第50回日本オープンゴルフ選手権(1985年)
2024.01.31
1985年10月14日付日刊スポーツ
中嶋常幸が逆転勝ちで日本タイトル5冠、公式戦7冠を達成
大会の舞台となった東名古屋CC(6390m、パー72)は、深いラフ、狭いフェアウエーの厳しいセッティングで選手を迎えた。「ラフに入れたら1打ごめんなさい」という声が漏れるほど、ショットの正確さが勝負になった。第1日、飛び出したのは青木功だった。ここ数年、故障もあって不振をかこっていた。フェアウエーキープにため「スライスを打つんだという気持ちで必死だった」(スポーツニッポン紙)と振り返る。功を奏してフェアウエーキープは.786。16番でチップインバーディーを奪うなど、4バーディー、1ボギーの3アンダー69で首位に立った。
1打差2位に5人が並んだ。倉本昌弘は「一度はほしいタイトル」と意気込みを見せたほか、出口栄太郎、藤木三郎、牧野裕とマンデーから出場の稲田嘉明が70をマークした。
第2日、青木は73と伸びなかったが、2アンダーで首位をキープ。首位に並びかけたのが3人。50歳の呂良煥が68で回り「最近では一番いいゴルフをした。来年からシニアに出ようと思っている」と話した。そのほかにマンデーから出場の中尾豊健、牧野が2アンダーとした。
第1日に出遅れた中嶋常幸(当時登録名中島)が68で回って、31位から1打差5位に浮上した。「昨日の時点ではノーチャンスと思っていた。そこそこいいところまで盛り返せた」と話した。
第3日、青木が前半3バーディーで抜け出したが、後半3ボギー。最終18番をバーディーとして通算3アンダーで首位を守った。
粘ったのが牧野。11番パー5で第1打をバンカーに入れて出すだけだったが、そこから15cmにつけるバーディー。ボギーなしで1つスコアを伸ばし3アンダーで青木と首位並走になった。この春にセスナ機で移動中に耳から出血する内耳炎を患い、やっと治ってきた。「僕はまだ1勝のペーペーですが、うまくいく気がする」(日刊スポーツ紙)と意欲を見せた。
2打差3位の中嶋は11番まで3つ伸ばして青木を追いかけたが、その後3ボギーで伸ばしきれなかった。それでも「逆転優勝って言葉、いいですよねえ」と自信を見せた。
最終日、まず牧野が6番までに3バーディーで抜け出し、青木と中嶋が追う展開に。牧野3アンダー、中嶋2アンダー、青木1アンダーで迎えた14番(340m)が勝負の分岐点になった。
中嶋は、日刊スポーツ紙によると3日間3番アイアンで刻んでいたが、初めてドライバーを使った。「一生に一度のドライバーショット」と振り返る会心の当たりできっちりフェアウエーをとらえて、第2打をピッチングウエッジで3.5mへ。これを沈めてバーディーを奪った。グリーンを外した牧野、青木がボギーとして、中嶋が首位に抜け出した。牧野は16番でもボギー。青木はこのホールを含む13番からの4連続ボギーで沈んだ。
中嶋はその後もパーを重ね、ボギーなしの70で回って通算3アンダー、初めての日本オープンタイトルをつかんだ。日本アマを含めて、日本タイトル5冠(のちにシニア2冠)を達成。関東オープン、プロを含めると公式戦7冠の偉業となった。
「日本オープンだけ勝っていなかった。勝って初めて真のプロ、第一人者といわれる。とにかく皆さん、このタイトルに乾杯してください」。満面の笑顔でそう言って、記者会見場で報道陣にビールを振る舞った。
(文責・宮井善一)
プロフィル
中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954(昭和29)年10月20日生まれ、群馬県出身。父・巌氏の英才教育で腕を上げ、73年日本アマを当時大会史上最年少の18歳で制する。プロ入り後もすぐに頭角を現し、77年に22歳で日本プロを制した。82年に初の賞金王、83年には年間最多記録の8勝を挙げた。海外では86年全英オープンで最終日最終組で回り、88年全米プロの3位など、日本選手として初めて4大メジャーすべてで10位以内に入った。シニアでも2005年日本シニアオープン、06年日本プロシニアを制し、レギュラーツアーの日本プロ、日本オープン、日本シリーズ、日本プロマッチプレーと合わせ「日本タイトル6冠」を達成。日本アマも含め「日本タイトル7冠」とともに、関東オープン。プロを合わせた「公式戦9冠」はただ1人の偉業となる。レギュラーツアー通算48勝、シニアツアー通算5勝。17年スポーツ功労者文部科学大臣顕彰、18年日本プロゴルフ殿堂入り。
第50回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 中島 常幸(美津濃) | 285 | = 75 68 72 70 |
2 | 牧野 裕(メルボ紳士服) | 287 | = 70 72 71 74 |
3 | 呂 良煥(台湾) | 288 | = 74 68 74 72 |
4T | 倉本 昌弘(土佐) 中尾 豊健(ヤマ商物産) |
289 | = 70 73 73 73 = 72 70 75 72 |
6T | 尾崎 直道(日東興業) 青木 功(日本電建) 湯原 信光(SB食品) 橋本 秀男(フリー) |
290 | = 75 76 70 69 = 69 73 71 77 = 72 76 70 72 = 76 72 70 72 |
10 | 渡辺 司(東ノ宮GC) | 294 | = 74 71 76 73 |
参加者数 136名(アマ22名)