優勝カップを掲げるパリー（ＪＧＡホームページより転載）

パリーが逆転優勝、２年連続海外勢の手に

　福岡・古賀ＧＣ（6762ヤード、パー71）で行われた大会、戦前の注目は大会６度目の最多優勝タイ記録を目指す尾崎将司と、この年日本プロ、日本プロマッチプレーを制して年間グランドスラムをうかがう丸山茂樹の対決だった。
　第1日、その尾崎将が首位発進した。「ティーショットが良かった。ミスしたのは（ボギーにした）11番ぐらいかな。いい点をつけられる」（スポーツニッポン紙）と振り返ったプレーは、前半アウトで４つのバーディーを奪い、後半をパープレーでまとめて４アンダー67。フランキー・ミノザ（フィリピン）とともに首位に立った。
　一方、丸山は「あれだけティーショットが曲がったら我慢も続かない。自分自身とコースに負けました」（報知新聞紙）と、ラフを渡り歩くゴルフで５オーバー76をたたき、44位と出遅れた。
　第２日、尾崎将は１バーディー、２ボギーの72と通算３アンダーとスコアを1つ落としてホールアウト。全体が伸びず、首位をキープした。
　追撃したのが尾崎３兄弟の次男、健夫だった。15番でダブルボギーをたたいた直後の16番パー５（566ヤード）。残り265ヤードの第２打を３番ウッドで２オンに成功。ピン奥２．５メートルのイーグルパットを沈め、この日パープレー、通算２アンダーで兄に１打差２位に迫った。腰痛などもあって４年間勝ち星から遠ざかっているが「状態としては最高に近い形で戦っている」といい、第３日は兄将司との最終組対決になることには「望むところ。初日からジャンボとマッチプレーのつもりでプレーしてきたから」（スポーツニッポン紙）と話した。
　丸山も奮起した。３バーディー、２ボギーの70で回り、通算４オーバーの９位と急上昇した。「昨日ああいうふうになって気が楽になった。まだ何があるかわからないよ」と話した。
　第３日、最終組の尾崎兄弟対決は、後半インでともに39とスコアを落として痛み分けの様相。75で回った尾崎健が通算２オーバーで３位、尾崎将は77をたたいて通算３オーバーの５位に後退した。
　間隙をついて首位に立ったのが奥田靖己。1993年の大会覇者が２番から３連続バーディーなど５バーディー、２ボギー、１ダブルボギーと出入りの激しいゴルフながら1アンダー70で回り、通算１アンダーとただ一人のアンダーパーとした。「３日終わってアンダーパーは誇りに思う。明日は粘るだけです」（報知新聞紙）と話した。
　丸山は76をたたいて通算９オーバーの16位に後退。「思い残すことは何もありません」とギブアップ宣言をした。
　最終日、奥田、尾崎将、尾崎健らがスコアを伸ばしきれない中で、４打差５位スタートのクレイグ・パリー（オーストラリア）が２番でのボギーとした後はじっと我慢をしていた。尾崎健が13、14、18番と後半のボギーで脱落。尾崎将が18番でボギーにして通算３オーバーでホールアウト。16番のバーディーで通算3オーバーとしていたパリーが最終18番ではラフから４メートルにつけてバーディーを奪って２オーバーに抜け出した。同じく２オーバーの最終組の奥田は最終18番でアプローチを寄せきれずボギー。パリーに土壇場でビッグタイトルをさらわれた。
　パリーは「勝てるとは思っていなかった。18番は入れればプレーオフに残れるとしか思わなかった」と振り返った。報知新聞紙によると、パリーは1993年から米ツアーでプレーしており、全英オープンの際に日本オープンへの出場を関係者に直訴し、日本ゴルフ協会の特別承認者として今回出場した。前年のテラベイネン（米国）に続いて海外選手にタイトルを奪われた。「すみません、情けないですわ」という奥田の表情に悔しさがにじんだ。
（文責・赤坂厚）

プロフィル

クレイグ・パリー
1966年１月12日生まれ、オーストラリア・サンシャイン出身。６歳からゴルフを始め、1985年にプロに転向し、オーストラリアツアーからカナダ、欧州など世界各地のツアーに参戦。1993年からは米ツアーにも出場した。日本では1989年にブリヂストン阿蘇オープンで初勝利を挙げた。日本ツアー通算２勝。米ツアーで２勝を挙げている。

第62回日本オープンゴルフ選手権