第26回日本プロゴルフマッチプレー選手権(2000年)
2021.10.25
日刊スポーツ紙面2000年9月4日付
横尾が再逆転で谷口下して初の日本タイトル
マッチプレーはストロークプレーのように自分のスコアをひたすら積み上げていく勝負ではなく、相手より1打でもいいスコアで上がろうとする1ホールずつの積み重ね。そこに駆け引きが生まれる。北海道・ニドムクラシックCニスパC(6958ヤード、パー72)で行われた大会の第1日1回戦(18ホール)、歴代優勝者のそんな勝負から始まった。
前年覇者の小山内護は300ヤードを超えてツアーNO.1の飛距離を持つ。対戦した1996年覇者の芹澤信雄は250ヤードそこそこで出場した32人中最も飛ばない選手。第2打を先に打つことが多くなる芹澤は「先にグリーンに乗せれば何とかなる」(日刊スポーツ紙)と、堅実なゴルフで相手にプレッシャーをかける作戦に徹した。対する小山内は生命線のドライバーショットに乱れがあった。「ロングホールは全部取られる」と想定していた芹澤が、1ダウンで迎えた15ホール目のパー5でバーディーを奪って追い着き、16、17番と3連続アップで一気に逆転勝利を飾った。グリーンを外したのは1ホールだった。
繰り上げ出場の河村雅之が、優勝候補筆頭の伊澤利光を破る金星を挙げた。12番まで2ダウンの劣勢から追いついて、エキストラへ。21ホール目をバーディーで分けた後の22ホール目で勝利した。スポーツ報知紙によると、負けると思ってホテルをチェックアウトし、午後早い飛行機便も予約していたといい「「伊澤さんは疲れていたみたいです。いい勝負をさせてもらいました」と話した。
第2日は2回戦(18ホール)。この時点で賞金ランク1位を走っていた佐藤信人が快調に飛ばした。桧垣繁正と対戦。2アップの4ホール目で桧垣が4メートルのチャンスにつけたが、10メートルのバーディーパットを先に沈めてこのホールも取り、序盤で流れをつかんで6-5で初めての準々決勝進出を決めた。「勝因はパターしかないです。いやなパーパットは残さず、全部OKをもらえた」と振り返った。
46歳のベテラン飯合肇が鈴木亨と激闘を展開。1ホールずつを取り合い、5ホールでバーディー分けをしてイーブンで迎えた16ホール目。グリーンを大きくオーバーして看板の後ろに打ち込んだ飯合は、救済措置を受けてピンまで20ヤードのアプローチを直接入れるチップインバーディー。1アップとし、残り2ホールを分けて1アップで振り切った。「あれは反則ですよ」という鈴木に、飯合は「いやあ、びっくりしたなあ。ラッキーに尽きる1アップだったね」と笑った。
第3日は準々決勝と準決勝(各18ホール)。佐藤、飯合を撃破したのが谷口徹だった。準々決勝の佐藤戦は5ホール目まで4アップも徐々に追いつかれて12番で1アップに。そこから1つずつ取り合い、17ホール目にバーディーを奪って2-1で振り切った。準決勝は室田淳を下して勝ち上がった飯合が相手。「ストロークプレーと違って、直接対決では負けたくない」という谷口は前半2アップで折り返し、13ホール目から3連続バーディーでアップし、5-3で一気に勝負を決めた。「2位は誰の記憶にも残らない。日本タイトルなので照準を合わせてきた」と、スポーツ報知紙は決勝進出での谷口の意気込みを伝えている。
もう一方の決勝進出者は、横尾要だった。準々決勝はスメイルに2アップで迎えた14番から2ホール連続でスメイルがギブアップし、4-3で勝ちあがった。準決勝は、バックウェルに7-6で大勝した芹澤が相手。10ホール目までに2アップのリードを許したが、11ホール目を取り、、13ホール目に芹澤が3パットして取り返してイーブンに戻した。「体力には自信がある」という横尾は終盤、17、18ホール目連続アップで芹澤を突き放し、2アップで決勝に進んだ。谷口との勝負に「先行されても焦らず、残り9ホールで勝負を決めたい」と日刊スポーツ紙が意気込みを伝えている。
最終日(36ホール)。午前の18ホールは横尾が流れに乗る。1つずつ取り合った後の7ホール目で谷口が木の後ろに打ちこんでボギーとして横尾が1アップ。10ホール目に80センチにつけ、14ホール目は谷口の3パット、18ホール目には谷口がバンカーに入れてそれぞれ取り、横尾が4アップで折り返した。
午後の18ホールまでの休憩中に、谷口は競技委員に「(横尾の)プレーが遅い」と指摘する一幕も。日刊スポーツ紙によると、これが耳に入った横尾は強風に加えて前日の雨でカジュアルウォーターの処置などもあり「この天候では仕方ない。自分で納得いくプレーをしたかった」と振り返っている。
午後は19ホール目をバーディーとした谷口が巻き返す。徐々に追いつき、25ホール目で横尾が1メートルのパーパットを外してイーブンに。26ホール目には谷口が1メートル弱につけ、8ホールで5アップしてついに逆転した。
しかし、横尾は直後の27ホール目で再び流れを引き戻す。18メートルのロングパットを沈めてイーブンに。29、30ホール目を取って突き放す。32ホール目に谷口が3パットしてほぼ勝負あり。33ホール目で谷口がバーディーを奪って1つ返したが、35ホール目に2-1で決着した。
「いろんな意味で今までで一番悔しい。頂点に立つというのはなかなか難しいことです」と、2年連続決勝で敗れた谷口。準決勝まで1ボギーしかたたいていなかったが、決勝では8ボギーと本来のゴルフができなかった。
初優勝の横尾。一時逆転された場面を振り返り「8ホールで5ダウンなら、この後の8ホールで5アップの可能性もある」と自分に言い聞かせたという。スロープレーを指摘された件については、午後からはボールまでは意識して急ぎ「時間を節約すればあとでゆっくり時間を使える」と切り替えた。大量リードから逆転されても「残り9ホールが本当の勝負」という読み通りの展開を冷静に戦い抜いた初の日本タイトルだった。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
横尾要(よこお・かなめ)1972年7月24日生まれ、東京都出身。10歳の時にハワイアンオープンの青木功の劇的イーグルをテレビで見てゴルフを本格的に始めた。東京学館浦安高から日大に進学。93年日本学生を制した。95年にプロ入り。98年アコムインターナショナルでツアー初優勝した。2001年から米ツアーに挑戦している。レギュラーツアー通算5勝。賞金ランクは98、99年の9位が最高。