優勝トロフィーを掲げる堀川未来夢（写真提供：日本プロゴルフ協会）

「地の利」を生かした堀川未来夢が逃げ切って初優勝

　舞台となったのは静岡・グランフィールズＣＣ（7219ヤード､パー71）。大会日程をいつもより１カ月遅らせ、梅雨を避けて８月４～７日の開催となった。アンジュレーションに富んだ広いグリーン、夏の日差しに芝は強く成長して80～100ミリの刈り高になったラフは入ったボールをすっぽりと包み込み、一筋縄ではいかないコースとの戦いになった。
　第1日、午前組のスタートの途中、雷雲接近のため8時58分から２時間30分間の中断があり、午後組はサスペンデッドが避けられない中でのラウンドとなった。
　ホールアウトした中で飛び出したのはプロ４年目の吉田泰基。予選会を通過しての初出場で「あまり飛ばないけど一番得意」というドライバーショットが６アンダーの好スコアを生み出した。「コースに慣れていますので」と話したが、出身の名門日大ゴルフ部は日大三島キャンパスにあり、三島市内の寮で生活していた。日大出身者の多くは、三島市内のあるこのコースで週末にキャディーのアルバイトをし、週数回のラウンドや合宿などを行っているという。
　吉田が「尊敬している」という日大先輩の堀川未来夢が７バーディー、２ボギーの５アンダーで暫定２位につけた。同じく５アンダーで回ったのが池村寛世。インスタートで12番ティーに来たときに中断し、再開後なかなかリズムに乗れなかったが後半伸ばした。「今日はセカンドを狙えるところにずっとあったので、ボギーを打つ感じじゃなかった」と振り返った。
　第２日、サスペンデッドになった第１ラウンドの残りホールを消化後、第２ラウンドに進んだ。175センチ、50キロと細身の安本大祐が通算イーブンで折り返した後半アウト（パー36）、1番をイーグルとし、９番で16，17ヤードのバーディーパットを入れて７アンダー29の快スコアをマーク、一気に首位に立った。
　風が吹き、ピンポジションも難しく、全体的にスコアが伸び悩んだため、大混戦の展開に。出水田大二郎、堀川、嘉数光倫も７アンダーで上がり、首位に４人が並ぶ展開になった。
　第３日、堀川が混戦を抜け出した。８バーディー、１ボギーで７アンダー64をマークし、通算14アンダーとした。「15番（ボギー）のセカンドが唯一のミスショット。他は全てマネジメント、事の運び方が上手にできました」と振り返った。日大時代に４年間、三島で寮生活を送っており、キャディーなどをしてコースを熟知している「地の利」があった。
　３打差で２位につけたのが嘉数。３番パー３で20ヤードのチップインから３連続バーディーで一時首位に立ったが、後半伸び悩んだ。「最終日はしびれる状況の中でやれるかどうか。弱い自分と強い自分が出てくると思いますけど、コントロール出来たら」と話した。
　最終日、嘉数が１、２番連続バーディーで堀川に1打差に迫った。３番で右土手下の落とした堀川は、コースに戻して第３打を1メートルにつけてパーをセーブ。バーディーを逃した嘉数に首位を明け渡さず、落ち着きを取り戻して５、７番バーディーで抜け出した。一時５打差をつけたが、14番パー３で「迷って、７番アイアンで打ったら、思いのほか飛んでしまった」と奥のラフへ。アプローチがグリーン下の段のラフまで転がり落ちるダブルボギーで２位と３打差に縮まった。しかし、後続が伸ばしきれず、堀川が16番で奥のラフからのチップインバーディーを奪って勝負を決めた。
　通算15アンダーで初のプロ日本一のタイトルをつかんだ。「初優勝（日本ゴルフツアー選手権）に比べると、緊張感はそうでもなかった」という。「歴代優勝者の中に名前を刻めるのはうれしい」と、優勝トロフィーを抱えて目を輝かせた。日大時代に厳しいプロのトーナメントを経験し、一度はプロの道をあきらめかけたが、プロゴルフの頂点に上り詰めた。
（文責・赤坂厚）

プロフィル

堀川未来夢（ほりかわ・みくむ）　
1992年12月16日生まれ、神奈川県出身。父親の影響で４歳からゴルフを始めたが、中学時代にはソフトテニス部に入り、市の大会で優勝したこともあった。厚木北高入学後にゴルフを再開。日本大学進学後に素質が開花し、関東アマ、国体個人などアマタイトルを獲得。2014年にプロ転向し、15年にツアーデビューし、シード権を獲得した。19年の日本ゴルフツアー選手権で初優勝。ツアー通算４勝（2022年12月現在）。

第89回日本プロゴルフ選手権