第7回日本女子プロゴルフ選手権(1974年)
2014.06.16
1974年7月29日付スポーツニッポン
前人未到!7連覇の金字塔
1967(昭和42)年に第1回の女子プロテストが行われて以来、女王の名をほしいままにしてきたのが樋口久子だった。本格的に競技が始まった68年は2戦2勝、翌69年も開催された2試合ともに優勝と無敵を誇った。初めて優勝を逃したのは70年の日本女子プロゴルフ九州大会(6位)。それまで、出場した6試合すべてで優勝していた。その後も圧倒的な強さで勝利を重ねてきた樋口が最もこだわっていたのが日本女子プロのタイトルだった。日本女子プロは国内女子ツアーの“メジャー”であり、「女子プロ日本一」を決める大会。68年の第1回大会を制して以降、一度も頂点の座から降りることなく6連覇を飾っていた。
7連覇をかけた74年の日本女子プロは福岡県の久山CCでの開催。第2回大会以降、貞宝CC(愛知県)に固定されていた会場が5年ぶりに変更された。
貞宝CCはパー74ではあるが、6575ヤードと当時にしては距離が長かった。これに対して久山CCはパー72で6110ヤード。当時の日刊スポーツには『久山は貞宝と打って変わり、距離の短い女性向きのコース。山岳特有のアップダウンがあり、フェアウエーはせまくOBも多い。飛ばすことより、より正確なショットがスコアをまとめる第一条件なのだ。だから「今年こそ打倒チャコのチャンス」と女王の座をねらうプロたちは意外と多かった』と記されている。
これに対して樋口は「確かにその通りです。ここは距離的にやさしいから、みんなにチャンスがあると思います。でもそれだけに私は勝ちたい。誰にもタイトルは渡したくありません」と女王のプライドをにじませていた。
初日、樋口は4バーディー、2ボギーの70で回り、2位に4打差の首位に立った。コースは変わっても、樋口の強さは変わらない。2位につけた鳥山由紀子は「女子プロで4打差というのは、ほとんど逆転不可能な数字です。ましてそれが樋口さんだから、もうどうしようもないでしょう。あとはベストを尽くして頑張るだけ」とコメント。樋口の壁がいかに高かったかが伝わってくる言葉である。
悪天候に見舞われた2日目、樋口は78と崩れたが首位をキープ。2打差の2位には佐々木マサ子がつけた。迎えた最終日は晴れ、微風の好条件となった。しかし、選手たちはスコアをまとめられず、ズルズルと後退していく。ただひとり、樋口を除いては。
2番でバーディーを先行させた樋口は正確無比なショットで確実にグリーンを捕えていく。この日、パーオンを逃したのはわずかに2ホール。唯一のボギーは3パットだった。
結局、樋口はパープレーの72にまとめ、通算4オーバーの220。2位には9打もの大差をつけて7連覇を達成した。
「2番のバーディーで気分が楽になったし、あとはできるだけスコアを縮めようと努力しました」と樋口。当時の日本女子プロゴルフ協会会長で樋口の師匠でもある中村寅吉は「樋口と同じことをしていては勝てない。彼女が100球打つなら200、300打つなら400と、樋口以上の練習をしないとダメだ」と他の女子プロの奮起を促していた。
同一大会の7連覇は男女を通じて国内最高記録である。異次元の強さを見せつけていた樋口の連勝は、どこまでも続くかと思われていた。しかし、勝てば勝つほどプレッシャーが増していたのもまた事実。「重圧はすごくありました。常に勝つと思われていましたし、自分自身“勝たなきゃいけない”と感じていました。いつも何か重いものを背負ってプレーしているようでした」と樋口は後に述懐している。
翌75年、ついに樋口の前に立ちはだかる選手が出現した。
プロフィル
樋口久子(ひぐち・ひさこ)1945~埼玉県出身。1967年の第1回女子プロテストでトップ合格。日本女子プロは第1回大会からの7連覇を含む通算9勝、日本女子オープンは第1回大会からの4連覇を含む通算8勝を挙げている。国内通算69勝、賞金女王11回。76年には米女子ツアーで日本人選手として初優勝を飾り、77年の全米女子プロで日本人初のメジャー制覇を成し遂げた。97年から14年間日本女子プロゴルフ協会会長を務め、03年には日本人で初めて世界ゴルフ殿堂入りを果たしている。13年に日本プロゴルフ殿堂入り。
第7回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 樋口久子 | 220 | = 70 78 72 |
2 | 鳥山由紀子 | 229 | = 74 79 76 |
3 | 中村悦子 | 230 | = 76 79 75 |
4 | 今堀りつ | 232 | = 80 77 75 |
5 | 佐々木マサ子 | 233 | = 75 75 83 |
6 | 則竹德江 | 234 | = 76 81 77 |
7 T | 大迫たつ子 横山美智子 |
235 | = 79 82 74 = 78 82 75 |
9 T | 小川信子 二瓶綾子 松田惠子 山下七枝 |
237 | = 81 78 78 = 84 76 77 = 79 80 78 = 81 79 77 |