第23回日本プロゴルフマッチプレー選手権(1997年)
2021.09.06
大会最年少優勝を果たした丸山茂樹(写真提供/GGMG)
27歳丸山茂樹が大会最年少優勝
1990年代後半の男子ツアーは若手実力派が次々に台頭し、王者に君臨する尾崎将司に挑戦するという構図だった。後に賞金王となる伊澤利光、谷口徹、藤田寛之、片山晋呉、日本オープンチャンピオンとなる手嶋多一、深堀圭一郎、田中秀道、日本と名のつくタイトルで5勝を挙げた宮本勝昌らである。その世代の中心にいたのが丸山茂樹だ。学生時代から常に注目を集め、プロ入り後も2年目で早くも優勝と大物ぶりを発揮していた。
プロ6年目の1997(平成9)年、丸山は5月の日本プロで日本と名のつくタイトルを初めて手にする。6月にはよみうりオープンでシーズン2勝目。夏場は海外を転戦し、全英オープンでメジャー初のベスト10入りとなる10位と健闘すると、全米プロでは2日目途中で一時首位に並んでみせた。最終的には23位だったが世界でも戦える手応えをつかみ始めた時期だった。
9月4日開幕の日本プロマッチプレーは海外遠征からの帰国初戦。日本では約2カ月ぶりのトーナメントだった。
会場は北海道のニドムクラシックCニスパC(6941ヤード、パー72)である。初出場の3年前から4位、2位、3位とすべて準決勝以上に勝ち上がっている。コースともマッチプレーとも相性は悪くない。
18ホールマッチの1回戦、丸山の相手は2年ぶり2度目の出場となる溝口英二だった。
15番でバーディーを奪った時点で2アップとリードしたが溝口が16、17番をバーディーで取り返してマッチイーブン。そのまま延長へと入っていった。延長3ホール目、通算21ホール目で丸山がバーディーを決めて辛勝。帰国直後で体調が整わない状態だったが何とか勝ち切った。
前年覇者の芹澤信雄は宮瀬博文に3-2で敗退。歴代チャンピオンでは尾崎直道、東聡が1回戦を勝ち上がった。
大会2日目は18ホールマッチの2回戦と準々決勝が行われた。丸山の2回戦の相手は宮瀬博文。2学年後輩で、この年の6月に同じ北海道開催の札幌とうきゅうオープンで初優勝を飾ったばかり。勢いのある若手同士の激突だった。アウトは宮瀬が1アップで折り返したが、インに入って丸山が本領を発揮。10、11、14番をバーディーで取り、16番でOBを2発打った宮瀬がギブアップ。3-2で快勝した。
準々決勝は仲のいい深堀との対決。マッチイーブンから17、18番を連取して2アップで勝利を収めた。これで大会新記録となる4年連続の準決勝進出となった。
この日注目を集めたのは43歳の尾崎健夫だ。1984(昭和59)年に4位に入ったことはあるが、直近では出場4大会連続で初戦敗退とマッチプレーを苦手としていた。そんな尾崎健が2回戦で原田三夫、準々決勝で田中秀道を下して13年ぶりの準決勝進出を決めたのだ。準決勝の相手は丸山。「先手必勝しかない」と言葉に気合を込めた。
その準決勝からは36ホール勝負である。1番パー5で尾崎健がいきなりイーグルを奪って1アップ。自らの言葉通り、強烈な先制パンチだった。
だが、マッチプレー巧者の丸山は揺るがない。しっかりとバーディーを重ね、前半を終えて3アップ。後半もリズムを崩すことなくプレーを続け、4-3で尾崎健を下した。敗れた尾崎健は「マル(丸山)はアイアンが切れてた。メジャーで戦ってきたということだろう。調子うんぬんじゃなくてこれははっきり彼の実力だよ」(スポーツニッポンより)と勝者を讃えた。
もう一方の準決勝はピーター・テラベイネンと桑原将一という初出場同士の対戦だった。結果は5-4でテラベイネンに軍配が上がった。米国出身の41歳。欧州ツアーを主戦場にしていたが、特別推薦で出場した前年の日本オープンを制したことから戦いの場を日本に移した選手である。この年も春先に日本2勝目を挙げて実力は証明済み。丸山は「一番やりたくない相手」(日刊スポーツより)と警戒感をにじませた。
決勝は雨中の戦いとなった。気温は晴天だった大会初日から比べれば4度ほど下がり、日を追うごとに秋の気配が濃くなっていた。
前半、丸山は快調にプレーする。バーディー5個でボギーはなし。4アップと大きくリードを奪った。
だが、19ホール目の1番パー5をボギーで落として流れが変わる。反撃に転じたテラベイネンにグングン差を詰められる。27ホール目で追いつかれ、30ホール目の12番パー5ではイーグルを奪われて逆転された。
追う者と追われる者の立場が変ったとたんに気持ちに変調をきたすのはよくあること。テラベイネンの心も逆転したことで揺らいだのか、続く31ホール目パー3の1打目がまさかの池ポチャとなってしまった。
ここでマッチイーブンに戻した丸山は32ホール目の14番パー4で2打目を2mにつけてバーディー。再逆転だ。
これで落胆したのかテラベイネンは33、34ホール目でミスを重ねて丸山が4ホール連取。3-2で頂点に立った。
27歳での日本プロマッチプレー制覇は最年少記録。日本プロに続き日本タイトル連勝を果たした。
「うれしいなんてもんじゃない。(日本タイトルの中で)これが一番難しいと思っていたからね」(スポーツニッポンより)と声が弾む。本人は「一番難しい」とは言うものの、4回の出場で20マッチを戦い16勝4敗という抜群の成績である。勝率は実に8割。通算10マッチ以上プレーした選手の中では青木功の7割3分9厘(34勝12敗)を抑えて堂々の1位なのだ。大本命が勝つべくして勝った。そう表現しても過言ではないだろう。
(文責・宮井善一)
プロフィル
丸山茂樹(まるやま・しげき)1969(昭和44)年9月12日生まれ、千葉県出身。日本大学時代にアジア大会団体・個人金メダル、日本学生2勝など数多くのタイトルを獲得。1992年にプロ入りし、翌93年に初優勝を飾った。国内では通算10勝。2000年からは米ツアーでプレーして3勝を挙げた。02年には伊澤利光とのペアでワールドカップを制している。