第48回日本プロゴルフ選手権(1980年)
2016.06.20
1980年10月6日付報知新聞
山本善隆が初日本一で通算10勝の区切り
1プロ10年目、「関西四天王」と呼ばれた山本善隆が、通算10勝目をうれしいプロ日本一で飾った。大会の時期は珍しく秋、10月2日から4日間、群馬のノーザンCC赤城G(6353メートル、パー71)で行われた。赤城山の裾野に広がるコースで、全体的に傾斜し、グリーンもベントで起伏がある難グリーンと呼ばれ、ビッグスコアは出にくいという予想だった。
第1日に首位に立ったのは3人。ベテラン河野高明、地元群馬出身の中嶋常幸、プロ6年目で初の首位発進という高橋五月が2アンダー69で回った。河野は2番パー5と8番パー3でチップインバーディー2つが効いた。2年半ぶりの首位発進に、日刊スポーツ紙は「チップイン2つは久しぶり。パットのラインが分からないところは無理に狙わないで堅くパットでいった」と攻略法を説明している。高橋は「え? オレがトップ? みんなスコアが悪いなんておかしいよ」と予想していなかった。14番パー5で第2打を20センチにつけるイーグルが効いた。中嶋は実家から1時間20分ほどと近いコースに「読み違いなし。パットは絶好調」というように地元の利を生かした。
第2日は高橋が踏ん張った。5バーディー、3ボギー、1ダブルボギーのイーブンパー71で通算2アンダーをキープ。21歳でゴルフを始め、26歳でプロテストに合格、6年目の32歳で、2日間首位は初めて。「へたくそなんだからそれなりにやったのが良かった」といい「シード選手になるのが夢」と話している。首位に並んだのが、ベテランの宮本省三。1967年にこの大会を制している。3バーディー、2ボギーの70に手堅くまとめた。「パットに自信がないのによく入っている。入れようとすると失敗するので、おそるおそる打ったほうがいいみたいだ」と、報知新聞はコメントを伝えている。河野は73、中嶋は77をたたいて後退。1打差3位尾崎健夫、磯村芳幸がつけた。
第3日に浮上したのが尾崎将司だった。後半の11番で2メートルを沈めると、14、15番連続バーディー。16番をボギーにしたが、18番で6メートルを入れて68をマーク、通算1アンダーで首位に立った。「グリーンをつかんだというよりは、ここじゃないかと思って打っている」と、難グリーンを表現し「ゴルフの内容が良くなりつつある。一番上にいるのは気分がいい」と、気持ちも乗ってきていた。前日5位に後退した河野が70で再浮上、尾崎将に並んだ。スコアが伸びない状況で、1打差に鷹巣南雄、金井清一、2打差に安田春雄、尾崎健、山本らがつけ、69をマークした青木功が4打差まで迫ってくる大混戦になった。
サバイバル戦となった最終日、最終18番パー5まで勝敗に行方は混沌とした。尾崎将と河野が前半からボギーを連発して脱落。16番で40センチにつけるバーディーで抜け出した山本が通算2アンダー、金井と鷹巣が通算1アンダーで最終ホールを迎えた。金井が10メートルに2オンするが、イーグルを狙ったパットが1メートルオーバーし、3パットのパーに終わる。同組の山本はパーに収めて最終組の鷹巣を待った。2オンを狙った鷹巣が林に打ち込み、山本の逆転優勝が決まった。第1日の首位スコアと優勝スコアが同じ2アンダーと、予想通りロースコアでの戦いになった。
山本は前週の関西オープンで最終日に6打差首位でスタートしながら82をたたいて優勝を逃していた。「信じられない負け方をしたのが今日の優勝につながった。日本という公式戦のタイトルが欲しかった。これで一人前と認めてもらえる」と話している。父幸雄氏もプロゴルファーで、19歳の1971年にプロ合格。翌年には瀬戸内サーキットで初優勝を挙げた。同じころに売り出した関西の若手、中村通、宮本康弘、吉川一雄とともに「関西四天王」と呼ばれた。通算10勝目の区切りのタイトルが、大きな勲章になった。
プロフィル
山本善隆(やまもと・よしたか)1951年1月29日生まれ、大阪府出身。父幸雄氏がプロゴルファーで5歳からクラブを握る。17歳で城陽に研修生で入り、19歳の1971年にプロテストに合格。1972年瀬戸内サーキットで初優勝した。日本プロのほか、1993年日本プロマッチプレーを制し、関西プロ、オープン各2勝など通算17勝、ツアー制度が施行された1973年以降のツアー通算勝利は13勝。ハンチングがトレードマーク。
第48回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 山本 善隆 | 282 | = 71 72 71 68 |
2 T | 金井 清一 鷹巣 南雄 |
283 | = 70 72 71 70 = 72 73 68 70 |
4 | 鈴木 規夫 | 284 | = 70 73 72 69 |
5 T | 高木 祐二 河野 高明 |
285 | = 74 68 72 71 = 69 73 70 73 |
7 T | 出口 栄太郎 高橋 五月 安田 春雄 |
286 | = 73 73 71 69 = 69 71 75 71 = 74 71 69 72 |
10 T | 宮本 省三 長谷川 勝治 藤木 三郎 |
287 | = 70 70 75 72 = 71 72 72 72 = 71 72 72 72 |