第27回日本プロゴルフマッチプレー選手権(2001年)
2021.11.09
初出場で優勝したディーン・ウィルソン(提供JGTO)
日系4世ディーン・ウィルソンが初の海外勢決勝を制する
8月も下旬になると北海道はグッと冷え込む日が出てくる。27回目を迎えた日本プロマッチプレー初日が行われた2001(平成13)年8月30日、大会の記録には雨、14度と記されている。そんな中、苫小牧市に位置するニドムクラシックCニスパC(6957ヤード、パー72)では熱い戦いが繰り広げられていた。1回戦のハイライトといえるのが1996年覇者の芹澤信雄と2年連続準優勝中の谷口徹の戦いだった。16番を終えて芹澤が2アップ。17番を分けても41歳のベテランが勝つという展開だった。
しかも17番パー3は芹澤が1オンしたのに対して谷口はバンカー。芹澤の勝利は決定的だと思われた。
ところが、何が起こるか分からないのがゴルフ。低く飛び出した谷口のバンカーショットがピンを直撃して、そのままカップインしてしまったのだ。
これは狙ったものではなく、いわゆるトップ気味のミスショットだった。だが、これが入ってしまうのは、当時「マッチの鬼」と言われ始めていた谷口の引きの強さだろう。
このホールを谷口が取ると、まだ優位だった芹澤は18番のティーショットを林に打ち込んでまさかのマッチイーブンとなってしまう。そして、延長4ホール目に谷口がバーディーを奪って粘り勝ち。この年の1月、WGC(世界ゴルフ選手権シリーズ)のアクセンチュアマッチプレーでビジェイ・シンやアーニー・エルスといった世界の強豪を次々に破って3位に入った谷口が底力を見せつけた一戦だった。
歴代チャンピオンでは芹澤のほか中嶋常幸、友利勝良、東聡が初戦敗退。前年賞金王で2週間前の全米プロで4位となった片山晋呉は米山剛に2-1で敗れた。
2回戦が行われた2日目は20度近くにまで気温が上がった。谷口は歴代チャンピオンの尾崎直道を下して8強に名乗りをあげた。5月の日本プロで日本2勝目を飾ったハワイ生まれの日系4世ディーン・ウィルソン、7月のアイフルカップで日本初優勝を手にした台湾の林根基ら海外勢4人もベスト8に進んだ。
準々決勝、準決勝が行われた3日目は晴れ。気温は25.1度となり、初日とは10度以上の気温差があった。
谷口は準々決勝で林に3-2で敗退。10番から3連続バーディーを決められる完敗だった。その林は準決勝でフィリピンのフランキー・ミノザを下して初出場ながら決勝へと駒を進めた。
準決勝のもう1試合はウィルソンが藤田寛之を4-3で圧倒。こちらも初出場で決勝進出だ。ここまで4マッチすべて15番までに勝負を決める危なげないゴルフを続けている。
米国のウィルソンと台湾の林。海外勢同士の決勝戦は大会史上初めてのこととなった。
その決勝は林が先手を奪う。18ホールを終えて2アップ。8バーディーを奪う、圧巻のプレーだった。
だが、約40分の昼食休憩後、19ホール目の1番でバーディーを決めて「1差」に迫ったウィルソンが徐々に流れをつかむ。28ホール目、32ホール目のパー5をきっちりバーディーとして逆転。一方で林はパッタリとバーディーパットを決められなくなっていた。
最後は35ホール目で林がボギーパットを外してギブアップ。ウィルソンが日本プロに続くビッグタイトルをつかみ取った。
(文責・宮井善一)
プロフィル
ディーン・ウィルソン1969年12月17日生まれ。ハワイ・オアフ島出身。母親が日本人で、自身も「ヒロシ」という日本名を持っている。米国・ブリガムヤング大学を出たあと、カナダや豪州、アジアを転戦。2000年から日本を主戦場として3年間プレーし、計6勝を挙げた。その後、米ツアーでプレーし、2006年に1勝している。