優勝カップを持つ高村亜紀（写真提供：日本女子プロゴルフ協会）

同期対決を制して高村亜紀が公式戦初優勝

　プロゴルファーは基本的に同じプロテストで合格した者が“同期”という扱いになる。日本女子プロゴルフ協会の場合、今年（2017年）のプロテストに合格した勝みなみらは89期生となる。50年の歴史で89期という理由は、かつて年2回プロテストが行われていたことなどにある。
　高村亜紀と福嶋晃子は高村が1学年上であるがプロ同期である。ジュニア時代から度々優勝争いを演じたライバルであり、仲のいい間柄でもあった。プロテスト合格から3年後、1995（平成7）年の日本女子プロで2人は“女子プロ日本一”の称号をかけて激突した。
　大会会場は福岡県のザ・クラシックＧＣ（6463ヤード、パー72）。当時、高村は23歳、福島は22歳だった。
　福嶋は前年、初勝利を挙げ、この年はすでに2勝。若手の旗手として大きな注目を集めていた。高村は1カ月前のミズノレディースで初優勝を飾ったばかり。勢いがあった。
　風が強かった初日、アンダーパーは2人しか出なかった。そのうちの1人が福嶋。1アンダー、71で元載淑と首位に並んだ。高村は4バーディーを奪ったがボギーを6個叩き、2オーバー、74で21位となった。
　2日目、地元・福岡出身のベテラン・高須愛子が67をマークし、通算4アンダーで単独首位に立つ。高村は2アンダー、70で回り、4打差の3位に浮上。73だった福嶋と並んだ。
　3日目、高村は5バーディー、2ボギーの69で回り、通算3アンダーで単独首位に躍り出た。1打差の2位は中野晶、2打差の3位にはニコル・ローウィンがつけた。福嶋はパープレーの72にとどまり3打差の4位。十分に逆転が狙える位置だ。
　「絶対に優勝したい。アッコちゃん（福嶋）と競り合って自分が勝てたら最高」（報知新聞より）と高村は同期との優勝争いを熱望。福嶋も「（高村）亜紀ちゃんには頑張ってほしいし、私だって頑張る。苦手の最初の3ホールをパーで切り抜けられれば私にもチャンスはある」（報知新聞より）と熱い言葉を口にした。福嶋には大会最年少優勝の記録もかかっていた。
　1万人近い観客が訪れた最終日、1組前で回る福嶋は過去3日間で4ボギーを叩いていた最初の3ホールをすべてパーで切り抜けた。そして6、9番でバーディー。アウトを2アンダーの34でターンした。高村も安定したプレーでアウトは1バーディー、ボギーなしの35。最終組の中野、ローウィンはスコアを落とした。
　10番で高村が初ボギーを叩く。対して福嶋は12番でバーディー。この瞬間、2人が首位に並んだ。望んでいた展開となったわけだ。
　高村も負けてはいない。12番でバーディーを奪い返して再び単独首位に。続く13番では10ｍ以上の長いバーディーパットをねじ込んでリードを広げた。一方の福嶋は3日目まですべてバーディーを奪っていたパー5の15番で痛恨のボギー。流れは決した。
　18番グリーンでウイニングパットを沈めると、緊張していた高村の顔にようやく笑みが広がった。“同期対決”を制した23歳の若き新女王は「ホントに勝ったのかな、という感じです。まさかこんなに早くメジャータイトルを取れるとは」（日刊スポーツ紙より）と半信半疑の様子。そして「今までプレッシャーに弱いと思っていたけど、この優勝で少しだけ自信がつきました」（日刊スポーツ紙より）と控えめに話した。
　2位に終わった福嶋は「残念でした。でも精一杯やりました」（報知新聞より）とサバサバした表情。「今回は自分で精神面のコントロールをしてみようと思い、そういう面では収穫がありました」（報知新聞より）と手応えも口にしていた。

プロフィル

高村亜紀（たかむら・あき）1972～
熊本県出身。熊本中央女子高校時代に全国高校選手権連覇を達成。1992年にプロ入りし、翌年賞金シードを獲得した。初優勝は1995年のミズノレディース。同年の日本女子プロで公式戦初優勝を飾った。通算10勝。公式戦は日本女子プロ2勝（1995、2000年）、日本女子オープン1勝（1996年）の計3勝。

第28回日本女子プロゴルフ選手権成績