第90回日本プロゴルフ選手権大会(2023年)
2023.08.21
優勝トロフィーを掲げる平田憲聖(写真提供:日本プロゴルフ協会)
平田憲聖が1973年以降最年少22歳246日で初優勝
日本最古のプロトーナメントも第90回の区切りを迎えた。期待の若手が最後まで白熱した戦いを演じる、記念大会にふさわしい展開になった。北海道・恵庭CC(7441ヤード、パー72)での開催。フェアウエーが狭く絞られ、足がすっぽり埋まるほどのラフが待ち構えるとともに、天候も北海道ならでは、とは行かず、連日30度を超える暑さの中でのプレーになった。
第1日、4アンダーで首位には石川遼、平田憲聖、B・ケネディ、黄重坤、池村寛世の5人が並んだ。
歴代覇者の石川はボギーなしの4バーディーで68。「100点の出来ではない。80点もあげられない。ロングゲームもショートアイアンも、思った通りのスイングができていなかった」と、辛口の自己評価。救ったのはショートゲームで「17番(パー5)は6を覚悟したところからの4、8番(パー3)は、限りなく4に近い3。もっと悪いスコアになったかもしれない中で、4アンダーは今日の自分の状態で出来るベストなスコア。明日も同じゴルフをしていたら、今日と同じスコアでプレーできる確率は低い」と気を引き締めた。
池村は「ドライバーでグリーンの近くまでいってしまえば、ラフが深くてもどうにかなる。刻んでラフより、ドライバーで飛ばしてラフに入れた方が戦えるというのが僕の考えです」と、4年前に使っていたドライバーを持ち込み、ほとんどのホールで使ったという。前年4位で「しっかりとマネジメントすれば、上位争いはできる」と、意欲を見せた。
第2日、」スコアを伸ばしたのが22歳の平田だった。3つスコアを伸ばし、通算7アンダーで首位に立った。2番(パー5)で残り219ヤードの第2打を4番アイアンで3mにつけるイーグルを奪った。4、6番でボギーにしたが、後半に入り、13、17、18番でバーディーとして69をマークした。「インの方がチャンスを作るホールがあるので、アウトでできるだけ耐え、後半しっかり伸ばしてと思っていました。プラン通りにプレー」と話している。
若手では、石坂友宏が通算4アンダーで4位の4位に浮上した。1パット9回としのぎ「シビアなパットが多かったですが、段違いの長い距離でも『お先パット』でパーが取れました」という。練習で器具に頼らず、感覚を重視したのがよかった」と振り返った。
第3日、平田が5バーディー、2ボギーの69と伸ばし、通算10アンダーで首位を守った。後半に入って10番でボギー後、11、12番連続バーディー、14番ではカラーからパターで直接入れ、15番も取った。「オーバーパーは打ちたくなかったので、集中してやろうと思いました。もったいないミスもいくつかありましたが、かなり耐えることができた」といい、単独首位での最終日に向け「1打でもリードがあるのは大きいと思います。伸ばし合いより、我慢しながらプレーするスタイルの方が好き。今週の難しいセッティングで生かせていると思います」と話した。
周囲を驚かせたのが、予選から出場した40歳、上井邦浩の浮上。1番から3連続バーディーでスタート、「7mぐらいの長いパットが入った」とショットの精度は今一つだったが、後半に入っても流れは切れず、14、15番連続バーディーなどスコアを伸ばして一時はトップタイ。7バーディー、2ボギーの67で回り、通算9アンダーで1打差2位につけた。
「途中でリーダ―ボードは見ましたが、順位はあまり意識せずにプレーしました」という。師匠の芹澤信雄がグリーンサイドで見守り、ホールアウトした上井と握手した。昨年の秋に左母指球腱鞘炎で欠場し、この年前半は特別保証制度により4試合に出場したが、既定の獲得賞金額に満たず、出場機会が限られた。日本プロに予選会で権利をつかんだ。最終日は、単独首位の22歳平田憲聖、3位の25歳金谷拓実と最終組。2000年から始まった予選会からの優勝者はいない。「勢いのある若手のプレーを見て勉強することはあると思うが、僕は僕のゴルフをするだけ」と話した。
その金谷は9バーディー、3ボギーの66で通算7アンダーに。第1日75をたたいて85位の出遅れを巻き返してきた。「初日はラフからセカンドショットを打たなければいけなかったのが原因。2日目からはティーショットが安定していました」という。6月の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップで完全優勝しており、日本タイトル連勝を目指す。
最終日は、大混戦になった。首位スタートの平田が前半3パット3つなど2つスコアを落とし、12番を終えた時点で10アンダーの上井が首位、1打差9アンダーに金谷、平田と追い上げてきた蟬川泰果、中島啓太の若手選手たちが並んだ。
平田は12番でバーディーを奪い、14番では左のカラーから15m以上を直接入れるバーディーでガッツポーズも出た。「このバーディーは大きな意味を持っていたんで」と振り返る。この時点ではまだ予断を許さない状況だったが、上井が15番でダブルボギーをたたいて脱落。金谷は16番でボギーをたたいて後退し、蟬川、中島の追い上げもそこまでだった。
結局平田は、5バーディー、4ボギーの71で回り、通算11アンダーで2位の金谷、蟬川に2打差をつけ、初日から首位を守る完全優勝で、初めての日本タイトルを手にした。5月のミズノ・オープンを制して出場権を得た全英オープンでは日本勢最下位で予選落ちの屈辱。帰国後すぐの試合だった。
「こんなに早く2勝目をメジャーの舞台で勝てるとは夢にも思っていなかったのでうれしい。(逆転されたときに)このまま負けるのは悔しい。絶対に伸ばして優勝しようという気持ちが強くなりました」という22歳246日での優勝は、1973年ツアー制施行後では最年少となった。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
平田憲聖(ひらた・けいせい)2000(平12)年11月26日生まれ、大阪府出身。7歳でゴルフを始め、大阪学院大高時代の2017年に関西アマに優勝。大阪学院大に進み、21年日本学生優勝。大学3年在学時にプロに転向した。プロ1年目の22年は賞金ランク58位でシード獲得。23年5月のミズノ・オープンでツアー初優勝した。ツアー通算2勝。
第90回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 平田 憲聖 | 277 | = 68 69 69 71 |
2 T | 蝉川 泰果 金谷 拓実 |
279 | = 70 71 70 68 = 75 68 66 70 |
4 | H・W・リュー | 280 | = 70 75 65 70 |
5 T | 石坂 友宏 石川 遼 中島 啓太 黄重坤(ハンジュンゴン) |
281 | = 69 71 74 67 = 68 73 71 69 = 71 72 68 70 = 68 71 71 71 |
9 T | 稲森 佑貴 上井 邦浩 |
282 | = 72 70 69 71 = 69 71 67 75 |