第48回日本女子プロゴルフ選手権(2015年)
2018.11.19
優勝トロフィーを掲げるテレサ・ルー(写真提供:日本女子プロゴルフ協会)
テレサ・ルーが公式戦3冠を達成
パサージュ琴海アイランドGC(6735ヤード、パー72)は長崎県の大村湾に面したシーサイドコースである。海に突き出た半島の上に展開する18ホールは日本プロゴルフ殿堂入りしている藤井義将の設計。入り組んだ海岸線を巧みに利用した海越えのホールがあるなど、随所で絶景が楽しめるコースである。このパサージュ琴海アイランドGCで日本女子プロが開催されたのは2015(平成27)年のこと。九州での日本女子プロは1995年のザ・クラシックGC(福岡県)以来、20年ぶりだった。
9月10日、132人の選手が女子プロ日本一の称号をかけてスタートした。北からの強い風が吹く中、服部真夕が4アンダー、68をマークして首位発進。吉田弓美子、藤本麻子、ジャンウンビの3人が1打差につけた。
2日目に首位に立ったのは吉田だ。5バーディー、2ボギーの69をマークし、通算6アンダー。今大会で首位に立つのは2012年初日以来、2度目のことだ。2打差の2位にはこの日のベストスコア、67で回ったテレサ・ルー、原江里菜、永峰咲希がそろって20位から急浮上。69をマークした酒井美紀も同じく2位グループに入った。
3日目に存在感を示したのが上田桃子だ。6番で初バーディーを決めたあと、9番パー5で残り130ヤードの3打目が入ってイーグルを奪い波に乗る。インでは11番バーディー、さらに15番から上がり4連続バーディーと一気に畳み掛け、大会最少ストロークに並ぶ64を記録。前日の24位から首位の座をつかんだ。上田は2007年に賞金女王となり、この時点で通算11勝を挙げていた実力者だが公式戦タイトルとは無縁。それだけに「ずっと目標にしている大会の一つ。やれることはやってきたので最終日はそれを表現するだけ」(スポーツニッポン紙より)と言葉に力を込めた。
上田と共に首位に立ったのは70で回ったテレサ・ルー。上田とは対照的に公式戦に強く、前年は日本女子オープンとLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップに連勝。早くも3冠が視野に入ってきた。
首位2人に2打差の3位に上がってきたのが絶好調のイボミだ。この年、すでに4勝。しかも、前週、前々週ともに優勝しており、3週連続優勝がかかっている。最終日最終組をつかみ取り「緊張感を楽しんでやりたい」(スポーツニッポン紙より)と快挙を見据えた。
最終日は激戦となった。序盤でスコアを伸ばしたイボミが一時、ルー、上田と首位に並ぶ。1番からパーを続けてきたルーが9番で初バーディー。一歩、前に出た。
勝負のサンデーバックナイン、タイトルの重圧からか最終組の3人は苦しんだ。上田が10、11番で連続ボギー。14番ではルーとイボミがボギーを叩いた。
すると、後退していた上田が15番で2m弱のバーディーパットを決め、再び首位のルーに1打差まで迫る。日韓台の実力者3人が激しい火花を散らす名勝負となった。
続く16番でもスコアが動いた。395ヤード、パー4のこのホール、イボミは左ラフからの2打目を乗せたがピンまで長い距離を残してしまう。同じく左ラフからのショットとなったルーは3mにつけた。イボミは3パットでボギー、ルーはきっちりとバーディーパットを沈めた。ティーショットがバンカーのアゴにくっついてしまった上田は2打目が出すだけとなったが3打目を寄せて渾身のパーセーブ。チャンスを残した。
リードを2打に広げ、優勝に大きく近づいたルー。だが、池越えの17番パー3でまさかのミスが出る。「緊張してスイングが早かった」(スポーツニッポン紙より)という7番アイアンでのティーショットが池に消えた。
池に入った瞬間、苦笑いを浮かべたルー。それでも、気持ちはすぐに切り替えていた。池の手前にドロップし、3打目はまだ133ヤード。9番アイアンでの1打はピン奥の傾斜を利用して1.5mに寄った。下りの右に曲がるライン。外すとこのホールでパーの上田、そして最終18番でバーディーを奪った一組前の酒井美紀に並ばれてしまう。アドレスしたあと一度仕切り直す。大きな意味を持つパットであるがゆえの緊張感が伝わるシーンだった。改めて構えて打ったボギーパットがカップに沈むと、ルーは右手でガッツポーズをつくった。
1打差には迫られたものの、リードした状態で迎えた18番は420ヤードと長いパー4だ。上田はバンカーからの2打目をグリーン手前にショートさせた。フェアウエーを捕えたルーは2打目を1mにまで寄せた。勝負を決める、会心の1打だった。
わずかな望みを託した上田のアプローチはカップに届かなかった。「安定性に欠けた。もう少し勝負できるショットが打てるようにならないと」(スポーツニッポン紙より)。公式戦初優勝に届かなかった上田はそう口にした。
有終のバーディーパットを沈めたルーの顔に笑みが広がる。「厳しいゴルフ場と強い選手たちとの勝負で楽しい一日でした。とてもうれしいです。みなさんのおかげで、ありがとうございます」と大勢のギャラリーの前で喜びを語った。
前年10月の日本女子オープンで公式戦初優勝を飾ってから1年もたたないうちに3つの公式戦タイトルを手にするという驚異的なスピード記録。3冠は史上9人目、台湾出身選手では涂阿玉に続く2人目の快挙となった。
プロフィル
テレサ・ルー 1987~台湾出身。2006年から米女子ツアーを中心にプレーしていたがクォリファイングトーナメントを経て10年には日本女子ツアーにも参戦。11年からは日本を主戦場とした。13年のミズノクラシックで国内初優勝。以降17年までに通算16勝を挙げている。
第48回日本女子プロゴルフ選手権成績
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | テレサ・ルー | 281 | = 73 67 70 71 |
2 T | 酒井 美紀 上田 桃子 |
283 | = 71 69 72 71 = 76 70 64 73 |
4 | イ ボミ | 284 | = 73 71 68 72 |
5 T | キム ハヌル アン ソンジュ |
285 | = 74 68 72 71 = 71 71 71 72 |
7 T | フェービー・ヤオ 服部 真夕 原 江里菜 |
287 | = 73 72 72 70 = 68 73 74 72 = 73 67 74 73 |
10 T | 申 ジエ 渡邉 彩香 菊地 絵理香 |
288 | = 72 70 73 73 = 76 67 72 73 = 71 71 71 75 |