第53回日本プロゴルフ選手権(1985年)
2016.03.04
1985年8月12日付日刊スポーツ
尾崎健夫がプレーオフ制し、31年ぶり兄弟制覇
尾崎健夫が、金井清一とのプレーオフを制して、公式戦初勝利を飾った。尾崎3兄弟の次男。兄・将司はすでに2勝しており、兄弟の「プロ日本一」は石井哲雄、茂兄弟以来31年ぶりの快挙だった。行われたのは真夏の8月8~11日、舞台は茨城・セントラルGC東コース(6640メートル、パー73)だった。第1日、首位に立った野口茂に、周囲はびっくりした。海老原清治が腰痛のため、大会前日に出場を辞退。大会本部で当時シード権があった前年賞金ライク40位より下の選手をあたったが、連絡のつかない選手を飛ばして、52位の野口が夕方になってようやくつかまった。現在のように携帯電話があれば、野口まで繰り下がらなかっただろう。自宅の浜松市から会場近くの鹿島市に着いたのは夜11時過ぎ。もちろんぶっつけ本番で、日刊スポーツ紙は「ハウスキャディーさんに攻め方を全部教わった」という野口の話を伝えている。6アンダー67をマークして飛び出した。2打差で宮本康弘、3打差で入江勉がつけた。
第2日は4アンダー69のベストスコアで回った鈴木弘一が通算5アンダーで首位に立った。5月に虫垂炎の手術を受けて、この大会が復帰5戦目。公式戦では1984年日本オープンで、最終日に一時は首位に立ったが13番でグリーン奥の深いラフで2度空振りをして2位に終わっている。「僕は試合が終わるまですべてを信じないことにしている」とスポーツニッポン紙が心境を伝える。野口はこの日終盤にスコアを落として1打差2位に後退。尾崎3兄弟が好調で、健夫、直道が2打差、将司が3打差と優勝圏内につけた。
第3日、試合が大混戦になっていく。尾崎健が苦しみながらも通算4アンダーで首位に浮上。70年代に「関西四天王」と呼ばれた宮本康が後半33で回って同じく首位に並んだ。当時無名の28歳、入野太が一時は通算7アンダーまでスコアを伸ばして単独首位に立ったが終盤のボギーで同じく4アンダー。「カメラは追ってくるし、慣れていないので意識してしまった」(日刊スポーツ紙)という入野は「最終日最終組と言っても、優勝争いさえやったことがないので、プレッシャーはありません」と話している。1打差に尾崎将が浮上し「一度ぐらいは爆発しないと。60台で回りたい」と、最終日を見据えた。同じく1打差に鈴木弘、佐野修一がつけ、2打差に謝敏男、金井、3打差に倉本昌弘、岩下吉久、出口栄太郎、山本善隆と、3打差以内に12人がひしめき、だれが勝ってもおかしくない状況になった。
最終日は、スコアが伸びず、サバイバル戦の様相に。大混戦の中で生き残っていったのが、尾崎健と金井だった。通算4アンダー288で2人が並び、プレーオフに突入。16番(402メートル、パー4)で行われた1ホール目、先にパーで収めた金井がグリーンサイドで次のホールに行こうとしている中、尾崎健は7メートルのバーディーパットを沈める「サヨナラ・バーディー」。公式戦初タイトルを劇的勝利で遂げ、グリーンサイドでファンに胴上げされた。「このタイトルのためだったら腰が壊れてもいいと思った」というように、このシーズンは腰痛に悩まされていた。決着後、金井から「悔しいが、兄弟でカップに名前を刻むなんてすばらしいじゃないか」と声を掛けられたと、日刊スポーツ紙は伝える。2打差3位と追撃ならなかった兄・将司は1971、74年に勝っており、兄弟制覇は石井哲雄(1951年)、茂(1954年)兄弟以来だった。また、尾崎健にとっては、1975年のプロテストに合格した思い出のコースでもあった。
プロフィル
尾崎健夫(おざき・たてお)1954~1954年1月9日生まれ、徳島県出身。兄・将司と同じ徳島海南高では野球部のエースで4番。3年生の秋のドラフトでヤクルトに6位指名を受けたが、入団を断って兄の元でゴルフの道に入った。師匠は林由郎。1975年プロテスト合格。1984年白竜湖ポカリスエットで初勝利。レギュラーツアー通算15勝。賞金ランク最高は3位。1981年に米ツアーでドライビング部門トップを走り「ジェット」の愛称が定着した。
第53回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 尾崎 健夫 | 288 | = 72 71 72 73 |
2 | 金井 清一 | 288 | = 76 69 72 71 |
3 T | 山本 善隆 尾崎 将司 出口 栄太郎 鈴木 弘一 |
290 | = 72 75 71 72 = 72 72 72 74 = 73 76 69 72 = 72 69 75 74 |
7 T | 倉本 昌弘 入野 太 |
291 | = 74 71 73 73 = 71 71 73 76 |
9 T | 宮本 康弘 青木 功 |
292 | = 69 75 71 77 = 73 73 75 71 |