第3回日本プロゴルフ選手権(1928年)
2015.02.02
1928年12月1日付大阪毎日新聞
時代を超えて輝く最年少優勝記録
1928(昭和3)年8月2日、アムステルダム五輪陸上男子三段跳びで織田幹雄が日本人初の五輪金メダルを獲得した。その6日後には鶴田義行が競泳男子200m平泳ぎで金メダルを手にしている。28年は日本のスポーツ界にとって大きな節目だったといえるだろう。ゴルフ界でもこの年、一人の新星が記録を打ち立てている。その記録は90年近い年月が流れた今もなお、不滅の輝きを放っている。記録保持者の名は浅見緑蔵。第1回殿堂入りメンバーである。
東京の駒沢村(現在の東京都世田谷区)の農家に生まれた浅見は近所にできた東京GC駒沢コースでキャディーを始め、やがて程ヶ谷CC(神奈川県)に移籍。18歳の時に同CCでキャディーマスターからプロに抜擢される。第1回の日本プロ(26年)が開催された翌月のことである。
27年、浅見はトーナメントに出場し、まず日本オープンで2位に入る。日本オープンの優勝者はアマチュアの赤星六郎だから、プロの中では最上位だった。続く日本プロでは4位という成績を残している。
翌28年、浅見は5月の日本オープンで2位の安田幸吉に7打差をつけて圧勝する。弱冠19歳。現在も残る最年少優勝記録である。
続く日本プロは11月30日に兵庫県の鳴尾GCで行われた。現在の鳴尾GC(兵庫県川西市)は30年に移転したもの。当時の鳴尾GCは武庫郡の鳴尾浜、現在の西宮市にあったもので鳴尾リンクスとも呼ばれていた。
出場選手は12人。大阪毎日新聞は夕刊で「鳴尾リンクスは薄曇りの空に時々なごやかな陽光を見せクラブハウスの旗もゆるやかにはためく絶好のコンディションに恵まれて、午前九時、36ホールス、メダル・プレーのスタートが切られた」(一部現代語訳)と速報している。
午前の18ホールをリードしたのは76で回った鳴尾GC所属の森岡二郎。1打差で越道政吉が続き、浅見は80で4打差の3位につけた。
27ホールを終えた時点でも森岡は首位を維持していたが11番で7を叩くなど最後の9ホールは42と崩れて4位に終わった。午後の最初の9ホールを39にまとめていた浅見は最後の9ホールで37の好スコアをマーク。宮本留吉と安田幸吉に1打差をつけて優勝した(ホールアウト後に9ホールの2位決定プレーオフが行われ、宮本が2位)。
この時、浅見は20歳と102日。日本オープンに続いて樹立した大会最年少優勝記録はその後、誰にも破られていない。浅見は今もなお、日本を代表する両大会で最年少優勝記録保持者なのである。
浅見はまた、日本プロと日本オープンを同一年に制した初めての選手でもある。身長は174cmほどと当時としては非常に恵まれた体格で「日本のウォルター・ヘーゲン」とさえ称されていた。
だが、日本プロ優勝直後に浅見は軍に招集されてしまう。2年で兵役を終えて再び活躍したが、躍進著しい時期での招集は少なからず影響があっただろう。浅見の兵役中、29年には宮本と安田が日本人プロ初の海外遠征としてハワイアンオープンに出場している。歴史にもゴルフにも“タラレバ”はないが、もし浅見が兵役中でなかったら、日本人プロ初の海外遠征メンバーの中に名を連ねていたかもしれない。
プロフィル
浅見緑蔵(あさみ・ろくぞう) 1908~1984東京都出身。子供のころに東京GC駒沢Cでキャディーを始め、18歳の時、程ヶ谷CCでプロとなる。2年後の1928年に日本オープンと日本プロで最年少優勝。兵役を経て31年には日本プロ、日本オープン、関東プロの公式戦3冠を達成した。同年には宮本留吉、安田幸吉とともに初の米国本土遠征メンバーに選ばれている。また、日本プロゴルフ協会設立(57年)に尽力し、63年からは同協会の第2代理事長(現会長職)を務めた。主な戦績は日本プロ、日本オープン、関東プロ各2勝。
第3回日本プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 浅見 緑蔵 | 156 | = 40 40 39 37 |
2 | 宮本 留吉 | 157※ | = 40 41 40 36 |
3 | 安田 幸吉 | 157 | = 43 38 38 38 |
4 | 森岡 二郎 | 158 | = 38 38 40 42 |
5 | 越道 政吉 | 159 | = 39 38 42 40 |
6 | 村上 伝二 | 164 | = 40 41 37 46 |
7 | 石角 武夫 | 166 | = 42 42 42 40 |
8 | 柏木 健一 | 169 | = 44 42 40 43 |
9 | 村木 章 | 174 | = 39 45 47 43 |
10 T | 大西 義雄 寺本 善吉 |
181 | = 43 48 45 45 = 43 45 46 47 |
※2、3位はプレーオフによる