を細めた。
プロフィル
日吉久美子(ひよし・くみこ)1964~静岡県出身。中学卒業後、当時朝霧ジャンボリーGCに所属していた二瓶綾子のもとで修業。3年後の1982年に18歳でプロテスト合格を果たした。90年に賞金ランキング38位で初シード入り。92年の五洋建設・KTVレディースでツアー初優勝を飾った。94年と01年には日本女子プロ優勝。通算6勝を挙げている。
第34回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 日吉 久美子 | 282 | = 70 67 72 73 |
2 T | 福嶋 晃子 木村 敏美 |
283 | = 72 69 69 73 = 73 68 69 73 |
4 T | 高 又順 足立 香澄 藤井 かすみ |
285 | = 75 70 72 68 = 72 70 74 69 = 73 71 71 70 |
7 T | 肥後 かおり 不動 裕理 |
286 | = 70 70 73 73 = 70 70 72 74 |
9 T | 大場 美智恵 天沼 知恵子 高橋 美保子 原田 香里 |
287 | = 74 73 72 68 = 70 75 71 71 = 69 72 72 74 = 69 73 71 74 |