トロフィーを持つ高村亜紀（提供日本女子プロゴルフ協会）

大会史上最多、5人のプレーオフを制した高村亜紀

　西暦2000（平成12）年、ミレニアムイヤーと呼ばれたこの年の日本女子プロは大会史上まれに見る大混戦となった。
　会場は福島県のリベラルヒルズＧＣ（6409ヤード、パー72）。日本女子プロゴルフ協会副会長の岡本綾子が2年ぶりにセッティングを担当した。美浦ＧＣ（茨城県）で行われた2年前はフェアウエーを絞ってラフを伸ばしたセッティングで優勝スコアが23年ぶりのオーバーパーとなる2オーバー。あまりの厳しさに「アヤコの罠」と形容された。この年もそれに劣らぬ厳しいセッティングが施され、樋口久子日本女子プロゴルフ協会会長は「優勝スコアはイーブンパー。プロ日本一を競うのにふさわしい」（日刊スポーツより）と話した。
　優勝候補に挙げられていたのは前年のＬＰＧＡ明治乳業カップ、この年の日本女子オープンと公式戦連勝中の肥後かおりや初の賞金女王に向けて賞金ランキング１位を独走していた不動裕理ら。米女子ツアーを主戦場にしていた小林浩美や福嶋晃子も帰国して参戦していた。そんな中、初日首位に立ったのは天沼知恵子、表純子、金沢鈴華の3人。3アンダー、69の好スコアをマークした。
　2日目はアンダーパーで回った選手が前日の10人から4人に減った。60台はゼロ。この日ベストスコアの70をマークした高村亜紀が通算3アンダーで単独首位に立った。2位は2アンダーの天沼知恵子。通算アンダーパーはこの2人だけになった。
　この難セッティングで素晴らしいゴルフを見せた選手がいた。55歳の岡田美智子だ。2バーディー、2ボギーの72で回り、初日の51位から16位に急浮上。自らが更新し続けていたツアー最年長予選通過記録をまたも塗り替えた。
　3日目も穏やかな天候とは裏腹に選手はスコアメークに苦労する。首位の高村はじっとパーを重ね13番でボギーが先行するが16番で初バーディーを奪って通算3アンダーのスコアと首位を守った。2位につけていた天沼はスコアを1つ落とすが順位は死守。通算イーブンパーの3位には69を叩き出した中野晶が浮上した。
　すでに日本女子プロと日本女子オープンのタイトルを手にしている高村は「普段着のプレーを心掛けたい」（日刊スポーツより）と闘志を内に秘め、当時ツアー未勝利だった天沼は「今まで応援してきてくれた人たちのためにも（勝って）恩返ししたい」（スポーツニッポンより）と意欲を示した。
　最終日、アウトは我慢のゴルフで首位を守り、9番で初バーディーを奪った高村だったがインに入ってスコアを崩した。11、15番でボギー。それでも辛うじて首位を守っていたが17番で3つ目のボギーを叩いてついに通算1アンダーの2位グループに飲み込まれた。同じ最終組を回る天沼と中野は17番を終えて通算イーブンパーと一歩遅れていたが、ともに18番パー5でバーディーを奪って意地を見せる。高村は3打目をグリーン奥のラフに外すピンチだったが何とか寄せてパーセーブ。勝負の行方は最終組の高村、天沼、中野に加え米山みどり、小野香子と実に5人によるプレーオフに持ち越された。これは公式戦におけるプレーオフ最多人数記録。歴史的な大混戦となった。
　舞台は516ヤードの18番パー5。全員が2打目をアイアンで刻んだ。3打目、最もピンに寄せたのは高村だった。残り85ヤードから1.5メートルにピタリとつけた。ほかの4人はそれほどピンに寄せられなかった。距離の長いバーディーへの挑戦はことごとく外れていく。高村に次いで近かった小野も6メートルを決められなかった。
　入れれば5年ぶり2度目の大会制覇が待っている1.5メートルのバーディーパット。高村は「打とう、打てば入る」と自分を信じてストロークした。
　激闘を制した高村は「やっと勝てた」（日刊スポーツより）と安堵と喜びが混じった笑みを浮かべた。1995年に23歳で初優勝を飾って以来、4年続けて優勝を記録していたが前年は賞金ランキングこそ9位ながら未勝利。この年も勝てそうで勝てない試合が続いていただけに久し振りの優勝の味は格別だった。
公式戦3連勝がかかっていた肥後は優勝争いに加われず7オーバーの23位で終了。不動は2オーバーの6位、米女子ツアー組は小林32位、福嶋予選落ちと不振だった。

プロフィル

高村亜紀（たかむら・あき）1972～
熊本県出身。熊本中央女子高校時代に全国高校選手権連覇を達成。1992年にプロ入りし、翌年賞金シードを獲得した。初優勝は1995年のミズノレディース。同年の日本女子プロで公式戦初優勝を飾った。通算10勝。公式戦は日本女子プロ2勝（1995、2000年）、日本女子オープン1勝（1996年）の計3勝。

第33回日本女子プロゴルフ選手権成績