大会初優勝を飾った具玉姫（写真提供：日本女子プロゴルフ協会）

4打差逆転で具玉姫が大会初制覇

　前年大会で奇跡的な復活優勝を飾った大迫たつ子、6月に米ツアー17勝目を挙げた岡本綾子、超大物ルーキーの服部道子、さらには米ツアーの実力者であるパティ・リゾも参戦。1992（平成4）年の日本女子プロは豪華な顔触れとなった。
　会場は千葉県の平川ＣＣ（6505ヤード、パー72）。9月10日の初日、4アンダー、68をマークして首位に並んだのは前年優勝争いを繰り広げた大迫と岡本だった。前年、股関節の故障に苦しみながらも3年ぶりの優勝を果たした大迫は、この年も状態が万全ではなく、本来の力を出せないでいた。首位に立つのはシーズン初。それだけに「きょうは本当に出来過ぎ」（スポーツニッポン紙より）と謙そんした。岡本は前週のフジサンケイレディスを制しており好調。「先週のパット勝負と違い、今週はショットが勝負。きょうのスタート前のプランはピンに対して手前々々から攻めることだった。だからキャリーでグリーンエッジに落ちるセッティングをした」（スポーツニッポン紙より）とグリーンを固く、速く仕上げた公式戦用の戦略で臨んだことを口にした。
　厳しい残暑で気温が30度を超えた2日目、岡本は手堅く71にまとめ、通算5アンダーで首位を守った。一方で大迫は79と大苦戦。18位にまで後退した。岡本とともに首位に立ったのは柴田規久子。リゾがこの日ベストスコアの68をマークし、1打差3位に順位を上げた。
　3日目、存在感を示したのは大会初出場の服部だ。2バーディー、1ボギーの71にまとめ、通算2アンダーの3位に浮上した。アマチュア時代には日本女子アマ、全米女子アマ、カナダ女子アマを相次いで制覇、全米女子オープンではローアマを獲得している。大注目のルーキーは前年のプロテスト合格後、何度か優勝争いには加わっているが勝利の美酒はまだ味わっていない。最終日最終組を回るのは3度目。「三度目の正直です。明日は楽しみにしていてください」（日刊スポーツ紙より）と大物感あふれるコメントを口にした。
　岡本は76とスコアを崩して通算1アンダーの4位に後退。首位は通算3アンダーのリゾ、柴田となった。
　最終日、リゾ、柴田、服部の最終組は前半から苦しんだ。リゾはアウト40で柴田は39とスコアを崩す。服部は1番でバーディーを奪うなど、一時は首位に立つが7、8番で3パットのボギーを叩く。代わって首位に躍り出たのは4打差8位にいた具玉姫だった。2、3番で連続バーディー、9番でもバーディーを奪って苦戦する上位陣を抜き去った。具は14、15番でも連続バーディーを決めて後続を突き離す。17番でこの日初めてのボギーを叩くが優位は動かなかった。この日ベストスコアタイの68で通算3アンダー。後半粘った服部とこの日パープレーの岡本に2打差をつけて大会初優勝を果たした。
　具は1986（昭和61）年から米ツアーを主戦場としていたが、この年限りで撤退し、日本に軸足を戻す決断をしていた。その矢先のうれしいビッグタイトル獲得だった。日本ツアー通算8勝目、公式戦は前年のＪＬＰＧＡ明治乳業カップに続く2冠目だ。「きょうはショットが良かったので自分のゴルフをすれば何とかなると思っていた。前から欲しかったタイトルなので勝ててうれしい」（スポーツニッポン紙より）。36歳のベテランが穏やかな笑みを浮かべた。
　初優勝を逃した服部は「グリーンが速いという意識が強すぎて、しっかりとストロークできなかった」（日刊スポーツ紙より）と3度の3パットを悔やむ。岡本は「ショットとパットがかみあわなかった。でも自分としては精いっぱいやったつもり。具玉姫さんにはおめでとうと言いたい」（スポーツニッポン紙より）とアメリカで共に戦ってきた具を讃えた。

プロフィル

具玉姫（く・おっき）1956～2013
韓国出身。高校卒業後にソウル市内のゴルフ練習場に就職。その後、南ソウルＣＣで韓長相に師事して腕を磨き、1978年に韓国女子プロゴルフ協会の1期生となった。日本のプロテストには83年に合格。通算23勝を挙げた。米女子ツアーでもプレーし、88年に韓国人選手初めての優勝を飾っている。2013年7月、急性心不全により56歳で逝去。

第25回日本女子プロゴルフ選手権成績